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佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ

それはタブーじゃない!若者よ、憲法改正を語り合え~田村淳×「政経電論」編集長 佐藤尊徳

2017.01.10

政治

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写真/芹澤裕介 文/大高志帆

「TVatsushi」で「日本国憲法TV」という番組を放送し、若者と憲法について考えている田村淳さんを迎え、近年、世間的にも関心が高まっている憲法改正について語る対談。淳さん自身は国民、特に若者の政治への関心の薄さに危機感を覚えているという。そんな日本が変わるための鍵とは……?

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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 ロンドンブーツ1号2号

田村淳 たむらあつし

1973年12月4日生まれ、山口県下関市出身。1993年、田村亮と共にロンドンブーツ1号2号を結成。バラエティー番組の司会などで活躍する一方、プライベートでは一般人を交えた企画をネット配信する「淳の休日」を手がけ、SNSで社会問題に触れるなど、メディアを駆使して情報発信している。ロックバンドjealkbのボーカルとしても活動。2016年9月よりCSでテレビ局(ごっこ)「TVatsushi」を開局。最近は「田村淳の地上波ではダメ!絶対!」(BSスカパー)など社会派番組にも取り組む。

Twitter:@atsushilonboo

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最初はテレビ業界への問題意識から

尊徳 淳さんは今、CSで「日本国憲法TV」(CS 294ch、月~金曜日深夜2時15分~2時25分)という番組をされているそうですね。なんでも、電波を個人的に借りて放送しているとか。

 そうなんです。「TVatsushi」という名前で電波をテレビ局から借りているので、”僕にとっては”テレビ局を運営しているようなものです。制作、出演、編成、営業……スタッフと協力して、全部自分でやっています。

尊徳 それはすごい。でも、どうして”テレビ局”をやろうと思ったんですか? そもそも、淳さんが憲法を含めた政治的・社会的な問題に対する意見を発信するようになったきっかけは? お会いしたらぜひ聞きたいと思っていたんですよ。

 30歳くらいの頃、テレビの仕事で面白いことができなくなってきたな、窮屈だなと感じたことがあったんです。”罰ゲーム”と言えなくなったり、”パイ投げ”ができなくなったり。どうしてテレビ業界のルールが変わったんだろうと思って調べてみると、テレビ局には放送免許というものがあって、それを与えているのが総務省だということがわかった。

さらに、テレビ局側は総務省にアピールするためのBPO(放送倫理・番組向上機構)なんて機関を作って、「より良い放送のために番組を監視していますよ」と、自分たちの行動を制御していた。これが原因だなと。

尊徳 それで、淳さんはどうしたんですか?

 BPOにも総務省にも取材に行きました。それでわかったのは、自由に見えていた日本のテレビ局が、実はそんなに自由じゃなかったということ。政治を変えなきゃ問題は解決しないと思いました。

田村

尊徳 自分ごとになって初めて政治に興味を持ち、テレビ番組やSNSを含めて広く自分の考えを発信するようになったということですね。逆に私は政治のことばかり取材してきた人間だから、「身の回りのことはすべて政治とつながっている」ということを世の中に伝えるのが使命だと思っているんです。道路の幅もそうだし、保育士の給与もそう。それが不便だと思うなら政治を変えればいい。それが民主主義なんですから。

知ってしまったら動かないわけにはいかない

 だけど、政治のことを言いすぎるとたたかれるし、テレビに出られなくなったりもする。ネットは大きな脅威というほどではありませんが、発言するリスクは感じます。「あいつは思想に一貫性がない!」なんていう批判も受けるんです。

でも、右だ左だって話も、結局議論の本質じゃないですよね。この問題についてはどちらかといえば右寄り、この問題については左寄り。そういう意見の持ち方って普通だと思うんですよ。でも、なかなかそれを認めてくれない空気を感じます。

尊徳 そういったつらさもあるのに、発信し続けているモチベーションの源は何なんでしょう?

