崖っぷちの岸田政権 早くも気になるポスト岸田の本命、ダークホースはこの人だ

2022.12.1

政治

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崖っぷちの岸田政権 早くも気になるポスト岸田の本命、ダークホースはこの人だ

第2次岸田内閣発足時(2022年8月10日) 写真:ロイター/アフロ

岸田文雄首相が崖っぷちに立たされている。旧統一教会との接点が次々と発覚した山際大志郎前経済再生担当相に続き、死刑執行の職務を揶揄した葉梨康弘法相、政治資金問題が浮上した寺田稔総務相が相次ぎ辞任。いずれも首相の決断が遅かったことから国民の不満が噴出し、一部の調査では内閣不支持率が50%を超えた。首相の自民党総裁としての任期は2024年9月までだが、それまでの辞任はあるのか。ポスト岸田の本命とは。

すべてが後手、「聞く力」が「聞きすぎる癖」に

共同通信社が11月26、27日両日に実施した世論調査で、岸田内閣の不支持率は10月の前回調査より6.8ポイント増の51.6%となり、2021年10月の政権発足後、初めて半数を超えた。支持率は4.5%減の33.1%で、こちらは過去最低。首相が3閣僚を事実上、更迭したタイミングについては「遅すぎた」が62.4%にのぼった。

閣僚の更迭をめぐっては、いずれも当初は「辞職させない」と断言しながら、さらなる追加情報が出てから更迭へと追い込まれた。政権発足当初に評価された首相の「聞く力」が、いつしか「聞きすぎる癖」として批判を招いている格好だ。

NHKの世論調査では11月時点で支持率が政権最低の33%、不支持率が最高の46%。菅義偉前首相が唐突に辞意を表明した直前、2021年11月の水準とぴたり一致する。政権の“危険水域”に突入し、首相が打開に向けて解散・総選挙に打って出るとか、2023年の通常国会開幕前に内閣改造に踏み切るとの噂がささやかれるが、いずれにしても安倍晋三元首相のような長期政権を維持していけると見る関係者は少ない。

共同通信の調査では岸田氏にいつまで首相を続けてほしいか聞いたところ「できるだけ早く辞めてほしい」が30.2%で最多。続いて「再来年9月の自民党総裁任期まで」が29.4%、「来年5月の広島での先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)まで」が23.6%だった。

早くも気になる「ポスト岸田」は誰か

首相が早期に辞任した場合、「ポスト岸田」は誰か。現時点で本命視されるのは茂木敏充自民党幹事長、河野太郎デジタル担当相、高市早苗経済安全保障担当相の3人だろう。

茂木氏は栃木県出身で、東大経済学部を卒業後、大手商社の丸紅、読売新聞社を経て世界最大手のコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーで勤務したという華麗な経歴の持ち主。1993年の衆院選に日本新党公認で旧栃木2区から立候補し初当選。日本新党解党後、無所属を経て自民党に入党した。政策通として知られ、2003年に小泉内閣で沖縄・北方担当相として初入閣。その後も自民党政調会長や経済産業相、外相などの要職を歴任した。

岸田首相や安倍元首相とは当選同期で、安倍氏が「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭がいいのは茂木敏充、そして性格が良いのが安倍晋三といわれている」と話した逸話は有名。優秀さを鼻にかけているような態度から党内の人気はいま一つだが、2021年11月に第2派閥の旧竹下派、平成研究会の会長を継いだことで党内基盤も安定した。岸田首相や政権の後ろ盾となっている麻生太郎副総裁とも良好な関係を築いており、本人もポスト岸田に強い意欲を示しているとされる。課題があるとすれば国民的な知名度の低さか。

対照的に国民人気が最も高いのが河野氏だ。河野氏は祖父が河野一郎元副総理、父が河野洋平元衆院議長という政治家一家に生まれ、民間企業を経て1996年の衆院選で初当選した。もともとSNSなどでの発信力が高かったが、安倍内閣で外相や防衛相などを歴任したことでさらに知名度を高めた。菅前首相の辞任に伴う2021年の自民党総裁選に岸田、高市両氏とともに立候補。河野氏は決選投票まで進み、党員・党友票では首相を上回ったものの、国会議員票で大差をつけられ敗れた。

総裁選で敗北したことで自民党広報本部長へ起用され“冷遇”されたといわれたが、河野氏の国民人気は健在で、毎日新聞が11月に行った世論調査で「日本の首相になってほしいと思う人」として最も多くの支持を集めた。第2次岸田内閣ではデジタル相に起用され積極的に発信しているが、課題は党内の支持基盤だ。第3派閥の麻生派に所属するが、会長である麻生副総裁は「河野首相」に消極的で、前回総裁選でも岸田氏を支援した経緯がある。そのため河野氏は同じく国民人気の高い石破茂元幹事長に支援を仰いだが、そのことで逆に党内の「石破アレルギー」を刺激したとの見方がある。

ポスト岸田の本命、最後に挙げる高市氏は一般家庭に生まれたが、松下政経塾を経て岸田首相や茂木氏と同じ1993年の衆院選で初当選した。当選時は無所属だったが、新進党などを経て1996年に自民党に入党。当初は清和政策研究会(現安倍派)に所属したが、野党時代の2011年に派閥を離脱して以降は無派閥。ただ、保守的な政策で知られ、安倍氏にも近かったことから保守系の議員や有権者からの支持が厚い。毎日新聞の調査でも「日本の首相になってほしいと思う人」として河野氏、岸田首相に次ぐ3位に入った。

後ろ盾だった安倍元首相は亡くなったが、中国やロシア、北朝鮮の脅威が増すなか、防衛に関する国民世論の注目も高まっている。時流に乗れば首相への道も開ける可能性があるが、右(保守)に偏り過ぎるとリベラル系有権者の離反を招きかねない。安倍元首相のように支持層を広げていけるかがカギを握る。

ダークホース、菅前首相

ポスト岸田の本命といえばこの3人だが、ダークホースを挙げるとすれば菅前首相だろう。たった1年で政権の座を手放したが、決定的な失政があったわけではない。新型コロナウイルス対応に振り回され、最後は政局を見誤ったことで総裁選への出馬断念に追い込まれた。政策や安定感には定評があるため、岸田首相が唐突に辞任するようなことがあれば当面の“リリーフ(継投)”として白羽の矢が立つ可能性は十分にある。安倍元首相も1年で政権を放り投げた後、再登板して戦後最長の長期政権を築いたのだ。

岸田首相は2021年10月の衆院選、2022年7月の参院選に立て続けに勝利し、大型国政選挙のない「黄金の3年」を手にしている。2024年9月の自民党総裁任期まで、続投を阻むものはない。それでも一寸先に何があるのかわからないのが政治の世界。ポスト岸田として名前の挙がる政治家の一部は、陰で“政権準備”を始めているに違いない。