容器再利用プラットフォーム「Loop」で“捨てるという概念を捨てる”生活へ

2021.9.13

社会

0コメント
容器再利用プラットフォーム「Loop」で“捨てるという概念を捨てる”生活へ

プラスチックごみによる海洋汚染は深刻だ。世界で少なくとも年間800万トンのプラスチックごみが海に流れ出し、何もせずにいれば2050年には海に生息する魚の総重量を上回る(2016年、世界経済フォーラム)という。「このままでいいわけはない」。その意識はあっても、身の周りはプラスチック製品であふれ、その便利さや入手しやすさも相まって、企業も消費者も、なかなか抜け出すことができずにいる。

そんななか、ガラスやステンレス製といった繰り返し使える容器をリユースしながら商品を販売する、米テラサイクルが手がける循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」が注目を集めている。“使い捨て依存”からの脱却を目指す同社の取り組みは、危機感と後ろめたさの間で行き詰っている私たちの消費行動に変化をもたらすかもしれない。

“牛乳屋さん方式”を現代に復活させる

「Loop(ループ)」は、世界20カ国以上でビジネスを展開するアメリカのベンチャー企業・テラサイクルが手掛ける循環型ショッピングプラットフォームだ。プラスチック製の使い捨て容器の代わりに、ガラスやステンレス製といった再利用できる容器を使用し、ユーザーが使った後、容器の回収、洗浄、商品の再充填をして繰り返し提供するというもの。日本では昔から馴染みのある“牛乳屋さん方式”である。

2019年5月にアメリカ、フランスで試験的にスタートし、洗剤、アイスクリーム、オレンジジュース、クッキーなど300以上の商品を再利用可能な容器で提供。2021年5月には、5番目の市場となる日本に上陸、東京を中心にイオン19店舗にて展開(2021年6月26日現在)。8月31日からは東京(離島を除く)・神奈川・千葉・埼玉の在住者を対象(事前登録者5000 世帯)にLoop ECサイトの試験運用を開始した。味の素、キッコーマン、資生堂、アース製薬などブランドパートナーとして参加する企業も続々と増えている。

日本向けLoopのサイト

容器の所有権を企業に戻して、ごみを資産へ

Loopの誕生は、テラサイクル創業者であるトム・ザッキー氏が、プリンストン大学1年のときに出会ったミミズがきっかけだった。ミミズに食べ残しを与えてできた堆肥で観葉植物を育てている友人を見かけ、「ごみを出すのは人間だけ。人間以外の生物はごみを出さない」と気づき、“捨てるという概念を捨てよう”というミッションのもと、テラサイクルを創設。

ミミズの糞から作った液体肥料を使用済みペットボトルに詰めて販売したほか、回収したビーチサンダルをリサイクルして遊具を作るなど、“ごみを使った商品づくり”を開始し、大成功を収めた。その後、環境意識の高い多くのスポンサー企業とごみ回収プログラムを行い、国連の名誉ある賞等も受賞する。しかし、事業を進めるごとに限界を感じるようになったという。

テラサイクルの日本法人、テラサイクルジャパンのマーケティング&コミュニケーションズ ディレクター富田大介氏はその点についてこう語る。

「リサイクルにはお金がかかるのです。回収費用、リサイクル費用など、すべてに対してスポンサーが付けば、おそらくどんなものでもリサイクルはできます。しかし、まったく経済合理性がないので、お金を出す企業が少ないというのが現状です。そこでわれわれは、より早くミッションを遂行し、持続可能なビジネスモデルにするには、ごみを再生させるのではなく、ごみそのものを出さないという考えに至ります」

考えついたのが容器の所有権についてだ。例えば“牛乳屋さん”の場合、もともと容器は回収して何度も使う企業の資産だった。それが軽くて安価な紙やプラスチックに取って代わり、商品をパッケージごと提供することで、容器の所有権は消費者のものとなった。そこでテラサイクルは、容器の所有権を企業側に戻せば、空き容器はごみではなく資産になるだろうと考えた。そうすれば一度きりで使い捨てられることはないはずだ、と。そうして生まれたのが循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」だ。

海外のLoopで販売されている再利用可能なパッケージ例。

結果としてエコ、肩ひじを張らないラフさが魅力

2019年にアメリカでLoopのサービスが開始された際の消費者アンケートでは、その魅力として容器の「デザイン性」「機能性」「利便性」と答える人が多かった。当初予想していた「環境にいいから」といった理由は意外に少なかったという。

