ホワイトカラー・エグゼンプションは日本に根付くか

2014.8.18

企業

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政府が2014年6月にまとめた成長戦略の目玉として導入を決めた、年収1,000万円以上の高収入の専門職に限って、労働基準法で定められた一日8時間、週40時間の労働時間規制を外し、成果によって給与を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を受け、伊藤忠や富士フイルムなどの主要企業が導入の検討を始めました。
政府は2007年に「ホワイトカラー・エグゼンプション」法案をまとめていましたが、残業手当や深夜・休日手当が支払われなくなるため、「残業代ゼロ」「過労死促進」との批判を受け、国会への法案提出を断念していました。
欧米では従来の裁量労働制(実際の労働時間とは関係なくあらかじめ定めた時間働いたとされるみなし労働時間制)より、成果重視の傾向が強まり、多くの国が導入。アメリカでは雇用者の20%程度が対象になっています。

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Q.ホワイトカラー・エグゼンプションとは、働く時間の長さを自己裁量にして、残業代などの手当てを外す、ということでしょうか? 今のところ年収が1,000万円を超える人が対象のようですが、だとすると、導入後、手当てが外れることによって、年収が減ることもあるということでしょうか?

A.年収1,000万円を超えるような人はそもそも残業代とは無縁の人が多いのではないですか?

 給与所得者の4%弱がその対象者ということになりますよね。100人中4人もいるのかと思うか、4人しかいないのかと思うかは、それぞれの価値観ですが、1,000万円を超えるような人は、だいたい管理職で、残業代も最初からついてない人が多いと思いますよ。
 それにしても、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入するなら、もう少し対象年収も下げた方がいいと思います。年収1,000万円以上なんて、大企業のホンの数%じゃないですか。本気でやるつもりなら、日本全体の議論を巻き込むくらいじゃないと。今のままだと結局、制度を導入して経団連と一緒にやりました、というアリバイ作りみたい。

Q.導入を検討している企業のなかには、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現を期待する声もあるようですが、成果重視の傾向が強まることで、結果、働く時間が長くなってしまうことはないのでしょうか?

A.それは制度の使い方次第だと思いますよ。

 以前も成果主義が流行ったことがありましたが、結局日本では根付かずに、尻すぼみになった感があります。数字で測れる部署はいいですけど、目に見えない成果をどうすればいいのか、など評価基準を明確にしないと日本ではなかなか難しい気がします。(佐藤尊徳)
[参考:「労働時間規制の緩和制度 導入 伊藤忠・富士フイルム検討」(日経新聞1面 2014年8月18日)]

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