「SHISEIDO」初のブランド旗艦店から発信する“近未来のビューティー体験”とは

2020.11.27

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撮影:小池彩子

化粧品業界では、コロナ禍によって消費者の価値観の変化のスピードが一層加速し、そして多様化している。そんななか、資生堂が今夏銀座にオープンしたのが、同社を代表するグローバルプレステージブランド「SHISEIDO」初のブランド旗艦店である「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE(以下、GFS)」だ。デジタルテクノロジーを活用しセルフ体験を充実させた非接触による購買体験や、美容液の詰め替えサービスといったサステナブルな取り組みなど、「SHISEIDO」が挑戦する新たな化粧体験に触れることができるこの施設。「SHISEIDO」がどのようなビジョンを持ってどんな“美”の価値をこれからの世の中に発信していくのか。実際に店舗でサービスを体験しながら、その真意に迫った。

デジタルとヒューマンタッチがもたらす新しい化粧体験

新型コロナウイルス感染症拡大により、世界の様相がすっかり変わってしまった。化粧品業界においても、特に店頭で人の手を介した対面販売が一般的であったプレステージ化粧品は、あらゆる角度から今後の在り方を模索せねばならないことは必至だ。

コロナ禍により新しい生活様式へと移行する中で、「美」に対する価値観にも変化が起きている。健康や安心安全といった顧客ニーズが増しているなか、「GFS」は「デジタルでできることはデジタルで」というコンセプトのもと、顧客と美容部員が直接接触しないでも商品を体感できるのが特徴だ。非接触型購買ニーズが増している日本において、「GFS」はまさにニューノーマル時代の美の最新施設といえるだろう。

デジタルを駆使し、トライアルから購入まで人と接触することのない新たな化粧体験を実現

入店してまず装着するリストバンド「S CONNECT」は、機器にかざすだけで店内での体験結果を記録し、購入したい商品をカートに入れることが可能となっている。

また商品情報をタッチパネル上で調べて比較検討できるデジタルテスターや、アプリを活用した非接触によるレッスン形式でのカウンセリングなどを導入し、人と接触することなくトライアルから購買まで体験できるフローを実現。店内のデジタルテスターでは、スキンケア商品の情報を自分で調べてその場で比較検討できたり、簡単な質問に答えると自分に合ったスキンケアを紹介してくれる。

さらに、写真を撮るだけで、30色のファンデーションの中から自分の肌にぴったりの色を測定し自動で試すことも可能だ。メイクアップ商品においても、画面に映る自分の顔にリップやアイシャドウを試したり、仕上がりのイメージも確認できる。

「オートテスター」により美容液も非接触で試せる

デジタルを駆使した非接触型のカウンセリングやオートテスター、それにバーチャルメイク。まさしくwithコロナに対応した新しい化粧体験の実現ともいえるが、もちろん計画当初からコロナを想定していたわけではないだろう。「SHISEIDO」ブランドのマーケティング担当である岡田美樹さんに話を伺った。

「このような店舗をオープンしたのは、コロナに対応するためだけではありません。計画当初より、これからの時代とブランドの強みを掛け合わせた店舗設計を構想しており、デジタルとヒューマンタッチを融合したグローバルな旗艦店をオープンすることを目指していました。

一方で、コロナ禍により非接触型の購買ニーズが増している事実も踏まえ、この店舗のオープンを”オフラインとオンラインを融合させる絶好の機会と捉え、リアル店舗では非接触で体験できるレッスン形式のカウンセリングを新たに導入した一方、バーチャルフラッグシップストアを同時にオープンし、店舗に行かなくても体験や商品購入ができる環境を整えました」

プレステージブランドマーケティング部の岡田美樹さん

実際、店頭に訪れた客からは、自分のペースで気軽にたくさんの商品を試せる、スピーディーに最適な商品を提案してくれる、そしてタッチアップがなくても美容部員から分かりやすいカウンセリングが受けられるなどといった満足度の高い声が多く寄せられているという。

ライブコマースによる人に寄り添ったデジタル戦略

資生堂の新たなチャレンジはなにも店舗だけの話ではない。消費者がリアルタイムで美容部員 とコミュニケーションしながら商品を購入できるライブコマースの取り組みを展開している。