従来のプラスチック製の容器は、生活感が出ないようにとなるべく人目につかない場所へ収納したり、別の容器へ移し替えたりする人がいるが、Loopのパッケージは、そのまま使えるスタイリッシュなデザインに仕上げられている。また、商品の使いやすさやイメージに沿って、各企業が容器を工夫している点も、より商品の良さを引き立てている。

パッケージのクオリティが高ければ見せる収納としてもレイアウトできそう。

また、オンラインで商品を注文すれば配達時に、販売店で購入するときは店舗へ空容器を持参すれば、その都度回収してくれるので、家にごみが溜まらず廃棄の手間もかからない。

Loopの仕組み

商品を注文する際に預り金(デポジット)を払うと、再利用可能なLoop容器で商品が提供される。預り金はLoop容器の返却時にLoopアカウントへ預り金残高として反映、次回の預り金として利用できる。もちろん払い戻しも可能。

便利なインフラとして活用することで、結果としてエコにつながる。この肩ひじ張らないラフさを介したサステナブルの拡大が、テラサイクルの真骨頂でもある。

一方、企業にとってのLoopの魅力はどうだろうか。

先に述べたとおり、Loop容器は企業にとっての資産なので、独自の工夫でプラスアルファの価値を付加することができる。例えば、ある消費財メーカーはプラスチックだった容器をステンレスにすることでウェットティッシュを乾燥しづらくさせた。また、ある有名アイスクリームブランドは、素手で持っても冷たくならず、かつアイスも溶けにくい容器を開発。企業はその分投資が必要になるが、利便性が向上することで、高くなるデポジットも受け入れられる傾向にあるという。

将来的には、IoTを搭載し自動で調味料を計量する、温湿度をチェックし品質管理する、残量がわずかになると注文するといった機能をつけることも夢ではなく、これまで以上に消費者の暮らしやすさや便利を追求した商品にすることが可能だ。

「アメリカでも当初は、エコ意識の高い人たちの利用が多くなると予想していましたが、実際はそうではなく、カッコイイ、おしゃれ、便利と思っていただいた方々が大半でした。実はこのことはとても重要です。エコというと、とかく“我慢”や“努力”というイメージが強いですが、それではなかなか浸透しません。まずは、消費者に使ってみたいと感じていただくこと。そして誰もが使えるプラットフォームになることで、当社が目指している“捨てるという概念を捨てる”世界にたどり着けると考えています」

本質的なリサイクルのために知らなければならないこと

世界的に環境対策への意識が高まっているのは確かで、2021年1月に施行された「改正バーゼル法」により、プラスチックごみの輸出が規制され、これまで以上に国内での適正なリサイクルが求められるようにもなった。

とはいえ、プラスチックごみの問題はなかなか手ごわい。日本国内だけに目を向けると、プラスチックごみの総排出量は850万トン(2019年)で、世界的に見ても上位にランキングされる多さだ。

日本で行われているプラスチックのリサイクル率は85%を超えるといわれているが、実態はプラスチックごみから別のプラスチック製品を作る「マテリアルリサイクル」が約22%、他の製品の原料として使う「ケミカルリサイクル」が約3%で、プラスチックごみを燃やした際に得られる熱エネルギーを回収する「サーマルリサイクル」が全体の約60%を占めている。マテリアルリサイクルも強度の面で課題があり万能ではない。プラスチックごみの再利用率を高めるのであれば、まずは現実を知り、社会として適切なリサイクルとは何なのかを考える必要があるのではないか。

「Loopのような気軽に取り組めるものがある一方、どうしてもプラスチックから脱却できないものもあります。そういうものがどのようにリサイクルされるか、正しい知識も広めていきたい。例えば、ペットボトルとフタ・ラベルは原材料が違うので分別する必要がある。汚れやカビが付着していると再生プラスチックに影響が出るので、水洗いし、乾燥させるなどです。

これらが徹底されていないとすぐにはマテリアルリサイクルには回せず、現状は処理場の方々が手作業で分別をしています。ごみが自分の手から離れた後、どのように処理されていくのかを考え、この作業を消費者各自で行なえば、リサイクルのコストは今よりもぐんと安くなります」

それはLoopで繰り返し使う容器にしても同じことが言える。耐久性のある容器であっても手荒に扱い、容器としての機能を損なわせてしまうと、それはごみになってしまうだろう。手元にある今は自分の所有物だが、そこから離れたら企業のものとなり、そして次の消費者のものになるというサイクルを意識することで、Loopの価値が末永く維持されていく。

いま一度、“ものを大切に使う”ということを再確認し意識をもって行動できれば、“使い捨て依存”にある社会も、持続可能なものへと少しずつ舵を切っていくのかもしれない。