“橋下引退”で揺れ動く政界~船頭失った維新はどこへ 安保法案はどうなる~

2015.7.10

政治

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橋下徹大阪市長の引退宣言が、中央政界に波紋を広げている。カリスマを失った維新の党の内部では路線対立が激化し、安保法案の審議への協力を引き出したい自民党と、”一強多弱”の打破に向けて維新の党を取り込みたい民主党との間で揺れている。船頭を失った維新の党はどこへ向かうのか。安保法案はどうなるのだろうか。

「政治家は僕の人生から終了」

橋下氏が”政治生命”をかけて臨んだ大阪都構想住民投票。賛成派の橋下氏や大阪維新の会、反対派の自民党や共産党の論戦は熱を帯び、大阪の街を二分する熾烈な選挙戦が繰り広げられた。地盤沈下が指摘されて久しい大阪に、日本中の視線が注がれた。

開票結果は賛成が69万票で、反対は70万票。1万票差、得票率にしてわずか0.8ポイントという僅差で、都構想は否決された。

開票結果を受けて記者会見に臨んだ橋下氏は、吹っ切れたような表情で「市長の任期まではやるが、それ以降は政治家はやらない」と表明。12月の任期満了をもって政界引退する考えを示した。

橋下氏といえば、最初の大阪府知事選で「2万%ない」といいながら出馬した経緯がある。政界では引退の本気度を疑う声もあるが「政治家は僕の人生から終了です」と語った表情に政治への未練は感じられなかった。国政への転身を求める声もあるが、実現する可能性は低いとみられる。

維新の党巡り与野党が綱引き

橋下氏の引退で注目されるのが、江田憲司代表も辞任し、”二枚看板”を失った維新の党の行方だ。維新の党の所属議員は衆院40人、参院11人で、自民党、民主党に次ぐ第3勢力。安全保障法案の審議で苦戦する与党、なかなか存在感を示せない野党、どちらにとっても魅力的な存在である。

安倍首相は集団的自衛権の行使容認を含む安保法制の今国会中の成立に意欲を示しているが、世論の反応はいまひとつ。各報道機関の世論調査では今国会中の成立に”反対”とする声が、”賛成”を大きく上回っている。

野党の反対を押し切って今国会中の採決に踏み切れば、世論の大きな反発を招き、政権基盤が揺るぎかねない。そこで維新と修正合意するか、もしくは採決に応じてもらうことで、国会運営における”強引なイメージ”を薄めたいというのが政府・与党の本音である。

一方、野党第一党である民主党は維新の党と幹事長会談を開き、国会での”共闘”を求めている。安保法案の審議で歩調を合わせ、与党を揺さぶろうという作戦だ。

しかし、肝心の維新の党は一枚岩ではない。橋下氏や大阪系議員は修正協議に前向きな姿勢を示すが、江田氏の後任に就いた民主党出身の松野頼久代表は否定的な考えを表明。”与党路線”か”野党路線”か、党内は真っ二つに割れている。

そもそも維新の党は民主党出身の松野氏、みんなの党から結いの党を経て合流した江田氏、自民党の地方議員だった大阪系議員らが集まった寄り合い所帯。橋下、江田両氏に比べて押しの弱い松野新代表では党内をまとめきれず、「このままでは分裂する」という声もある。

2016年の参院選をにらむ

与野党ともに視線の先にあるのは2016年・夏の参院選だ。安倍首相の悲願である憲法改正の実現には衆参ともに3分の2議席が必要。参院選で与党が大きく議席を積み増すと同時に、改憲派である維新の党との協力関係も構築しておかなければならない。

一方の民主党にとっては、参院選を党勢回復のきっかけにしたいという思いがある。安保法案を廃案に追い込み、さらに参院選で勝利して政権交代への足掛かりを作る――。それには船頭を失い、漂流する維新の党を飲み込むのが近道だというわけだ。

政府・与党は安保法案の成立に向け、通常国会の会期を9月27日まで95日間延長した。戦後70年という節目の年である2015年、永田町では例年になく暑い夏となりそうだ。

野合の野党じゃ政治が活性化するのはしばらく無理

安保法制は国民の支持を受けたとは言い難い。安倍政権の支持率が下降気味のときに、報道機関圧力発言など、身内からも足を引っ張る問題が与党に起きている。それにもかかわらず、野党の支持はまったく上がらない。

民主党は相変わらず旧態依然の執行部で国民からそっぽを向かれているし、橋下氏のいなくなる維新の党が一つにまとまって期待されるとは思えない。こんな敵失のときにまとまって与党に対峙できないとは……。こんな野合の野党じゃ日本の政治が活性化するのはしばらく無理だな。情けない。