 知ってしまったから、でしょうね。知らなかったら波風立てずに、穏やかに芸能生活を送れていたかもしれないけど、今の僕はそうじゃない。それに、竹島について自分の意見を言ったことで番組から外されたりすると、「何だろうこの国は?」と、怒りを感じると同時に不安になるんですよ。

かつて出演していた情報番組では、結局番組の”しがらみ”に絡めとられて相手主導になっていたな、という後悔もあります。もっと生放送中にいろいろ暴露すればよかった(笑)。

尊徳 淳さんには悪いけど、僕はそもそもテレビに未来はないと思っています。今でさえ若い人はテレビを見ないのに、10年後、同じだけの信用や権力を持ち続けられるはずがない。以前、フジテレビの番組に村上ファンドの件で出演したとき、スタッフから「ホリエモンの話はしないでくれ」と言われて憤ったことがあります。

 フジテレビの人と話すとき、「ホリエモンに買収されていれば良かったと思わない?」と聞くことがあるんですよ。もしあのとき買収されていたら、異質な大メディアができあがって、日本全体のメディアの方向性も変わったんじゃないかと思います。

田村淳・佐藤尊徳

知ってしまったら動かないわけにはいきません(淳)

写真/芹澤裕介

 

日本人がタブー視しているけど実はタブーじゃない「憲法」

尊徳 今、淳さんが作っているのは、そういった”しがらみ”のない、自由な番組なんですよね。

 そうです。僕が番組を始めるにあたって、”日本人がタブー視しているけど実はタブーじゃないもの”を取り上げたいと思ったんです。その代表格が「憲法」。それで、まずは出演者に日本国憲法の全103条をすべて読み解いてもらうところから始めました。

『日本国憲法TV』収録風景。若手お笑い芸人やアイドルが中心の出演者は、ほとんど憲法のことを知らずに独自の解釈で議論している。

 

尊徳 確かに憲法、特に9条は神聖視されている部分がありますね。「憲法を変える」という話題になると、「戦争する気か!」と怒る改憲反対派の人が出てきて議論がストップしてしまう。

 面白いからメディアは9条ばかりを取り上げるんでしょうけど、そこで議論がストップしてしまうのは非常に残念ですよね。正直、9条の改正については、少し話したくらいで答えの出る問題じゃないですよ。

それに、日本国憲法TVの出演者10人の意見を聞いたら、改憲賛成派も反対派もいるのに「戦争したくない」という部分は全員同じでした。考えてみると、今まで「戦争したい」という人とは会ったことがありません。今回の件で、逆に会ってみたいな、と思いましたね。そこに改憲の議論を進める鍵がある気がして。

尊徳 いやぁ、長く政治に触れてきた僕でも、「戦争したい」という人とは会ったことがありません。僕自身も戦争には反対です。

 やっぱりそうなんですか。そもそも、憲法改正に関する議論も全然足りていないと思うんですよ。最近までSEALDsの活動が取り上げられていましたが、若い人全員がその活動に参加しているわけじゃない。むしろあれは、少数派の意識の高い人たちが自分の意見を言っている、というだけの現象です。若い人の大多数は、憲法改正に興味も無いし、知識も無いんじゃないでしょうか。

尊徳 僕も同じ意見です。

 だから、日本国憲法TVには専門家を呼ばず、出演者にもあえて勉強してこないように言っているし、僕も勉強しないようにしています。少しでも知識があると、「それは違うよ」と割って入りたくなってしまうから。

番組では政治を知らない人が間違った議論をすることもあります。それを、政治を知らないスタッフが編集して、そのまま視聴者に見てもらう。それが一番良いと思っているんです。日本の現実をありのままに見せて、政治に関する知識が無い人が興味を持つきっかけになるような番組にしたい。

田村淳・佐藤尊徳

改憲反対派とぶつかると議論がストップする(尊徳)

写真/芹澤裕介

政治を知らない人は政治を語ってはいけないのか

尊徳 そんな番組、これまでありませんでしたよ。淳さんの活動は非常に意味があると思います。ところで、淳さん自身は憲法改正についてどう思いますか?

