新冷戦時代? 元祖冷戦との違いを各国間の関係性から読み解く

2022.6.28

政治

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新冷戦時代? 元祖冷戦との違いを各国間の関係性から読み解く

元祖冷戦を象徴するベルリンの壁の跡地、イースト・サイド・ギャラリー(ドイツ)

アメリカ企業の縮小・撤退や、航空・輸送等への影響など、ロシアのウクライナ侵攻後、「冷戦時代」を彷彿とさせる動きが各所でみれらている。

冷戦は、本当に終わったのだろうか? “新冷戦時代”とも定義できる現状と今後を、元祖冷戦当時の世界情勢などと比較し考察する。

ロシアによるウクライナ侵攻から4ヶ月が過ぎるが、その影響は経済領域を中心に当時の冷戦を我々に想像させる。欧米諸国を中心にロシアへの経済制裁が強化される中、たとえば、ロシア国内に展開するマクドナルドやスターバックス、アップルなどアメリカを代表する世界的な企業は相次いで営業停止や規模縮小、撤退などを発表した。冷戦終結直前の1990年1月31日、した際、多くのモスクワ市民が行列を作った風景を当時小学生だった筆者も覚えているが、このような動きは冷戦への回帰をイメージさせる。

日本国内にも影響は広がっている。日本貿易振興機構(JETRO)ことから、日本企業にも脱ロシアの動きがはっきりとみられる。

また、日本とイギリスやフランス、ドイツなど欧州を結ぶ国際線は基本的にロシア上空を飛行しているが、ウクライナ侵攻でロシア上空が飛行できなくなったことにより、たとえばエールフランスは9月6日までパリ羽田便を停止し、成田や関空を結ぶフライトでは中央アジア上空など迂回ルートでの飛行を余儀なくされている。それによって飛行時間が通常より2〜4時間あまり増え、輸送コストも大幅に上昇しているという。これは当然ながらJALやANAなど日本の航空会社にも当てはまる。そしてこれに関連するが、欧州各国への国際郵便も大きな影響を受け、たとえば今日フランスなどへはパッケージの航空輸送が停止されており、送れるのは手紙など書類のみとなっている。冷戦時、日本から欧米へ向かう便はシベリア上空を回避し、アンカレッジ経由を主なルートとしていたが、上述のような最近の動きからも冷戦への回帰が想像できる。

こういった冷戦への回帰を巡る動きがあちらこちらでみられると、本当に冷戦は終わったのかと疑問に感じる人も少なくないだろう。では、本当に冷戦は終わったと言えるのだろうか。

結論から言うと、ソビエト連邦が崩壊し、共産主義陣営が衰退したあの30年前を意識すれば、東西冷戦は終わったといえるが、その名残は今でも残っており、今後は質の異なる新冷戦が顕著になる可能性が高いと言えよう。

今日でも冷戦の名残は残っており、朝鮮半島がその典型例だ。東西冷戦中、朝鮮半島では自由主義陣営と共産主義陣営の対立軸による代理戦争が勃発し、その象徴である北緯38度線は今でも残っている。

そして、今後は質の異なる新冷戦とはまさに米中対立を中心とする新たな大国間競争である。米ソ冷戦の時ソビエト連邦にはマクドナルドがなかったように、世界経済は両陣営で分離していたが、今日米中は経済で深い相互依存関係にあり、欧州は必要とする天然ガスの多くをロシアに依存している。要は、元祖冷戦と今後顕著になる新たな冷戦は、主軸となる国家、経済の相互依存という部分で大きく異なるのである。

冷戦が終わったかどうか、これは冷戦という言葉をどう定義するかによる。冷戦を元祖冷戦と捉えるならば、それは終わり、その再現はないように筆者は考える。しかし、冷戦という言葉を元祖冷戦に限定せず、中身が変わっても大国間同士の対立と捉えるのであれば、冷戦は終わっておらず、今後冷戦の再現が表面化する可能性が高いといえよう。

しかも、元祖冷戦も新冷戦もアメリカが一方の主軸となるが、元祖冷戦と違い、新冷戦においてはアメリカと対立する主軸である中国がアメリカを経済力で今後上回る可能性も指摘されている。元祖冷戦においては自由主義陣営が経済的にも有利な立場を堅持してきたが、非自由主義陣営の中国が自由主義陣営に対して優勢になれば、どのような国際秩序が形成されていくのだろうか。我々日本人は、冷戦の名残は今でも残っており、今後は新冷戦がどのように国際秩序を変えていくかを注視していく必要がある。ウクライナ情勢はそれを我々に投げ掛けている。