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ゴルフ場新規取得の失敗で露呈した ゴルファーのアコーディア離れ

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ここへきてゴルフ場の経営破たんラッシュが再燃している。その要因の多くは、いうまでもなく預託金償還問題だ。だが、法的整理を申請し預託金債務から解放されたとしても、経営再建には多くの課題を克服しなければならな

アコーディア・ゴルフの存在

2015年3月31日に民事再生法を申請し経営破たんに追い込まれた千葉県成田市のスカイウェイカントリークラブ(CC)の経営再建計画が迷走している。背景にあるのは、同CCを運営するスカイウェイCCが再建スポンサーとして選出したアコーディア・ゴルフの存在だ。

近年、法的整理を申請するゴルフ場の再建スキームは、あらかじめスポンサーを選定しておくプレパッケージ型が一般的。スカイウェイCCも当然のごとくそれに習ったわけだが、そのスポンサーが、あろうことか悪名高いアコーディアだったことに会員が猛反発したのである。

アコーディアが、これほどまでに嫌われる理由について検証すると、会員を軽視しているかのような経営姿勢が浮き彫りとなる。

アコーディアは2014、”アセットライト”なる施策を打ち出したことは記憶に新しい。これは同社が設立させたSPC(特別目的会社)にゴルフ場の約7割を売却、そのSPCの出資持ち分すべてをシンガポール市場のファンド、ビジネス・トラストで上場させ、アコーディアはSPCからゴルフ場の運営を受託するというもの。簡単にいえば、保有と運営を分離。バランスシートを軽くした上で、アコーディアはオペーレーションに特化する企業に姿を変えたのだ。

だが、このビジネス・トラストの上場で必要とされる配当原資は、当然、アコーディアの運営利益から拠出することになるのだが、一方で競合のPGMホールディングから仕掛けられたTOB(公開買付け)を回避するため、株主に高配当を約束している。いうなればアコーディアは2つの高額配当が義務付けられていることになり、それらをクリアするためにはこれまで以上に高い利益が必須。

しかし、ゴルフ場の客単価の下落が常態化しているなかで実現するには相応の効率経営が求められるのだ。

割りを食うのは会員ゴルファー

そうすると何が起こるか。一番の問題はゴルフ場の命というべきコースコンディションの低下は避けられないということ。実際、アコーディアのゴルフ場の評判は、以前よりお世辞にも良いといえなかったが、アセットライトの実施後はさらに悪化したという。

また、ゴルファーの間では、同社の経営は会員より多くの金を落としてくれるビジターを優遇するという認識が定着しており、スカイウェイCC会員の拒絶反応に拍車をかけている。

「今回のスカイウェイCC破たん劇では最大の債権者である会員には一切の聴取および説明もなされませんでした。”何を企んでいるのか?”と会員が疑心暗鬼になるのも当然です」(業界関係者)

確かに同CCの場合、負債総額は約53億5,500万円だが、預託金債務以外の負債は、ほとんど存在していない。さらに、2014年3月期の決算では売上高4億300万円に対し営業利益はマイナス1,200万円と十分に改善の余地がある。普通に考えれば最大債権者である会員に何らかの相談をするのが当然だろう。

そんな状況のなかで、経営側の身勝手な経営破たん処理に怒り心頭の会員有志は、4月17日に早くも「スカイウェイCCの再建を考える会」を発足、株主会員制を視野に会社更生法を適用すべく準備に入る。

この動きに危機感を募らせたスカイウェイカントリーCCは40%強という極めて高い弁済率を提示、あわせて継続会員の年会費、プレフィーの現状維持、土日の優先プレー権を約束するなど好条件で懐柔にかかってきた。

しかし、「再建を考える会」は、アコーディア側からの通知には弁済率が明記されていないことなど、信ぴょう性は低いと判断、6月25日に会員主体の株主会員制への移行を前提とした会社更生法の適用を申請した。

会社更生法の適用が筋

申請代理人は会社更生法の第一人者の清水直弁護士。過去には紛糾に紛糾を重ねた浜野GCを株主会員制への移行に導いた辣腕だ。当然、スカイウェイCCも同様の株主会員制への移行を目指すことになる。

「民事再生案に反対し会員が申し立てる会社更生案に賛成する債権者は確実に過半数は超えています。今回のケースは浜野GCのときと違い、預託金債務のほかに債務はほとんどありませんから再建はスムーズに進むはずです。何よりも会社更生法は民事再生法よりも優先されますから、裁判所が会社更生法を支持することはほぼ間違いありません」(業界関係者)

今回の一件を見るにつけ鮮明になるのは、宿敵のPGMホールディングスが破たんゴルフ場のスポンサーに次々と選定されながら、債権者からほとんど反対が出ないのとは対照的ということだ。

アコーディアは、以前の成田ゴルフクラブの取得や太平洋ゴルフクラブの入札など、きな臭い動きをしてきた経緯もある。これら一連の不可解な行動を、ゴルファーは十分すぎるほど認識している。

アセットライトの実施後、存在感が日増しに薄くなっているアコーディアの久方ぶりの取得案件ではあったが、結果は惨敗となるだろう。一度失った信用は取り戻せないという典型でもある。

スカイウェイCC経営陣が一番の責任者だ

スカイウェイCCは都内からも近く、老舗の良いゴルフ場だ。僕も何度かプレーをしたことがあり、思い入れもある。今は無き大昭和製紙が造成したコースだ。生みの親の大昭和製紙は日本製紙に吸収されたが、スカイウェイCCも事実上の倒産状態。

確かに、アコーディアはゴルファーに評判が悪く、プレーヤーを向いて商売しているようには見えない。旧村上ファンド系のファンドが大株主として入り、現経営陣の経営手腕のなさが露呈した。しかし、アコーディアを責めるよりも、立地など好条件を生かせずに、経営状態を悪化させたスカイウェイCC経営陣が一番の責任者だ。民事再生法でそのまま経営陣に居残るなど僕なら恥ずかしくてできないけど。