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意外と知らない紫外線と日焼け止めの正しい知識

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日焼けは、太陽の陽射しが強い夏にするものと思っていないだろうか。実際に日焼けを引き起こすのは、太陽光に含まれる”紫外線”で、これは一年中、天気を問わず地表に降り注いでいる。油断していると”うっかり日焼け”をしてしまったり、肌にダメージが蓄積して”肌老化”を早めてしまったりするかも!

いつの間にか日焼けするのはなぜ?

見えないからこそ注意が必要【紫外線の種類】

太陽光は、可視光線(目に見える光線)のほかに「赤外線」と「紫外線」があり、【赤外線→可視光線→紫外線】の順で波長が短くなる。そして紫外線は、さらに細かく「UVA」「UVB」「UVC」に分けられ、【UVA→UVB→UVC】の順で波長が短くなる。さらに、波長が短いほどエネルギーが強く、波長が長いほど肌の奥まで届く性質を持っている。

日焼けは紫外線を浴びることで起こるが、波長の短いUVCは”地球の日焼け止め”ともいえるオゾン層がカットしてくれるため、地表に届くことはない。地表に届く紫外線はUVBとUVAで、約9割はUVAである。

エネルギーの強いUVBを浴びすぎると皮膚がんになる恐れもあり、目にも悪影響があるといわれている。オーストラリアのような日差しが強いところでは、白人が紫外線に弱いとされているのも手伝い、日本よりも皮膚がんの患者数が10倍も多い。そのため彼らは、子どものころから日焼け止めを使う習慣が啓発され、外に出るときはサングラスを使うことも多い。

日差しがなくても降り注ぐ【紫外線の量】

紫外線は一年を通じて降り注ぎ、やはり日差しが強い夏は紫外線の量も多い。ただ、UVAはUVBに比べ季節による変化が少なく、冬でも夏の半分ぐらいはあるので、注意が必要。

一日の中では、UVB、UVAともに正午前後がもっとも強い。UVAは時間による量の変化が少なく、朝から増え始めたUVAは午後の遅い時間になっても減らない。

また、曇りの日は晴天の6割程度、雨の日でも3割程度の紫外線が降り注ぐ。さらに、波長の長いUVAは窓ガラスも貫通するため、室内や車内にいても紫外線の影響を受ける。

浴びすぎると健康に害をもたらす紫外線を防ぐにはどうすればいいのだろうか。帽子や長袖、サングラスで紫外線を物理的に遮蔽する手もあるが、紫外線は壁や地面で跳ね返るため、それだけで防ぎきることは不可能。特に水面や雪面の反射率は場合によっては100%に近くなる。

肌にダメージを与える紫外線【光老化】

顔や手足に比べ、腹や背中といった服で隠れている部分は、年齢を重ねてもシミやシワが少ないといわれている。それは紫外線の影響を受けにくいから。紫外線による肌の老化は「光老化」といわれ、UVBは表皮に炎症を起こし、皮膚の乾燥やシワ、シミの原因になる。UVAは表皮のさらに奥の真皮と呼ばれるところまで届き、肌の弾力を作っている繊維層に対して、シワやタルミの原因となるダメージを与える。

メイクをしている女性に比べて、すっぴんの男性は紫外線に対してほぼ無防備の状態。外回りの多い仕事や、野外での作業をする際には、特に注意する必要がある。

日焼け止めの効果を示す「PA」と「SPF」

日焼け止めの商品パッケージには「PA」と「SPF」という2つの基準が記載されている。「PA」はUVAによる日焼けを防ぐ効果をレベルで示したもの。「PA+」「PA++」といったふうに、プラスの数が増えるほど日焼けを防ぐ効果が高い。

「SPF」はUVBによる日焼けを防ぐ効果を示した数値。「SPF20」「SPF50+」といった具合に表記され、「SPF20」の場合、規定の量を塗れば、日焼け止めを塗らないときよりも日焼けする時間を20倍長くできる、という意味がある。

つまり、約20分でUVBによる日焼けを起こすとされている日本人場合、約400分(約6時間半)効果が持続する。UVBによる日焼けは、表皮までしか届かないが、エネルギーが強いので赤く炎症する「サンバーン」を引き起こす。

研究者を直撃!日焼け止め「アネッサ」(資生堂)の新技術・アクアブースターは何がすごいのか

2016年、日焼け止めの常識を変える技術がリリース

化粧品メーカー各社が技術を競い合う日焼け止め市場。その中で、15年連続で売上シェアナンバーワン(SRI/2000年11月~2015年10月)を獲得しているのが、資生堂の「アネッサ」だ。

資生堂が初めての日焼け止め「ウビオリン」を発売したのは1923年、紫外線の悪影響がまだ一般に知られていなかった時代のことだ。それから今日に至るまで、同社では研究を繰り返し、さまざまな技術を開発・導入。1992年の「アネッサ」発売以降は、ユーザーのニーズに応える技術に注力していく。

例えば、「日焼け止めを塗ると白く浮いてしまう」という声に対し、酸化亜鉛を花びら状に加工することで透明性を高める技術を開発。さらに、「なかなか落ちない」との声には、高いSPFを持ちながらも専用クレンジングがなくても落とせる日焼け止めを開発した。

