安全保障関連法案が衆議院を通過し、参議院に審議がまわったところで出てきた「60日ルール」。どこか姑息さを感じる仕組みだが、今の国会は制度上の問題はないのだろうか。自民党の公募時以来、一院制を考えていた平議員が「日本の二院制」を言いたい放題!
日本の国会の制度である二院制を解説
日本の国会は憲法上、衆議院と参議院の二院制(両院制)になっています。皆さんはどういう仕組みで法案が決まっていくか知っているでしょうか?
ある法案ができて、衆議院で可決されたとします。次は参議院にまわって審議され、可決されれば法律が成立。でも、「参議院は否決だ」となったときに、2つの院の意思が違うという状況になります。このままでは法律は成立しません。
参議院で否決された法案はもう一度衆議院に戻ってきます。1回目は過半数で可決ですが、2回目はハードルが上がって【3分の2】の賛成が必要。それで可決されれば法律が成立します。
結果的に参議院より衆議院が優越している仕組みになっています。なぜかというと、参議院は6年に1度の選挙で半分ずつ変わり、ある程度安定性はある一方、衆議院は何かあれば解散をして、国民に真意を問うということをするので、より色濃く国民の意思が反映されるからです。
今、集団的自衛権の一部行使を含む安全保障関連法案が衆議院で可決され、参議院に審議がまわっています。自公与党は合わせて過半数を超えているので、何もなければ法案は通ります。でもマスコミはなぜか2回目の衆議院の審議のことを気にしている。私は参議院で可決されて法律は成立すると考えていますが、採決できない可能性を指摘しているのでしょう。
採決しないのは責任放棄ではないか、そんな参議院ならいらないのではないかという意見も出てきかねません。自らの院の存在価値を否定するようなことをやるとは思えませんが、万が一60日たっても議決されなかった場合、法案は否決されたとみなされて衆議院に戻ってきます。これが「60日ルール」。今回の安保関連法案に関して適用される日付は2015年9月14日です。
二院制には制度的欠陥がある
与党として衆・参両議院で過半数の議席を持っていて、かつ衆議院で3分の2の議席を持っていれば、法案が通る仕組みはわかりますよね。ところが、与党が衆議院で3分の2以上の議席を持っておらず、両議院で多数を占める政治的勢力が違う場合があります。いわゆる”ねじれ国会”という状態で、こうなると法案がなかなか通りません(予算は「30日ルール」で自然成立)。
ただ、衆議院が賛成して参議院が反対したときは、両院協議会が開かれます。そこで議論し、結論が得られれば解決しますが、そのような事態のときは毎回物別れして終了します。これは制度的欠陥だと思います。
一院制の意義
私は国会議員になって10年になるのですが、自民党の公募に応募したのが政界に入るきっかけでした。そのときに、国会は450議席の一院制にすべきという内容の小論文を出しました。この案は憲法改正が前提ですが、ちょっと説明すると、小選挙区は勝ち負けのみの300小選挙区、比例復活なし。比例のところは全国比例にして150。ここは参議院的な属性を持った国民の代表を選ぶ。そうすると450人の一院制になります。衆議院的な要素と参議院的な要素を入れて、それぞれの議席数が4割減って、ねじれも発生せず、4年間安定的に政権運営ができ、なおかつ政権交代も可能で良いアイデアだと思いました。
私は国会議員になる前から憲法改正論者です。憲法第96条は憲法の改正について書かれていますが、そもそも改正することの手続き上のハードルが極めて高い。東京青年会議所時代から、まず”改正条項を緩和する憲法改正”をしましょうということを言っていましたし、それが一番現実的だと思いました。
今からまったく新しい憲法にしますっていうのはやっぱり難しくて、一つひとつ取り組んでいくしかないだろうなと。そういう意味では、一院制というのも国民的な憲法改正議論をする最初の一歩としてはいいのではないかと思います。
そもそも憲法には指一本触れさせないという方々もいます。ほぼ理屈じゃないようなイメージを受けます。憲法に改正条項が定められている以上、当然に改正自体が憲法の精神に反するものではありません。われわれは丁寧に説明し続けていくしかないです。そもそも自民党という政党は自主憲法を作るためにできた政党なので。
アメリカの政治学者のジェラルド・カーティス氏も言っているように、説得する政治が欠けているように思います。政治家が説得する。国民が判断する。この循環が大切。説得する前に世論におうかがいを立てて、反対が半分を超えているからやめましょうっていうのであれば、政治家もいらないし、間接民主主義の意味もないと思います。説得する政治はすごく大事。だからやり続けます。