写真/若原瑞昌

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独占インタビュー ライザップ瀬戸社長がすべてを語った! 健康コーポレーション 瀬戸健社長×尊徳編集長

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消費者団体から誇大広告の可能性を指摘され、週刊誌にネガティブ記事を取り上げられた「ライザップ」。急拡大した同社に問題はなかったのか。その後、沈黙を続けた瀬戸社長が尊徳編集長のオファーに応えた。今何を思い、未来に何を託すのか。現在の心境を語る、独占インタビュー。

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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健康コーポレーション株式会社 代表取締役社長

瀬戸 健 せと たけし

1978年5月1日生まれ。健康コーポレーション株式会社代表取締役社長。2003年、同社設立。”健康”をテーマにした商品を扱う通販会社として成長し、2006年上場。2010年、RIZAP株式会社を設立。積極的なM&Aを行い、多数のグループ会社を持つ。

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社会からの評価は絶対

尊徳 今回、週刊誌や消費者団体にいろんなことを言われてしまったよね。どう感じた?

瀬戸 週刊誌に記事が掲載されたときは、正直、悔しい気持ちになりました。自分たちは何の隠し事もなく一生懸命やっているのに、そんなふうに言われてしまうのだろうか……?と。

尊徳 どんなにまじめにやっている企業でも結局、第3者、つまり”社会”からどう見られるかがすべてだと思う。悪く見られたということは、反省すべき点があったんじゃないかな。

瀬戸 企業として100点満点ということは確かにありえません。ですから、いつも自分たちの足りていない部分は社内で話し合ってきました。事故の情報も社内では全員に開示し、すべてオープンにしています。ライザップ社の事故率は0.003%。もちろんこれを0%にする努力は絶対必要ですが、生身の人間に対して年間40万回以上のトレーニングを行っているなかで、事故をゼロにすることは正直難しい……という思いもあります。

尊徳 そうだね。大手企業で店舗数の多い飲食店なんかでも、異物混入とかやっぱり何かしらの問題は起きてしまう。でも、それが社会に出て批判されるかされないかは、普段からお客さんに接する従業員たちのホスピタリティの高さがかかわっているんだと思うけど。

瀬戸 事故が起こらないよう準備できていたのか、起きてしまった後の対処は適切だったのかなど、企業として恥じない対応策を立てて、実行できていたのかが重要だと思います。今回の報道を受けてわれわれができることは、お客様に「やってよかった」と言われるサービスを真摯に続けていくほかないと思っています。地道にやって、内側から証明していくという。

瀬戸健
今回の一件があの頃に起きていたら、きっと揺らいでいました(瀬戸)

イメージばかりが先行…急拡大の弊害

尊徳 僕もいろんな企業を見てきたけれど、急拡大すれば企業はシステマチックになりすぎてしまって、社長の信念を社員一人ひとりに浸透させるのが非常に難しくなる。そこのところはきちんとできていたの?

瀬戸 人数が増えるとどうしても、「言わなくてもわかるだろう」と思って話のプロセスを省いて、決定事項だけを伝える従業員も出てきてしまいます。毎日顔を突き合わせている夫婦でさえわからないことがたくさんあるのに、800人の社員全員に背景・目的・思いのすべてを伝えることは非常に難しい。だからこそ、私自身がもっと発信者としてしっかり伝え続けなくてはいけないと思っています。

尊徳 それは、社会に対しても同じだよね。反省があるとすれば、伝える術について。CMも含めてライザップのイメージばかりがどんどん先行してしまって、地道なところが追いついていなかった。「おごれる者は久しからず」ではないけれど、業績が伸びて目立っているからこそ、謙虚でいなくてはいけないし、伝える術も持っていないとダメ。それが今回見えた課題じゃないかな。