2012年には、同じ紫外線防御成分の量で、より高い紫外線防御力を持たせることに成功。防御剤の量を減らすことが可能となり、塗った後の心地良さが大幅に改善された。そのほかにも、光を浴びることで日焼け止めが劣化してしまうのを防ぐ「光スタミナ技術」も導入された。

そして2016年、資生堂は革新的な技術を開発する。それが、リニューアルした「アネッサ」に搭載された「アクアブースター技術」だ。

アネッサ資生堂「アネッサ パーフェクトUV アクアブースター」SPF50+・PA++++ 日やけ止め用乳液/スプレー/美容液

ヘアスタイリング剤の技術を応用

従来、日焼け止めは、汗をかいたり水に入ったりするシーンが苦手とされてきた。流れ落ちてしまうためだ。しかし、アクアブースター技術は汗や水に含まれるミネラルと結合することによって、日焼け止めの塗布膜を均一化。落ちるどころか、より強固になって紫外線を防いでくれるのだ。耐水性を上げるだけでなく、紫外線防御効果もアップ。実験では、防御効果が120%まで高まることが確かめられている。

アクアブースター技術を開発した、化粧品開発センターの八巻悟史氏によると、新技術の開発をスタートしたのは、海外で参加したあるプロジェクトがきっかけだという。

「社内のプロジェクトで、バングラデシュの農村に住む女性の肌調査に携わったのがきっかけでした。一緒に行った同僚が日焼け止めを使っていたのですが、高温多湿なバングラデシュでは大量の汗をかくため日焼け止めが流れてしまいました。それを見ていて、汗をかいても落ちない日焼け止めを開発すれば大きな社会貢献ができると思い立ったのです」(八巻氏)

株式会社資生堂 

八巻悟史 やまきさとし

福島県出身。埼玉大学大学院理工学研究科分子生物学専攻卒(理学修士)。2003年、資生堂入社。ヘアスタイリング製品開発研究所に配属、UNO、ツバキ、マシェリ商品やプロフェッショナル製品の開発に従事。2010年、スキンケア応用研究グループに転属。紫外線吸収剤の光安定化研究と、超薄膜技術の開発に従事。2013年、サンケア製品開発グループに転属し、アクアブースター技術の開発、及びアネッサの製品開発を担当。

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開発するにあたり、八巻氏にはあるヒラメキがあった。ヘアスタイリング製品開発研究所に所属していたときの経験で、ハードタイプのスタイリング剤の洗髪性が悪いことを知っていた。それを日焼け止めに応用できるのではないかと考えたのだ。

「資生堂では、研究員が自由な発想で製品アイデアを具現化する社内コンテストが毎年開催されているのですが、そこにスタイリング剤の洗髪性の悪さを耐水性として応用した日焼け止めを出したのです。日焼け止めが苦手な水で、逆に効果を高めようという発想が認められ、大賞を受賞しました。それが経営陣の目にとまり、会社の技術として開発するゴーサインが出ました」

革新的な技術は伝えるのが難しい

ただ、製品開発の道のりは平坦なものではなかった。コンテストに出したのはまだ技術の”種”。製品化に耐えうるものに昇華するには課題が山積していた。

それまでの常識とはかけ離れた技術だったため、開発当初は周囲もこの技術の実現性について懐疑的だった。八巻さんは辛抱強く実験を繰り返してデータを積み重ね、協力者を募った。甲斐あって実験段階ではうまくいくデータがそろったが、人の肌でうまくいくかは実際に試してみなければわからなかった。そこで八巻さんは、自ら肌を焼いて示したという。

「この技術を人にわかりやすく伝えるのがなかなか大変で(笑)。均一性を上げることでなぜ紫外線の防御力がアップするのかについては、極力シンプルなモデルを作って体感してもらいました。また、UVカメラを使った映像で、耐水性と防御力のアップを可視化することに成功し、やっと技術の革新性を伝えられるようになりました」

ブロック膜黒い部分が紫外線をブロックする膜

さらに、周囲の納得性が高まると同時に追い風が吹きはじめる。通常、こうした技術の種の理論を明確にし、技術の土台を確立して製品化するまでには、5年以上かかってもおかしくない。しかし、アクアブースター技術は3年で製品化にこぎ着ける。

「事業部が私の技術の具現化に取り組むプロジェクトにジョインしてくれたのです。そのおかげで技術を開発しながら、事業化を並行して進められ、製品化までの時間を大きく短縮できました」

手作りのモデルアクアブースター技術を視覚的にした手作りのモデルを手に説明する八巻氏。

時代は”スポーツと美の両立”へ

こうして新しく生まれ変わった資生堂の日焼け止め「アネッサ」。八巻氏は新製品の事業展開について次のように語る。

「今後は、使うシーンごとに開発することが重要だと感じています。『アネッサ』は今回のリニューアルから、スポーツ、レジャーシーンで支持される製品を目指しています。

昨今はランニングを趣味とする人が増え、スポーツウェアもファッショナブルになってきました。他方で、女性アスリートは強さだけでなく、美しさやアイドル性も求められています。

今の技術なら”スポーツと美の両立”は可能。『アネッサ』を通して、スポーツやレジャーを楽しみながらもより美しさを輝かせることを提案していきたいですね」

»アクアブースターをもっと詳しく知る【資生堂「アネッサ」HP】