男性産休新設で育休取得に一歩前進~元ダメ夫が家事を始めたら

2021.4.5

社会

0コメント
男性産休新設で育休取得に一歩前進~元ダメ夫が家事を始めたら

写真:Alamy/アフロ

政府は2月男性の育児休業の取得を促すことを目的とした育児・介護休業法の改正案を閣議決定、今国会に提出予定です。新たに男性限定の特別な枠組みを作り、通常の産休とは別の「男性産休」を新設することとしています。ご存じの通り、日本における男性の育休取得率は上昇傾向にあるとはいえ女性の10分の1以下。なぜ今、法制化してまで男性の育休が必要なのかを解きほぐします。

男性の育休の現状と日本の労働力

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2019年度の育児休業取得率は男性が前年度比1.32ポイント増の7.48%、また日本商工会議所の2020年の調査によると「男性社員の育児休業取得の義務化」について、「反対」と回答した企業の割合は70.9%に達した。現実にも、育休を取得した後に配置転換されたり、始末書を書かされるという報告もあり、まだまだ日本では男性の育児休暇の取得は難しいのが現実です。

日本は、人口減少、少子高齢化を迎えています。1950年には20歳~64歳が12.1人で65歳以上の一人の高齢者を支えていましたが、2025年には1.8人で一人の高齢者を支えると推計されます。つまり、過去のような一般的な労働者が、高齢者などの非労働者を支える社会構造の維持は困難な状況を迎えています。

そのため、今まで労働力として期待されていなかった、高齢者、女性、障がい者、外国人といった方々に生産に関与してもらわなければわが国は成長どころか、維持も難しいでしょう。これが今、多文化共生社会が求められる大きな理由のひとつだと考えます。

さらに、経済学的には経済成長率=技術進歩率+労働分配率×労働力増加率+資本分配率×資本増加率で表せますが、技術力・テクノロジーも優位が見いだせず、資本力も停滞する日本で、労働力増加率がマイナスに転じた場合、それは経済成長のマイナスを意味します。そのため経済成長の観点からも、女性をはじめ、障がい者、高齢者、外国人などの生産への参画で労働力を増強する必要があります。

男女平等の先進国スウェーデンとの比較

日本では、男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法などを定め、政府も女性の雇用や社会参加を促しています。しかし女性の、15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合を表す労働力率を、日本と男女平等の先進国といわれるスウェーデンで比較してみると明らかな違いが見えます。

独立行政法人「政策研究・研修機構 データブック国際労働比較2019」より作成

年々改善されているものの、日本の曲線はM字カーブを描いており、20代後半から落ち込み、40代で回復するもののスウェーデンの水準までは回復していません。一方、スウェーデンは逆U字型を描き、結婚・出産の時期も労働を維持し、その後も高い水準で推移しています。

この違いは、文化、生活、歴史などさまざまな要因が挙げられますが、実は、スウェーデンはもともと日本と同様に男女間で労働条件に格差があった国で、大きな改革を経て現在に至ります。ですので、日本でも女性が今以上に社会に参画し雇用を維持できる社会づくりはできると私は考えます。そのためには何が必要か、制度と日本人の生活スタイルに着目してみたいと思います。

女性が働くための制度は不十分

まず、スウェーデンは、所得税の課税方式を夫婦合算制から個人単位に移行させ、年金も個人単位で計算するよう税制改革を行いました。また、育児休業制度を採り入れ育休中の所得を法律で補償し、さらに男性の育休も法律で定め、労働時間短縮制度や一時看護休業制度を採り入れ、育児をしながら柔軟に働ける体制を構築しています。

一方、日本は、税制に関しては扶養控除制があるため、子育てを終了した女性が精いっぱい働けない状況を作り、年金も専業主婦専用の第3号被保険者制度があり、なかなか専業主婦から抜け出せないようになっています。さらに育休中の給与保証はなく、前述のようにやっと男性の育休も法制化されようとしている段階です。

昨今の働き方改革とコロナ禍のテレワーク等で柔軟な働き方ができるようになったものの、まだまだ女性が働くための制度としては十分なものとは言えません。育児・介護休業法の改正は一歩前進と考えられますが、税制・社会保障(追加)なども含めさらに制度改革を行っていく必要があるでしょう。

育休とれって無理だろう!

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)の時代は力仕事が中心だったため、力のある男性が働き、女性が家で家事・育児をするという負担が合理的だったでしょう。日本においても、人口増とともに建設や製造が盛んだった高度経済成長期にはマッチしていたかもしれません。

しかし、情報社会(Society 4.0)を経て、AIなどテクノロジーが発展したサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society5.0)の現在、男性と女性の生産性に違いはなく、女性が家で家事・育児をするという前提は意味をなさない時代が来ています。

社会的にも少子高齢化を迎え、優秀な女性を家庭にとどめておくことは社会的な損失であり、日本の維持・成長を阻害する要因ではないでしょうか。

現実には、若い世代は柔軟に対応しているものの、年齢が上がるにつれて、女性が家事と育児をするものと思い込んでいる男性が多く存在すると感じています。そのため若い世代の男性の育休取得を難しくする最も大きな要因となっているのではないでしょうか。

いくら、男性政治家が育休をとってみたり、政府が育休をとれと言っても、制度がしっかり作られていなければ、現段階で男性に育休をとれと言われても、それは「無理だろう!」としか言えません。この点においても、今回の育児・介護休業法の改正は一歩前進したと感じています。

さらに、日本的な、女性が家事・育児をするものという前提で男性が育休をとっても女性の負担が増すばかり。実際に働く女性の声を聴くと、ご主人が家にいることにより負担やストレスが増えたという声を多く聞きます。今後は、本当に女性の負担を軽減し、ストレスを感じないような、時代に適合した一歩進んだ制度改革が必要ではないでしょうか。

元ダメ夫の家事・育児のススメ

余談ではありますが、実は私も昔は家事をやらない夫でした。しかし、学生に教えているうちに考えが変わり、皿洗いや料理など積極的にやるようにしてみました。すると、妻の笑顔と「ありがとう」が増え、家庭が驚くほど円満になりました。会話が増え、より家庭が居心地の良い大切な場所になったことは言うまでもありません。笑顔で「俺がやる、休んでな!」は魔法の言葉です。

上手くやるコツは、手伝ってやるのではなく、家事をやるのが当たり前、やってもらったらありがとうと考えることです。自然と家庭に「ありがとう」が増えていきます。そして、家事は女性の方が師匠です。弟子になったつもりで、しっかりやり方を聞き、彼女の方法を踏襲することを忘れずに。

さらに、自分で家事をやりさまざまなことにも気づけました、例えば、食事をしたとき「いただきます」と「ごちそうさま」だけでは足りません、「おいしい」が絶対必要です。

家庭円満を勝ち取りたい男性は、積極的に家事・育児にチャレンジしてみましょう、私の経験では、家庭内にとどまらず、なぜか会社や家庭外でも良いことが起こりますよ。