初心者の資産形成はインデックス運用で平均点を狙え

2020.7.28

0コメント
初心者の資産形成はインデックス運用で平均点を狙え

コロナショックで将来への不安が強まり、この機に資産形成を始めようかと考えている人も多いだろう。そんな人にまず始めに伝えたいことが、資産の運用は「平均点を狙え」ということ。子どもの頃、多くの人たちはテストで平均点よりもいい点数を取ることを求められたのではないだろうか? そのせいか、「資産運用では平均点の成果を狙うのが合理的」と言われて、首を傾げる人が少なくない。 今回は、インデックスファンドやETF(指数連動型上場投資信託)によって、“着実に平均点を取る運用”について考えてみたい。これら2つの投資信託は、どちらも特定の指数(日経平均株価のように市場の平均的な推移を示す指標=インデックス)に運用実績が連動するように設計されている。これから投資を考えている初心者ならばなおさら、今回紹介する“平均点運用”を押さえておこう。

投資信託の運用手法は「アクティブ」と「パッシブ」に大別できる

具体的な話に入る前に、まずは投資信託の“キホンのキ”から説明しておこう。投資信託の運用手法は、「アクティブ運用」と「パッシブ運用」に大別できるという話だ。

「アクティブ運用」とは、ベンチマーク(目標値)を上回る成果を目指し、その原動力となりそうな有望銘柄を厳選して投資するという手法である。日経平均株価やTOPIXなど特定のベンチマークを上回るための、言わば“平均点超え狙い”の運用が行われているわけだ。

※あえて特定のベンチマークを設けず、最善の運用成果を追求しているアクティブ運用の投資信託も存在している。

これに対し、特定のベンチマークと同様の成果を目指すのが「パッシブ運用」である。リターン・リスクをできるだけそのまま実現することを目指す運用のことだ。ベンチマークを上回るのではなく、連動することを目指す、いわば“平均点死守”の運用がモットーとなっている。

なお、特定の指数と連動する成果を目指すことは、“指標”という意味のインデックス運用と呼ばれている。前述したように、パッシブ運用のベンチマークに特定の指標を基準にするため、「パッシブ運用≒インデック運用」と意味合いで用いられている。

誰しも“平均点超え”を期待したいが、容易くないのも事実

さて、ここまで読んであなたは、“平均点超え”のアクティブ運用と“平均点狙い”のパッシブ運用のどちらに惹かれただろうか? おそらく、多く人たちは“平均点超え”に魅力を感じたはずだ。

そのほうがより資産を大きく増やす可能性が広がってくるが、あくまでそれは、“平均点超えを達成した場合”に限られた話なのも確かだ。現実には、意に反して“平均点以下”の成果にとどまっているアクティブ運用の投資信託も少なくない。

子どもの頃のテストなら、勉強に励んで知識やスキルを身につければ高得点を得られた。しかし、運用の世界は一筋縄ではいかず、プロであっても銘柄の選別や市場動向予測などで判断を誤ることが多々あるものだ。

公約通りに“平均点超え”の成果を上げているアクティブ運用の投資信託もあるが、先々もその状況を維持できるとの確証はない。その点、特定の指数(平均点)と同じ成果を達成するのは比較的容易である。

たとえば日経平均株価をベンチマークとするパッシブ運用なら、同指数に採用されている東証一部市場の225社すべてに投資すればいいのだ。したがって、パッシブ運用の投資信託がベンチマークから大きく逸脱した成果に甘んじるケースはまず考えられない。

つまり、パッシブ運用の投資信託なら堅実に平均点を確保できるということだ。改めてあなたに質問するが、“不確かな平均点超え”と“ほぼ間違いなく得られる平均点”では、どちらを求めるだろうか?

アクティブ運用はパッシブ運用よりもおのずとコストがかさむ

もう一つ、運用を担う側の苦労も知っておいたほうがいいだろう。

金融市場は絶えず振幅を繰り返しているが、アクティブ運用の運用担当者は相場全体が下落基調を続けている局面であっても、上昇が見込まれる銘柄をつねに発掘し続けなければならない。当然、そのようなシーンでは選定に失敗する可能性も高くなってこよう。

対照的に、パッシブ運用の運用担当者はとにかく運用成果がベンチマークの指数と同等であればミッションを果たせる。機械的に指数の構成銘柄に投資しておけばそれで済むし、相場全体の動きに翻弄されることもない。

実は、こうした両者の労力の違いが投資信託を利用する側にも影響を与えている。一般的にパッシブ運用は運用にかかるコストがアクティブ運用よりも低く、私たちが負担する手数料(販売手数料や信託報酬)が割安な設定となっているのだ。

投資信託は中長期的な運用を心掛けるのが定石であり、手数料の差はけっして軽視できない。手数料が割高な上、期待外れで運用成果もパッとしないアクティブ運用の投資信託を選んでしまったら、まさしく踏んだり蹴ったりなのだ。

パッシブ運用の具体的な選択肢は「インデックスファンド」か「ETF」

こうしたことから、平均点超えを達成するアクティブ運用の投資信託を確実に選び抜けるという人以外は、平均点死守のパッシブ運用に目を向けたほうが合理的だと言えよう。そして、パッシブ運用の具体的な選択肢としては、冒頭でも触れた「インデックファンド」と「ETF」が挙げられる。

「インデックスファンド」は特定の指数に運用実績が連動するように設計された投資信託で、証券会社や銀行などの金融機関を通じて購入するのが一般的だ。税制優遇が受けられて少額ずつこつこつと資産形成を行える「つみたてNISA」の対象となっているものもある。

「ETF」も特定の指数に連動する点は同じだが、市場で取引されているため、日々刻々と動く時価で売買できる点がメリットといえるだろう。難点を挙げるとしたら、「つみたてNISA」の対象となっているETFが限られていることだ。

さらに言えば、インデックスファンドの多くは分配金が自動的に再投資されていくサービスを利用できるが、ETFは自分自身で行う必要があるうえ、その際にコストも発生する。こうしたことから、積立投資ならインデックスファンド(その中でも特にコストが安いもの)、まとまった資金を投じるならETFといったように使い分けるといいだろう。

なお、念のために結びで述べておくが、けっして筆者はアクティブ運用の存在を全否定しているわけではない。少数派とはいえ、長く平均点超えを果たしてきたアクティブ運用の投資信託や、個別銘柄で指数をはるかに凌ぐ成果を継続的に得ている投資家が存在していることは紛れもない事実である。

ただし、そういった「当たり」を選べる確率は高くない。だから、大半の人はパッシブ運用のものを選んだほうが無難だという話なのである。これから投資を始めようという人は、ぜひともアクティブ運用・パッシブ運用の概念を念頭におき、欲張らずに“平均点狙い”の運用から始めてみよう。