社会

第1回:なぜ今、禅にハマるのか?

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全生庵は山岡鐵舟が幕末・明治維新の際、国事に殉じた人々の菩提を弔うために、明治16年に建立した禅寺である。多くの政治家や経済人が禅を組みに来る寺として知られている。中曽根元総理が毎週通い、安倍首相も総理になる前は、よく足を運び座禅を組んでいた。トップの人たちは何を求めて座禅を組むのだろうか。七代目住職・平井正修氏の話を聞いた。

臨済宗国泰寺派全生庵 住職

平井正修 ひらい しゅうしょう

1967年東京生まれ。臨済宗国泰寺派全生庵七世住職。1990年、学習院大学法学部政治学科を卒業後、2001年まで静岡県三島市龍澤寺専門道場にて修行。2002年より現職。2016年4月より日本大学危機管理学部客員教授として坐禅の指導などを行なう。著書に、『とらわれない練習』(宝島社)、『男の禅語:「生き方の軸」はどこにあるのか』(知的生きかた文庫)など。

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坐禅の始まりは

お釈迦様は、王位を捨てて6年間難行苦行を続けましたが悟りは開けなかったのです。そこで座禅を組んで悟りを開いたのです。身体を痛めつけることではなく、心穏やかにすることで悟りを拓いたわけです。釈迦と同じ体験をしようと思ったのが始まりだといわれています。その後、お釈迦様が説いたことや、お弟子さんが説いたものが、膨大なお経として残っているわけですが、我々の宗派は座禅によって悟りを開こうというものです。

なぜ今、坐禅が静かなブームなのか

東日本大震災後は特に顕著だと思うのですが、将来に対する漠然とした不安が増大しているのだと思います。便利になったのはいいのですが、インターネットや携帯電話の普及などで、昔とは違った情報が溢れ、不安も大きなものになっているのではないでしょうか。そこで心を落ち着けて、何か救いを求めるという行動に出ているのでしょう。

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坐禅を始める時に必要なことは

全生庵では、毎週日曜日に初心者向けの座禅会を開催しています。一番最初に皆さんに説くのは、まず捨てるということです。「断捨離」という言葉があるように、整理整頓をするためには、まず捨てることから始めなさいと。頭の中も同じで、余計なことは捨てることが大事なのです。

捨てるとはどういうことか?

人間には将来に対する漠然とした不安など、所謂影のようなものに支配されることがあります。影に支配されて自分の心が左右されてしまうことがあるので、そうならないうちにいい意味での諦めが必要です。今考えても仕方のないようなことは、振り払えばいいのです。何で人間は年をとるのだろうかという不安を抱えても仕方のないことです。前向きに生きるために捨てないと、どんどん溜まっていきます。たとえ捨てても現代社会はいろんな不安が入ってきますから、心を落ち着けて捨てる行為をしなさいということです。

中曽根元総理も捨てていた

中曽根元総理は、土曜日か日曜日に1時間半くらい座禅を組みに来ていたのですが、座禅を組んで捨てていくのだと仰っていました。悟りを拓くとかいうことではなく、嫌なものを振り払って、次の一週間に向かうのだと。トップになれば誰でも孤独ですから、偉大な政治家も経営者も、不安がないわけはありません。機会があれば、禅にまつわる言葉など解説をしていきたいと思います。

全生庵までのアクセス

住所:台東区谷中5-4-7

最寄り駅:JR・京成電鉄 日暮里駅より徒歩10分/地下鉄千代田線 千駄木駅(団子坂下出口より徒歩5分)

 

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