なぜ大物議員たちは負けたのか? 世代交代を求める声大きく

2021.11.5

政治

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なぜ大物議員たちは負けたのか? 世代交代を求める声大きく

東京8区で自民・石原伸晃氏を破った立憲民主・吉田晴美氏(左) 写真:つのだよしお/アフロ

与党の勝利で終わった衆院選だが、今まで無類の強さを誇った大物議員の敗北が目立った。選挙を取り仕切った自民党の甘利明前幹事長が、現役幹事長として初めて選挙区で敗北。就任1カ月での辞任を余儀なくされたのに加え、石原伸晃元幹事長は比例代表での敗者復活すらかなわず落選した。当選10回を超える立憲民主党の小沢一郎氏や中村喜四郎氏らが初めて選挙区で敗れたのも永田町に衝撃を与えた。相次ぐ大物落選の訳とは。

現役幹事長、初の選挙区敗北

「猛烈な落選運動が展開され、誤解されるようなニュースが徹底的に広げられた」。衆院選の開票が進む10月31日夜。自民党の開票センターで報道各社の中継取材に臨んだ甘利氏は、神奈川13区における自らの苦戦について問われ恨み節をこぼした。その後、日付を越えたころに「落選確実」が報じられた。

甘利明氏(72)は衆院議員を務めた父・正氏の神奈川中央・北西部の地盤を継ぎ、1983年に新自由クラブ公認で初当選。1986年には自民党に移り、約40年にわたり衆院議員を務めてきた。1998年には小渕内閣の労働相として初入閣。衆院予算委員長や経済産業相、規制改革担当相などを歴任してきた。その間、1996年と2009年の衆院選では小選挙区敗北による比例復活を経験している。

第2次安倍政権では発足直後から経済財政担当相に任命されたが、2016年に都市再生機構(UR)をめぐる口利きと金銭授受問題が発覚。辞任に追い込まれたが、後に不起訴となった。甘利氏は幹事長就任直後から「説明責任は十分に果たしている」と繰り返してきたが、今回はこの問題への批判が尾を引き小選挙区敗北につながったとみられる。

甘利氏は比例復活を果たしたものの、“現役幹事長、初の選挙区敗北”の責任をとって辞任。後任には茂木敏充外相が就任した。

自民党内では石原伸晃幹事長(64)が小選挙区(東京8区)で立憲民主党の新人に3万票差をつけられて敗北。比例代表でも復活できずに落選した。野田毅元自治相(80、熊本2区)や原田義昭元環境相(77、福岡5区)、山本幸三元地方創生相(73、福岡10区)ら閣僚経験者の落選も相次いだ。3人は党の定年規定(衆院比例代表候補は73歳未満)により比例代表に重複立候補していなかった。

小沢一郎氏、中村喜四郎氏、人生で初めての敗北

野党では立憲民主党の大物である元民主党代表の小沢一郎氏(79、岩手3区)と、自民党時代には科学技術庁長官や建設相を務めた中村喜四郎氏(72、茨城7区)がともに小選挙区で敗北。比例復活での当選となった。小沢氏はこれまで17回、中村氏は14回連続で当選しており、初めての比例復活。立憲民主では民主党政権で官房長官を務めた平野博文選対委員長(72、大阪11区)や辻元清美副代表(61歳、大阪10区)が比例復活もかなわず落選した。

世代交代を求める無党派層

甘利氏は自らの金銭問題の影響が大きく、立憲民主の平野氏や辻元氏らは選挙区が大阪で、日本維新の会躍進のあおりを受けた格好。しかし、大物が相次ぎ選挙区で敗れた背景には“世代交代”を求める若年層や無党派層の支持離れが指摘される。

甘利氏(72)を破った太栄志氏は44歳(立憲民主新人)、石原氏(64)を破った吉田晴美氏は49歳(立憲民主新人)、野田氏を破った西野太亮氏は43歳(無所属新人)、山本氏(73)を破った城井崇氏は48歳(立憲民主)、小沢氏(79)を破った藤原崇氏は38歳(自民党)といずれも30代・40代と若い。

共同通信の出口調査によると、石原氏の場合は無党派層の65%が立憲民主の新人候補に投票。次いで20%が日本維新の会の新人に票を投じ、石原氏は15%にとどまった。

日本経済新聞によると、今回の衆院選で70歳以上の比例復活を含めた勝率は前回の55.7%から43.3%に低下。逆に40歳代の勝率は39.7%から45.5%に高まった。