自民党総裁選に無投票で再選した安倍晋三首相は、「アベノミクスは第2ステージに移る」と経済最優先の政権運営を進める考えを表明、2020年に向けた経済成長の推進力となる新たな「3本の矢」を発表した。
新たな矢の1本目は「希望を生み出す強い経済」。安倍首相は「デフレ脱却は目の前」と語った上で、2014年度に490兆円だった名目GDPを600兆円に増やすことを目標として掲げた。目標達成のために、女性や高齢者、障がい者らの雇用拡大や地方創生を本格化し「生産性革命を大胆に進める」との考えを示した。
2本目は「夢を紡ぐ子育て支援」、3本目は「安心につながる社会保障」。子育て支援では現在、約1.4の出生率を1.8まで回復させるため、不妊治療や結婚の支援、幼児教育の無償化に取り組む姿勢を示し、社会保障では介護を理由に退職する「介護離職」をゼロにしたいとの目標を宣言。また、老人ホームの入所待機者を減らすために介護施設の整備や人材の育成を進めるほか、働く意欲のある高齢者への就業機会も増やしたい考えを見せた。
首相はこれらを2020年に向けた「日本1億総活躍プラン」としてまとめ、50年後も人口1億人を維持したい考え。一方で財源の捻出先やGDPの目標を達成させるための具体策を明かしていないため、懐疑心も膨らむ。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
少子化対策や社会保障政策は待ったなしの政策。何をいまさら、という感じがする。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という今までのアベノミクスがなくなったわけではなく、それを継続しつつ今回の3本の矢をプラスしたということだね。
首相が施政方針であまり具体的な方策を言わなくてもいいけど、これは公約だから実行できなければ当然、選挙で厳しい結果にされるべき。
それに具体的な策は順次出てこなければいけないよね。”これ”という特効薬はないわけだから、いつも方針を示して実行に向けての議論をさせていかないことには掛け声だけになってしまう。国民はこのことをちゃんと覚えておいて、2016年夏の参議院選挙までになにかしら具体的に進んでなければ、国民は鉄槌を下すべきだと思うよ。
そうでなければ、国民が”なめられてる”ということだから。
(佐藤尊徳)
[参考:「出生率1.8へ子育て支援 介護離職ゼロ目指す」(日経新聞朝刊1面 2015年9月25日)]