投資リスクの中身を把握しよう~投資リスクを減らす知恵

2016.3.10

経済

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投資に付いて回る「リスク」は、やるからには絶対に知らなければならないことだ。知らないことこそ最大のリスク。それを無視して投資することは、お金を捨てている行為にも等しい。ここでしっかり学び、自分の選ぶ投資方法に伴うリスクに対処しよう。

リスクとは”不確実性”ととらえよ

これまで幾度となく登場した「リスク」という言葉。これを”危険”と訳す人は多いが、資産運用の世界におけるリスクとは”不確実性”の意味を持つ。つまり「どうなるかわからないよ」ということだ。

具体的には大きく3つある。「価格変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」がそれだ。特に長期投資をする際には、価格変動リスクと信用リスクをきっちりコントロールする必要がある。

まずは、それぞれの意味を簡単に説明しておこう。

個人投資家が知るべき3つの投資リスク
儲かるか、損するか<価格変動リスク>

投資のリスクというと、まずこれをイメージする人が多い。大きく儲かるかもしれないが、大きく損する恐れもある、ということだ。株式、REIT、コモディティ、債券など、投資する対象は多種多様にあるが、いずれも価格が動く。そして、価格が将来、どう動くのかは、誰にもわからない。ただ、資産によって値動きには大小がある。債券は最も値動きが小さく、株式はそれよりも値動きの幅が大きい。つまり価格変動リスクが高いということ。

不安が多いと利回り↑<信用リスク>

クレジットリスクとも言う。特に債券は、信用リスクの高低によって利回りが大きく変わる。債券の場合、たとえば10年、15年というように、償還(払い戻し)までの期間が決められている。信用リスクは、債券が償還を迎えるまでの間、利息や元本の払い戻しに支障を来さないかどうかを見るためのものだ。

総じて、信用リスクの高い債券(不安要素が多い)は、利回りも高くなる傾向が見られる。そして、信用リスクの有無については、日本のR&IやアメリカのS&P、ならびにムーディーズが日々、リサーチを繰り返し、信用リスクの高低を「債券格付け」で公表している。

株価の値動きを荒くする<流動性リスク>

年金基金などプロの運用者が最も恐れているリスクが、流動性リスクだ。これは、「売りたいときに売れない」、「買いたいときに買えない」という状況に陥るリスクを指している。

たとえば株式など、買い注文を出したときに買えるのはなぜかというと、一方に売り注文があるからだ。もし、この株式を売りたいという投資家が一人もいなくなった状態で、その株式を買いたいという投資家が殺到したら、株価は大きく跳ね上がる。逆に買い手がまったくいない状態で売り注文が殺到すれば、株価は大暴落だ。

新興企業の株式、あるいは新興国の株式市場などは、一般的に流動性リスクが高い。流動性リスクが高いと、株価の値動きが非常に荒くなり、価格変動リスクの増大にもつながってくる。

注意すべきは「価格変動リスク」と「信用リスク」

これらのリスクのうち、前述したように長期投資で最も注意しなければならないのは、価格変動リスクと信用リスクだ。また、短期投資をする場合は、とにかく市場でいつでも売り買いができなければ話にならないので、流動性リスクが常に重視される。しかも、1回ごとに売買する金額が大きくなるほど流動性リスクが高まるので、取引量の大きなもので売買する必要がある。

重視するリスクの内容が異なれば、必然的にリスクヘッジの方法も変わってくる。だからこそ、投資を始める際には、短期投資か長期投資かをしっかり決めておくのが肝心なのだ。

具体的に投資のリスクを減らすためには、どのような方法があるのかを考えてみよう。

分散投資で損失を最小限に抑える<資産クラス分散>

たくさんの卵を一つのカゴに入れて落とすと、全部の卵が割れる危険があるが、複数のカゴに分けて入れておけば、そのうち一つの籠が落ちたとしても、ほかの卵は割れずに済む。これが分散投資の基本的な考え方だ。

値動きの方向が異なる複数資産に分けて投資すると、たとえば日本株が暴落しても、ほかの資産が値下がりしなかったり、あるいは値上がりしたりすれば、日本株の暴落で被る損失を最小限に抑えられる。

過去の値動きから見ると、国内債券は日本株をはじめ、先進国株式、新興国株式、海外REIT、コモディティなど、ほとんどの資産クラスに対して異なる値動きをするので、これらの資産に投資する際は、国内債券を組み合わせることで、価格変動リスクをある程度、軽減できる。

毎月コツコツ、”積立”の恩恵<時間分散>

時間分散とは、タイミングを分けて投資をすることで、要は「積立投資」を意味している。もし積立投資をするなら、毎月一定金額で購入する定額積立が有効。というのも、価格が安いときの購入口数はより多く、価格が高いときの購入口数はより少なくなるため、長期で見ると、安い価格で購入した口数が多くなり、全体を通じて購入価格を安くできる。

また、株式などは常に値動きしているため、どこが本当の安値かを判断するのが難しい。そこで投資タイミングをずらせば、結果的に安いところでも買えるので、平均的に購入価格を下げられる。特に相場の下落局面では、継続的に購入口数が増えていくため、価格が底を打ち、上昇に転じたとき、それまでの損失を回復しやすくなる。

手数料=リターン減<低コスト>

コストが高いと、その分だけ収益力が低下してしまう。たとえば投資信託の場合、ファンドを保有している間も「信託報酬」というコストが日割りでファンドの資産から差し引かれていく。仮に、信託報酬の料率が年2%だとしたら、それは年間リターンのうち2%が失われているのと同じことになる。したがって、コストは安いに越したことはない。

大きな税金のコストを削る<非課税制度の利用>

税金もある意味、コストのひとつと考えられる。しかも株式の売却益などに掛かる税率は20%だから、かなりの負担だ。最近はNISAのような非課税制度があり、利用金額に限度はあるものの、その範囲内で投資した分に発生した収益は非課税扱いになる。株式や株式投資信託などのリスク資産(高利回りの投資)で運用するならば、まずはNISA口座を用いた投資を優先するべきだろう。

また、60歳までひたすら積み立てるつもりなら、確定拠出年金(DC)の活用がオススメ。ただしDCは、おそらく2017年には誰もが利用できるように制度改正が行われるが、現状では専業主婦、公務員は利用できない。とはいえ、非課税面の優遇が大きいので、リスク資産で運用する部分については、これら非課税制度を活用できる口座での運用をメインにするのが、合理的な判断だ。

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これらの方法を活用してリスク軽減を図るとともに、長期的に投資し続けることも重要だ。単年のリターンがマイナスになったとしても、10年、20年と継続するうちにはプラスの年も出てくるため、平均するとプラスのリターンを維持できる確率が高まる。10年、20年という長期間、複数の資産クラスに分散して、毎月一定額を積立投資するのが、長期投資のリスク軽減にはちょうどいい。