ミャンマー国会は6月25日、憲法改正案の採決を行い、最大野党である国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首の大統領資格を認めない現行憲法の規定を、改正しないことを決めました。これにより、2015年秋に行われる総選挙後の大統領選に、スー・チー氏は出馬できないことに。
スー・チー氏は採決後の記者会見で、「与党や国軍議員は変化を求めておらず、国民の希望も尊重していない」と批判しました。国民の間で”スー・チー人気”は高く、総選挙ではNLDの優勢が予想されていて、スー・チー氏に代わる大統領候補の擁立が急がれます。
ミャンマーの大統領資格
第2次大戦後に軍事政権下で独立、2008年に国民投票によって新憲法案が可決され、民主国家となりました。現行憲法では、外国籍の親族がいる人物の大統領資格は認められておらず、英国籍の息子が2人いるスー・チー氏は大統領資格を満たすことができません。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q憲法9条に限らず、日本ではなぜ数十年間も具体的な改憲の動きが見られなかったのでしょうか?
A改憲の動きはあったよ。1955年に立党した自民党の精神は自主憲法制定だもの。
欧米の経済制裁で疲弊していたミャンマーは、形の上で民主化をした。それでも、実質は軍事政権が実権を握っているから、本当の民主化という意味ではまだまだだよね。
さて、質問の答えだけど、諸外国も憲法改正に関しては結構ハードルが高い。アメリカは日本よりも物理的なハードルは高いよ。
でも、日本は敗戦後に作られた「平和憲法」で、「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」で構成される第9条の存在が非常に大きいと思う。どうも、”改憲=軍事国家再び”というようなイメージがあるから、難しい。
逆にみんなは改憲することをどう思っているのだろうか?
Q日本の憲法はアメリカのそれをモデルにしていますが、ミャンマーなどはどこの憲法が参考にされているのでしょう? 憲法には系統などもあるのですか?
Aアメリカをモデルにしているわけじゃないよ。アメリカ(GHQ)が、再び日本が軍拡に走らないように占領下で作ったものだ。
それを如実に表すのが、憲法第1条の「天皇象徴制」。天皇から政治的な影響力を一切排除したのは、その前の大日本帝国憲法に、天皇は陸海軍の大元帥の国家元首と明記されていたから。それを”象徴”にしたのは、ここから日本を占領下に置いて、支配していこうというGHQの意図が見え隠れする。
再び軍拡するかどうかは別にして、日本が自主的な憲法を作りたい、という気持ちはわかる。どうも、第9条のことだけがクローズアップされすぎる気がするな。
(佐藤尊徳)
[参考:「ミャンマー改憲案否決 スー・チー氏の大統領選阻止」(日経新聞9面 2015年6月26日)]
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