淡路島を“世界一のおいしい島”に コロナ禍を経てリスタートした「淡路シェフガーデンby PASONA」の願い

色鮮やかなコンテナが立ち並ぶ「淡路シェフガーデン」

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淡路島を“世界一のおいしい島”に コロナ禍を経てリスタートした「淡路シェフガーデンby PASONA」の願い

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総合人材サービス大手のパソナグループが、地方創生事業の場の一つとして注力している兵庫県・淡路島。2023年4月には淡路島西海岸に「淡路シェフガーデン」と「Ladybird Road」をオープンさせ “食”を切り口とした淡路島の魅力発信にいっそう力を入れている。パソナが見つめる淡路島の未来の姿はどのようなものなのか。

株式会社パソナ農援隊 代表取締役

田中康輔 たなか こうすけ

1999年、株式会社パソナ入社。阪神・淡路大震災の復興支援事業、地方創生に向けた新規事業開発等に携わり、2011年、農業分野の振興と地方の活性化に取り組む株式会社パソナ農援隊・代表取締役に就任。農業分野の人材の募集・育成を通じた雇用創出、販売支援、フランス・パリ支店の立上げやブランディング支援を展開。2021年にはAwaji Nature Lab&Resortを兵庫県・淡路島に設立。農業を通じ、「自然環境の保全」「人々の健康増進」「地方の観光振興」に寄与し、人々の豊かなライフスタイルの実現と農業の関係人口増加の取り組みに力を入れている。

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淡路島西海岸に美しい夕日を望むレストランやマルシェがオープン

淡路島の西海岸に誕生した「淡路シェフガーデンby PASONA」(以下、シェフガーデン)と「Ladybird Road(レディバードロード)」は、共に飲食店をメインとした施設。シェフガーデンはコンテナをベースにしたコンパクトなショップが並び、美しい海を望むテラス席での飲食を手軽に楽しめるのが魅力だ。対して、Ladybird Roadは淡路島の海や夕日、夜景を眺めながらゆったりと店内でさまざまなジャンルの世界のお料理が楽しめるレストランやカフェ・バーなどが入ったモール施設で、雑貨店やマルシェも出店している。

パソナの新規事業担当として、施設のテナント誘致やネットワーク構築に取り組んできた田中康輔さんは、シェフガーデンの成り立ちをこのように語る。

「シェフガーデンはもともと、島の東海岸で行っていた事業です。2020年からのコロナ禍で、飲食業界は時短営業や人数制限など、大きな打撃を受けました。こうした事態に見舞われている料理人の皆さんを少しでも支援できないかというのがきっかけです。 コンテナを活用した、“密”を避けられる屋外型のレストランで、テラス席を多く設けており、厨房設備なども完備。そこに出店してくれるシェフの方々を誘致しました」(田中さん、以下同)

東海岸のシェフガーデンは、緊急対策という性質上、期限つきのものだったという。しかし、腕利きの料理人たちによる多彩な食に加えて、開放的な空間や景色が多くの客を呼び込み、「継続してほしい」という声が届くように。さらに、テナントとして入っていたシェフたちからも「淡路島でお店を続けてみたい」という要望が出るようになったことで、島の西海岸に場所を移してリニューアル。Ladybird Roadと共にオープンすることになった。

コロナ禍の影響が落ち着いたことで、元いた店へ戻ったシェフや、店舗運営の経験を生かして地元で出店したシェフもいたが、多くは継続して出店。新たに加わった店とともに16の飲食店がシェフガーデンに入り、今後さらに新規出店の予定も立てられているという。

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シェフのインスピレーションに火をつける、淡路島の豊かな食材たち

シェフガーデンやLadybird Roadには、京阪神のみならず東京などの都市部で腕をふるう料理人も出店している。何が彼らを淡路島へ引き寄せたのだろうか。

「都市部と比較して家賃が安いということもありますが、何よりも料理人の皆さんに響いたのは淡路島の食の豊かさではないかと感じています。出店を検討されていた方たちを実際に生産者のところへ案内して、食材の魅力や面白さを感じてもらう機会を多く設けました。特に都市部では、どうしても市場での買い付けが増えるため、食材が生まれる現場に立ち会うのは難しい。魚の締め方ひとつとっても、市場ではなかなか知ることのできないという話もあります。そこに関心をもってくれる料理人の方も多く、地元産食材の良さを知ってもらうために欠かせない時間でした」