ライザップのCMが社会へ及ぼした影響

瀬戸 あのCMは一種の問題提起でもあります。面白いと思ってくれる人がいる一方、太っているから体重計に乗りたくない、CMも見たくないという人もいる。ライザップのサービスは今まで業界にはなかったものだから、当然反発もあります。けれど私たちの目指すところはお客様の要求に確実に応えること。これまでのパーソナルトレーニングは、1回限りのトレーニングで終わりでしたが、私たちが提供しているサービスは結果が出るまでお客様に寄り添うというものです。

尊徳 コンプレックスを商売にすると、気をつけなくてはいけないこともたくさんある。やせない人は、やせないことを人のせいにしてしまう傾向があるから、リスクを覚悟してやらないといけない。高尚なことをやっているという姿勢ではなく、お客さんに寄り添う気持ちでやらないとすぐに潰されてしまうよね。

瀬戸 今回のことで、社会からどう見られているのかという一つの反応が返ってきました。今後、社会とどう対話していくのをしっかり考えなくてはいけないと思います。

尊徳
目立っているからこそ謙虚でいなくてはいけない(尊徳)

10年を越えたら社会貢献を問われる

尊徳 今、社会とどうかかわっていくかが試されている時期だと思う。健康コーポレーションは12年目だよね。創業10年を越えて残る企業は6.3%程度しかないといわれるなか、存続しているということは意味がある。ただ、10年目までは一生懸命にやっていればいいけど、10年を越えたら社会にどう貢献できるかが問われるんだ。もし問題が起きても、一つずつ反省すべきところを潰していけば、企業として強靭な体質になっていける。

瀬戸 これまでも何度か危機を乗り越えてきました。通販会社を創業してすぐの頃、資本金が底をつき、まったく動けなくなったことがありました。そんななかで豆乳クッキーがヒットして3年連続通販業界1位を獲得。ところが数年後には、海外のエクササイズが登場して、業績が3分の1にまで落ち込みました。当時は理念も方向性も示せなくて、人も離れていくし、社員の笑顔も消えてしまった。リーダーとしての振る舞いができていませんでした。もし今回の一件があの頃に起きていたら、きっと揺らいでいました。今、ライザップのサービスは絶対に良いもので世の中に必要とされるという信念、理念があるからこそ、受け止められていると思います。

尊徳 理念はすごく大切。「ここへ向かっていく」という軸をぶらさないことが必要なんだよね。これは企業としても、経営者としても重要なことで、軸がなければ弱くなっていく。社会は勝手に評価を下してくるから、経営者が内側に対して堂々と発信していけばいい。それで世間に選ばれなかったら自分が間違っていたと思うしかない。

指摘を糧に企業として強くなれ

尊徳 消費者団体に指摘されて、「30日間全額返金保証」の制度を変更したけど、影響は?

瀬戸 経営を悪化させるような損失は出ていません。結果に満足できなかったお客様に対応できなくなるため、返金サービスをやめるという選択肢はありませんでした。だから承認制度なしでも返金できるようにしたんです。お客様の都合で来られなくなった場合も、結局は動機づけをトレーナーができなかったということ。忙しくても来てもらえるような、そういう覚悟でお客様に満足いただけるサービスを提供するほうが弊社にとっても良い、と社員に話しました。

尊徳 今回のことがなかったら、そこまでの覚悟を持つことはできなかったんじゃないかな。企業としての覚悟が伝わるし、イメージ的には絶対プラスになった。長い目で見たらより企業として強くなっていくためのステップアップになるはず。これからは、どういう方向性で頑張っていくの?

瀬戸 生きるために必要な衣食住が満たされた今の世の中では、”自己実現の欲求”を満たすサービスが求められています。ライザップがまさにそう。日本では年齢が上がるごとに幸福感が下がるといわれていますが、私たちは一度しかない人生を、自信を持って笑顔で生きていけるようになるサービスを提供していきたいのです。人生って本当に面白いなと思います。これからも、お客様の要求に応えていけるサービスを提供する企業であり続けたいと思っています。