瓦解の道に一直線か 民主と維新の合流構想

2016.3.10

政治

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民主党と維新の党が2016年3月中に合流することで合意した。維新の党を解党し、民主党が”吸収合併”。党名を変更し、”新党”とアピールする。社民党や無所属議員らにも新党への参加を呼びかけ、夏の参院選に向けて巨大与党への対抗を目指す。

実質的には民主党による維新の党の吸収合併

民主党の岡田克也代表と維新の党の松野頼久代表が2016年2月末に会談し、合流について正式に合意した。新党協議会を設立し、党名や綱領、ロゴマークなどの変更について検討。民主党を存続政党として維新の党を吸収し、3月27日に結党大会を開く。

みんなの党出身で、法律上新党に参加できない参院議員5人についてはいったん無所属として統一会派を組んだうえで、夏の参院選で新党から公認を出す方向。岡田代表以外の民主党国会議員も一時的に離党し、解党した維新の党の議員とともに新党に入党する。

わざわざ面倒な手続きを踏むのは、地方議員や党の資金を維持しつつ”解党的出直し”をアピールしたいから。両党とも解党して新党設立を求めてきた維新の党への配慮もあるが、実質的には民主による維新の吸収合併で、維新側には不満も残る。

新党の名前についても民主と維新で隔たりがある。民主内では立憲民主党や民主進歩党など民主を残すべきだという意見が強いが、維新側はまったく新しい党名を求めている。世論調査の結果を見て判断する方向だが、結果次第ではしこりを残す可能性がある。

2015年からズルズルと先延ばしになっていた合流協議が急転直下で決着したのは、巨大与党に隙が見え始めたからだ。安倍内閣の重要閣僚だった甘利明経済財政担当相が資金スキャンダルで辞任。育休の取得を宣言して話題となっていた自民党の宮崎謙介衆院議員は不倫問題で辞職に追い込まれた。閣僚や自民党議員の失言も相次ぎ、与党の緩みを指摘する声が高まっている。

野党結集で与党候補に対抗できるかどうかがカギ

宮崎氏の辞職に伴う衆院京都3区の補欠選挙が衆院北海道5区とともに4月24日に行われるのに加え、夏には参院選がある。さらには衆院の年内解散を予測する声も根強い。岡田氏ら民主党幹部の脳裏には今が攻めどきという思いと、今やらなければ間に合わないという思いが沸き上がったのだろう。

現在、民主の衆院議員は72人、参院議員は59人(いずれも副議長を含む)。維新の衆院議員は21人、参院議員は5人。両党が合流すれば衆院93人、参院64人の野党が誕生する。

新党ではさらに維新の党から分裂した改革結集の会や、政党要件を失った日本を元気にする会、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちなど”共産党以外の議員”にも合流を呼びかける方針。今後、さらに参加人数が膨らむ可能性がある。

新党の当面の目標は4月の衆院補選と夏の参院選だ。京都3区補選では2012年、2014年と宮崎氏に惜敗し、比例復活した民主党の泉健太衆院議員を擁立。北海道5区では民主党出身の池田真紀氏を無所属の野党統一候補として立候補させる。

京都3区は自民党が擁立を見送るため、安倍政権に近いおおさか維新の会候補と一騎打ち。北海道5区では自民党が擁立する故町村信孝元官房長官の娘婿、和田義明氏との与野党対決となる。この選挙でできれば2勝、少なくとも京都3区を死守しなければ新党の勢いが削がれかねない。

夏の参院選は当選枠が1人の”1人区が勝敗を左右する”ため、野党結集で与党候補に対抗できるかどうかが鍵となる。

新党の代表に就く岡田氏のかじ取りに注目

産経新聞とFNNが2月に行った世論調査によると、民主と維新の合流構想について63%が「期待しない」と回答。「期待する」は半数程度の33%にとどまった。夏の参院選比例代表の投票先についても与党が合計46%だったのに対し、野党5党は合計26%。民主、維新の幹部が思うように新党への期待が広がっていないのが現状だ。

支持が伸び悩む最大の理由は新党の結束への不安。そもそも民主党は政権担当時に”バラバラの寄せ集め集団”であることが露呈し、国民の支持を失った。そこに消費増税に反発して党を飛び出した維新の元民主議員や左寄りの社民党、政界の壊し屋として知られる小沢一郎氏らが加わったらどうなるか。多くの国民は新党が再び瓦解への道を歩むことを予見している。

民主、維新は政策面でも隔たりがある。安倍政権の安保政策への批判では一致するが、憲法改正については維新議員の大半が改憲を主張するのに対し、民主党内には社会党出身の護憲派も多い。与党が参院選で憲法改正を打ち出した時に、新党が一致して対応できるかはかなり怪しい。

経済政策でもTPPや消費税増税、規制改革などについてどんな方針をまとめるのか。国民の関心が高い経済政策について独自の方向性を打ち出せなければ、国民の支持の受け皿にはなりえない。新党が乗り越えなければならない壁は高く、そして多い。

新党への期待が膨らまなければ夏の参院選で与党が圧勝し、衆院選でも3連勝が現実味を帯びる。新党の代表に就く岡田氏が、どのようにかじ取りするのか。その手腕に注目だ。

またですか? 他に人材はいないのですか?

 

何度も書いていることだが、国民の期待感を見事に打ち砕いてくれた民主党は本当に解党的出直しをしないと有権者の支持は戻らない。なのに、昔の名前で出ています状態の岡田氏が再び党首になり、幹事長が枝野氏だ。お二人とも人は悪くないと思うが、国民からすれば「またですか?他に人材はいないのですか?」ということになる。それを感じていないのであれば救いようがないセンスだ。

イギリスの政党は、負けた時にはその原因を突き詰め、まったく違ったカラーの人間を党首にして、次の選挙に備える。ブレア氏も、キャメロン氏も30代後半で野党の党首になり、次の総選挙で勝利して首相になっている。若ければいいとは思わないが、国民の期待感がなければ支持は広がらない。そういう意味では、今回の民維合併は、単なる数合わせにしかならない。力を結集できるので、やらないよりはまし、という程度だろう。大きな変革を期待させるような人事をしなければ、巨大与党には勝てないと思う。