淡路島は農業をはじめ、漁業や畜産業も盛ん。味噌や醤油、酒なども島内に生産者がいて、島の食料自給率は100%を超える。パソナでもチャレンジファームでの就農支援や、地元産の食材を取り入れたレストランをオープンするなど、そのポテンシャルにたえず着目し続けていたという。

さらに、コロナ禍によって人々の価値観が変わったこともシェフガーデンにとっては追い風になった。

「コロナ禍のなかで、多くの人が“豊かさ”について考え直す機会を得たことと思います。健康について考えたという方もいらっしゃるでしょう。そのなかで、物質的な豊かさだけではなく、心身が健康で満たされている状態の豊かさに気づいた人が、地方に目を向け始めているのだと感じますね」

あらゆる食材が揃い、「御食国(みけつくに)」(※)と呼ばれてきた食の宝庫・淡路島。パソナは、豊かな食材を育んできた自然の恵みへの感謝を忘れず、自然を守り続ける活動にも積極的だ。生産者へのリスペクトを忘れず、また、フードロス削減にも精力的に取り組んでいる。そこには、これまでのグルメと抱き合わせだった大量生産や大量消費、飽食といった価値観よりも、心や身体へのやさしさ、自然の中に生きる人間としての健康を考える姿も見えてくる。

「“健康美食”もテーマのひとつです。Ladybird Roadでは、ヴィーガンメニューを提供している店舗もありますし、豆乳やアーモンドミルクを使ったチョコレートの販売店もあります。あらゆる方が食を楽しめる、というのは私たちの目指すべき目標です」

※御食国:古代から平安時代にかけて、朝廷に海水産物などを献上していた国

ヨーロッパの街並みを想起させる異世界感の「Ladybird Road」
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新たな移動手段でスローツーリズムを創出


シェフガーデンとLadybird Roadのオープンから約1カ月。今後クリアすべき課題も見えてきた。

まず、一番の課題は交通アクセスだ。淡路島の面積は東京23区と同じくらいだが、鉄道がなくモビリティは自動車のみ。シェフガーデンのオープン日には駐車場の不足も明らかになったと田中さんは明かす。一方で、すでに新しいモビリティの導入も進んでいる。

「現在はパーク&ライドとして、少し離れた駐車場からシャトルバスを運行していますが、島内の移動にE-BIKE(電動アシスト自転車)を活用する実証実験も行われています。坂道が多い島ではありますが、景色を楽しんだり、クルマで行けない場所へ足を伸ばしてみたりと、淡路島に隠れた魅力を知るのにぴったりの交通手段でもあるんですよ」

運行するシャトルバス

ネガティブな要素でもある“交通の不便さ”を逆手にとって、自転車を使ってゆったりと島を巡り、自分だけのとっておきの景色に出会う旅。近年その魅力が認知されつつある「スローツーリズム」にも合致しており、淡路島の観光をさらに発展させる大きな可能性になりそうだ。

食の豊かさを切り口に、淡路島を“世界一のおいしい島”にしたいと語る田中さん。そのための舞台であり、最も新しい施設がシェフガーデンとLadybird Roadだ。2025年には大阪万博も開催予定で、観光に訪れる人の増加も見込まれる。そのときこそ、淡路島の真のポテンシャルがいかんなく発揮されるチャンスとなることを期待せずにいられない。

淡路シェフガーデン

場所:兵庫県淡路市野島大川57-3

営業時間:11:00~20:00
※季節・天候により変更の可能性あり

»公式サイト

Ladybird Road

場所:兵庫県淡路市野島轟木時清水95-2

営業時間:各店舗によって異なる
※季節・天候により変更の可能性あり

»公式サイト