三越伊勢丹の化粧品オンラインストア「meeco」上では、資生堂の美容部員が商品を紹介するライブ映像を配信し、視聴者の質問などをリアルタイムで回答するといった取り組みを2020年7月から開始し、以降定期的に開催。視聴者は動画を参考に、その場で商品を購入することも可能で、デジタルを介したリアルな接客が実現されているのだ。なお、ライブコマースは、「GFS」のバーチャルストアやSNS公式アカウントなどでも展開している。

ライブには店頭の美容部員が登場して商品を紹介する

「ライブコマースを通じて、店頭で紹介しているようなコスメの使い方を動画で説明することにより、店舗に訪れることができない生活者へもブランドや商品への興味とECでの購入意向を高めていきたいと考えています。また、ライブには実際に店頭で接客をしている美容部員が出演しており、お客さまが店頭に足を運ぶきっかけを作りたいという狙いもあります」(岡田さん)

実際、店頭ではライブ視聴をきっかけに店舗へ訪れたという声も増えてきているという。これまでのようにデジタルだけ、店舗だけで完結させるのではなく、オンラインとオフラインを融合させたマーケティングが新時代のスタンダードになりそうだ。

「SHISEIDO」が体現するサステナビリティとは

もうひとつ、資生堂がこれからの時代に向けて注力するのが、国連で採択された国際目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」への取り組みだ。今日、プラスチックの海洋汚染問題はますます深刻化しており、日本でも7月からレジ袋の有料化という国を挙げての対策へと乗り出したことは記憶に新しいだろう。

資生堂は、本業を通じた「美のイノベーション」によって、持続可能なよりよい世界の実現に取り組んでおり、その取り組みのひとつとして、環境への配慮を追求したモノづくりやサービス提供がある。そして「SHISEIDO」では、サステナブルな活動や製品開発を通じて、ビューティーカンパニーならではの社会価値を創造するグローバル プロジェクト「Sustainable Beauty Actions(サステナブル・ビューティー・アクションズ)」を展開。「GFS」からその具体的な取り組みを次々に発信している。

ひとつは、商品の顔ともいえる容器での取り組みだ。化粧品パッケージに使われるプラスチック容器に、100%植物性由来のカネカ生分解性ポリマーPHBH®を化粧品容器用途としては世界で初めて採用したことで、環境問題への企業意識の高さを世界に知らしめた。

カネカ生分解性ポリマーPHBH®を容器に使用したリップカラーパレット

もうひとつは、日本に古くから根づく“もったいない精神”にインスパイアされた新たなレフィルサービス。ブランドを象徴する美容液「アルティミューン」の空ボトルを顧客が持ち込むと、ボトルを洗浄し、中味を詰め替えてくれるというものだ。

空のボトルを持参すると洗浄して詰め替えてもらえる

「ボトルを捨てるときに感じるもったいなさのように、化粧品を使う行為のなかでサスティナブルゴールに近づけるものはないかという考えからスタートしました。資生堂では1926年に最初のつめかえ可能な粉白粉を発売して以来、化粧品業界のつめかえ・つけかえのイノベーションをリードしてきました。日本では当たり前のように浸透している考え方ですが、海外に目を向けてみると、とても先進的なことなんです。

日本をオリジンとした企業として、この日本ならではの素晴らしい考え方を世界のより多くの方へと発信していきたいですし、環境に配慮することで持続可能な社会の実現へブランドとして貢献していきたいと考えています」(岡田さん)

創業以来培ってきた知見や人の力といった資産に技術の進歩を掛け合わせて、多様化する顧客ニーズに多角的に対応することで成長を遂げている資生堂。業界のリーディングカンパニーはこの先どんなビューティーの未来を描いていくのだろうか。資生堂のこれからにますます目が離せない。

銀座の旗艦店「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」では、これらの最先端のサービスを誰でも体験することができる。ぜひ一度足を運んで、今後世の中のスタンダードになるかもしれない、近未来のビューティー体験を試してみてはいかがだろうか。