中国主導で2015年末に設立されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、アジア太平洋地域における新興国・途上国のインフラ整備を支援する国際金融機関。中国は3月末までに参加の意思を示すよう各国に求めていましたが、日本政府は参加判断を3月末以降に見送る方針に決めました。
日本としてはアジアでのインフラ輸出を拡大させたいという思いがありますが、AIIBの組織運営における透明性や、融資審査の公平性などが懸念事項で、中国側の回答や4月に控える日米首脳会談の動向を見極めつつ、6月末の参加国正式決定時には参加の是非を決めたい方向。
日米は、自らが主導するアジア開発銀行(ADB)と同様に、複数ヵ国からなる理事会による厳しい融資審査をAIIBに導入することを要求。一方、中国側は「西側諸国のルールが最善だとは限らない」と反論、迅速な意思決定を重んじています。
AIIBの参加表明国は現在33ヵ国。アメリカの同盟国であるイギリスが参加を表明した結果、ドイツやフランス、イタリアなども追従し、アメリカが孤立した形となっています。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Qアジア地域にはAIIBと同様の機関であるADBが存在します。主導国家が日米と中国という違いがあるのはわかりますが、中国側は具体的にはどのように差別化していくつもりなのですか?
A差別化とか考えてないと思う。
AIIBと同じ役割を果たすADBは日本中心で、総裁もずっと日本人。金融の部門でも盟主になりたいと考えている中国としては面白くないんじゃない? 要は融資合戦をするつもりでしょ。
周辺国を取り込んでいく手段として金融にも手を出した、ということ。TPPには中国も入ってないし、日米と対峙して行くために、アジアを組織化していこうと考えているんだ。
Q中国はAIIBによって人民元(元)の国際化を狙っているようですが、これがよくわかりません。通貨の国際化にはどのようなメリットがあって、なぜAIIBによってそれが実現できるのですか?
A米ドルは基本的にどの国でも通用する通貨。それは、アメリカという国が圧倒的な軍事力と経済力を持っていて、「潰れるわけはない」という信用力があるから。中国は、それと同じようなことを目指したいんだ。
今、元は基本的に中国国内でしか通用しない通貨。それは中国に信用力がないというよりも、これまで中国自体が閉鎖的だったから。簡単に国外に持ち出せないし、外貨との売買も制限が掛かっていた。純粋な変動為替(需給のバランスで交換比率が決まること)ではないし、扱いにくい。
通貨が国際化していろんな国で通用するようになると、為替変動リスクがなくなって、1元はどこに行っても1元になる。それはすなわち、中国の影響力が増していくということを意味している。
元の支配力を広めていくために、元でAIIBの融資をして、他国でも元が流通するようにしていきたい、という思惑があるんじゃないの? ま、いずれにしても、信用力がないと無理だけどね。
(佐藤尊徳)
[参考:「政府、参加判断先送り アジア投資銀 透明性など見極め」(日経新聞朝刊1面 2015年3月25日)]
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