2016年政界大予測―衆参ダブル選で与党「3連勝」、負けた野党は再編へ

2016.1.12

政治

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2016年は3年に1度の参院選の年だ。高支持率の続く安倍政権は参院選の勝利に向け万全の態勢を整えつつあるが、対する野党の動きは鈍い。安倍晋三首相は「衆参ダブル選挙」に打って出るのか。野党の対抗策は。2016年の日本政界をズバリ予測する。

すべては参院選勝利のために

「安定した政治を前に進めるため、参議院において自公で過半数を確保したい」
通常国会が召集された1月4日、安倍晋三首相は自信のみなぎる表情でこう訴えた。

例年ならほとんどの議員が地元のあいさつ回りに奔走し、永田町には眠たい顔の秘書や記者しかいない時期。だが、2016年は参院選の準備を優先するため、あえて史上最も早い1月4日に通常国会を召集した。

高い支持率を維持する安倍政権が参院選を強く意識するのは、第1次政権時のトラウマがあるから。第1次安倍政権では、閣内で政治資金スキャンダルや失言が相次ぎ、さらに”消えた年金問題”が浮上。政権発足から1年もたたない2007年7月の参院選で惨敗を喫し、国会の”ねじれ”を生んだ。

いったんは退陣を拒否し、内閣改造を強行したものの、首相の求心力は急速に低下。持病の悪化も重なり、9月12日に退陣を表明した。

当時とは打って変わって高い支持率を維持し、連戦連勝を重ねる首相だが、参院選で足元をすくわれれば長期政権のビジョンは崩れる。連立を組む公明党案を丸吞みして軽減税率の導入を決めたのも、年明け早々に通常国会を召集したのも、すべては参院選での勝利を確実にするためである。

動きの鈍い野党

与党が参院選に向けて着々と準備を進める一方、野党の動きは鈍い。勝敗の行方を決める32の「1人区」(当選者が1人の選挙区)のうち、最大野党の民主党が2015年末時点で公認候補を発表したのはわずか9区。党勢が回復せず、候補者が集まらないため、擁立は遅々として進んでいない。

党内の保守系議員からは公然と「解党して別の党名で出直すべきだ」という声が出ているが、岡田克也代表率いる現在の執行部は否定的。維新の党が求める”解党して新党結成する”案も拒否し、当面は国会での統一会派の結成にとどめることとした。

維新の党が解党にこだわるのは、法律の規定で現在の民主党には合流できない議員がいるためだが、数で勝る民主党に妥協する必要性は乏しい。このままいけば夏の参院選前後に、維新を吸収合併する可能性が高い。

岡田代表は再編よりも、共産党を含めた野党の”緩やかな連携”や市民団体との共闘を重視している。同氏は学生団体「SEALDs(シールズ)」などが設立した「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)と連携する考えを表明。さっそく熊本県選挙区で市民団体系候補を”野党統一候補”とし、維新や共産、社民各党とともに推薦すると決めた。

民主系候補がいる選挙区でもあえて民主の看板を外し、共産党など、ほかの野党に候補を取り下げてもらった上で野党統一候補とする方向。このままいけば多くの選挙区で候補の一本化は成立するだろうが、有権者の受け皿になりうるかどうかは不透明。大阪ダブル選挙における自民、共産の共闘のように、かえって有権者の離反を招く可能性もある。

民主党内の保守系議員には共産党や市民団体との連携に反発し、松本剛明元外相のように離党を検討している議員もいるほど。いずれにしても参院選までに野党が急激に支持を伸ばすことは考えにくい。

野党再編の最後のチャンス

参院選までに野党が存在感を示すことができなければ、首相が「衆参ダブル選」に打って出る可能性は高い。現状の支持率水準なら”3連続圧勝”が視野に入るからだ。

首相の自民党総裁としての任期は2018年9月まで。2016年夏に「衆参ダブル選」を決行すれば衆院議員の任期は2020年の夏まで、次の参院選は2019年の夏となり、残りの任期の間は国政選挙を一度も行わなくてもいいこととなる。第1次安倍内閣のように、選挙でつまずく可能性はなくなるのだ。

仮に与党の3連勝を許せば、”負け慣れた”民主党もさすがに動揺するだろう。リベラル色の強い現執行部は退陣を余儀なくされ、保守系議員を中心に”解党的出直し”や”本格的な再編”を求める声が大きくなる。少なくとも今の路線のままでは「いつまでたっても勝てない」と悟るだろう。

そのときこそ、野党再編の最後のチャンス。2016年は野党にとって大きな転換点になりそうだ。

大義のない選挙が実現しそう

 

大義名分のない「衆参ダブル選挙」だが、対する野党がどうしようもない。マニフェストを守らずに選挙で大コケした”嘘つき民主党”は、古い面々が執行部に居座り、統制が回復しないどころか低落気味。維新は一人看板の橋下氏と袂を分かってしまえば、ただの烏合の衆だ。

公明党の案を丸のみした軽減税率導入など、与党はやりたい放題だが、野党がここまで酷くては「衆参ダブル選挙」もあながち絵空事ではない。安倍首相の悲願であり、自民党結党の党是である自主憲法の制定には、参議院が3分の2を占めなければならない。それには3年に1度の参議院議員選挙で勝ち続けなければならないが、民意は移ろいやすくそうそう簡単ではない。

しかし「衆参ダブル選挙」なら、勢いに乗じて参議院も大勝する可能が高い。「衆参ダブル選挙」は公明党が嫌がる(力が分散してしまうため)が、軽減税率導入で恩を売っておいたのでやりやすい。ということで、大義のない選挙が実現して与党が大勝するようだと、本当に野党がだらしなさ過ぎた、ということになるだろう。