参院選公示【7/10投開票】 野党バラバラで過去2番目に多い立候補者数

2022.6.22

政治

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参院選公示【7/10投開票】 野党バラバラで過去2番目に多い立候補者数

6月21日に行われた9党党首討論会 写真:ロイター/アフロ

参院選が6月22日に公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦が始まった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた物価高への対策や安全保障政策、ポストコロナを見据えた経済振興策などが争点。与党が公示前の勢力を維持して岸田政権の政権基盤を安定させることができるか、憲法改正に前向きな改憲勢力が3分の2議席を確保できるかどうかなどが注目となる。2019年7月に行われた前回の参院選の投票率は48.80%で過去2番目の低さだった。野党が連携できないなかで国民はどれだけ興味を持てるか。

立候補者は545人と高水準、女性候補も多数

「世界的な歴史を画する課題に日本がどう挑戦するのか、国民の皆さんに判断いただく選挙だ」。岸田文雄首相は6月15日の記者会見でこう述べ、新型コロナウイルス感染症や物価高への対策が参院選の争点と強調。勝敗ラインについては「非改選含めて与党で過半数」と語った。

今回立候補したのは全部で545人(選挙区367人/比例代表178人)と前回を175人上回る多さ。野党が連携しなかったことが要因のひとつとみられる。女性候補は全体の3割超で過去最多だ。

参議院選挙の仕組み

参院選は3年ごとに総定数248の半数ずつ入れ替える仕組み。124人のうち74人を都道府県単位の選挙区、50人を全国単位の比例代表で選ぶ。

投票所では選挙区と比例代表の2票を投じる。比例代表は政党名か、候補者の名前のどちらを書いても大丈夫。政党ごとに政党名と個人名の票数を合計した数で各党への当選者数を割り振り、各政党内では個人票が多い順に当選者を決める仕組み。

今回の選挙戦で特に注目されるのは3つ。一つ目は岸田首相が自らの政権基盤を安定させられる程度に与党が勝つことができるか。二つ目は与党を中心とする改憲勢力で、憲法改正の発議に必要な参院の3分の2議席を獲得できるかどうか。三つ目は比例票で立憲民主党日本維新の会のどちらが野党第一党になるかだ。

与党はどれだけ勝つか、ボーダーは69議席

自民党が2012年に政権復帰して以降、3回の参院選で自民、公明の与党は安定した戦いぶりを見せてきた。2013年は自民党が65議席、与党で76議席を獲得して大勝。2016年は自民党で56議席、与党で70議席、2019年は自民党で57議席、与党で71議席を獲得していずれも勝利している。

今回、首相が設定した勝敗ラインの「非改選含めて与党で過半数」は、具体的には非改選を含めて125議席ということになる。与党の非改選議席数は69なので、今回の選挙で56議席取れば勝利ということになる。過去3回の選挙でいずれも70議席以上を獲得しており、さらに今回は定数も増えていることからかなり低めの目標設定と言っていい。

実際には公示前勢力で改選対象の自民55、公明14の計69議席を上回るかどうかで勝利の度合いが変わってくる。69議席を割り込めば自民党内で首相の「責任論」がささやかれ、党内基盤が揺らぐ可能性があるし、上回れば党内基盤は安定する。安倍晋三元首相が長期安定政権を築くことができたのは選挙が強かったからであり、菅義偉前首相が1年で政権の座を追われたのは選挙の顔として不安視されたから。いつの時代も選挙に勝つかどうかで権力の強さが変わってくる。

改憲勢力は4党で82議席

仮に与党が“そこそこ”勝つことができたとして、次に注目されるのは改憲勢力の数だ。岸田首相は「今回の選挙でも選挙公約の重点項目の一つとして憲法改正をしっかりと掲げて選挙を行っていく」と意気込んだが、実際に国会で憲法改正を「発議」するには、衆参両院で3分の2以上の議員の賛成が必要。衆院では2021年1月の選挙で改憲に前向きな自民、公明、維新、国民民主の4党で3分の2を上回った。今回の参院選で4党が3分の2議席を確保すれば、改憲議論が前進する可能性がある。

総定数248で3分の2というと、166議席とればいいこととなる。4党の非改選議席数を足すと84なので、今回の選挙でも82議席とれば3分の2以上を確保できる。4党の公示前勢力のうち、今回改選となる議席数は与党の69に維新の6、国民民主の7を加えると82議席。公示前勢力を維持できれば3分の2を確保できることとなり、微妙な情勢だ。

野党第一党を争う立民と維新、社民は党の存亡かける

三つ目の注目は比例代表における野党第一党の行方だ。前回2019年の参院選では立憲民主が自民に次ぐ791万票を獲得して8議席を確保。野党では維新5、共産4、国民3、令和新撰組2、社民党1、NHK党1と続いた。

しかし、その後、立憲民主の支持率が伸び悩むなか、新型コロナ対策で吉村洋文大阪府知事への注目が高まるにつれて吉村氏が副代表を務める維新の支持率が上昇。2021年の衆院選でも大幅に議席を伸ばしたほか、直近の世論調査では支持率や「比例投票先」で立民を上回ることも珍しくなくなった。維新は今回の参院選の目標を「比例で野党第一党」と位置付けており、立民との争いの行方が注目される。

一方、野党内でも瀬戸際に立たされているのが社民党だ。政党が政党であるには所属議員5人以上か、直近の衆院選か参院選の比例代表か選挙区で2%以上の票を得る必要がある。現在の所属議員は衆参1人ずつの2人で、2021年の衆院選では比例と選挙区ともに2%を割り込んだ。今回の選挙で2%以上の票を集めないと政党から政治団体に転落することになる。前身の旧社会党の結党から77年の歴史の中で最大の危機と言っていい。

参院選といえばタレント候補の当落も注目だろう。参院の比例代表は全国の有権者に名前を書いてもらわなければならないため、各党は積極的に芸能人やスポーツ選手を擁立するのが通例。今回は比例代表に加えて東京選挙区でもタレント候補がずらりと並ぶ。投票日の深夜、誰が笑って誰が泣くのか。投票日当日は深夜まで開票速報から目が離せない。