 作られてから70年以上もたっているものなので、変えるべき部分はあると思います。例えば、憲法は現代人がわかる文章で書かれていません。それを理解できる現代文に改めてからでないと、改憲の議論も始められないんじゃないかと思います。実際、番組で出演者に読んでもらったときも、全員が意味を理解するのにすごく時間がかかりました。

尊徳 どの部分をどう変えろ、というのではなくね。わかります。国民にとって憲法はどんな法律よりも上位にある。それほど大切なものなのだから、子どもでもわかるような平易な文章にすべきでしょう。

僕も憲法改正には賛成です。時代にマッチしないものは変えるべきだと思います。アメリカは日本以上に憲法を変える手順が複雑ですが、それでも適宜改正が行われています。やはり、日本人にとって政治が遠い存在なのが問題でしょうね。

 政治を知らない人は語っちゃいけない、みたいな空気もありますから。「自民党の改憲草案どう思う?」とか気軽に居酒屋で話せるようになればいいと思うんですよ。そういう話をするともめるだろうから、テーブルごとに”司会者”がいるようなバーがあってもいい。そういう場では、会話を回すのがうまい芸人が活躍すると思います。

尊徳 そしたらもう少し関心も知識も増えてくるだろうね。自分で言うのもなんだけど、僕みたいに”知っている人”の話は、知識のない人にとってはまったく面白くないですからね。

 専門家の豊富な知識は宝物だけど、ある程度のレベルに達していないと宝も宝として受け取れないんですよ。テレビでもそういうズレのある番組が多い気がします。バラエティー番組に携わる人間が、その裾野を広げるような、政治への興味がわくコンテンツ作りをしなきゃいけないでしょうね。

 

田村・尊徳

“外圧”は日本人が変わる唯一のチャンス

尊徳 そういった意味では、米トランプ大統領の誕生は、日本の若い人が政治を自分事としてとらえ、関心を持つチャンスだと思います。日本は島国だから、領土が隣接した国のような緊張感はないし、テロも無いから安全であることにも慣れ切っている。

でも、もし米軍が日本から出ていくことになれば「これから日本をどう守ればいいの?」と必ず考える。安い輸入品がどかどか入ってくるTPPもそうです。

 確かに日本人の”平和慣れ”は感じます。逆に僕は、北朝鮮がミサイルを打つたびに冷や冷やしていますよ。でも、最近ではメディアもあまり報じなくなりました。数十発打って全部当たっていないから、「日本には飛んでこない」とどこかで安心しているんでしょう。でも、本当はそれだけの回数のミサイルを打たせてしまっている事態が問題なんです。

尊徳 北朝鮮のミサイルが日本のどこかに落ちるまで、尖閣諸島に中国人が居座るまで、日本人のその感覚は変わらないんじゃないですか。でも、トランプ大統領の誕生で、そこまで大きな事件になる前に、日本人が今近づいている危機に気づくかもしれない。

ペリーの黒船来航以来、日本はいつも外圧によって大きく変わってきました。今回もそうなることを願いますね。

田村淳

なかなか僕に続いてくれる人がいない(淳)

写真/芹澤裕介

「田村淳」というベストプラクティス

 やはり”外圧”ですか。僕はこの数年、ずっと若い人が政治に関心を持ってくれる糸口を探してきたんですが……。

尊徳 そのために淳さんがしてきた活動は間違っていないと思います。長年続いてきた独裁政権が倒れたチュニジアの「ジャスミン革命」も、政治に不満を持つ青年が抗議の焼身自殺しをした事件がSNSで拡散されたのがきっかけでした。つまり、少しずつでも「政治に関心を持とう」「憲法について考えよう」という呼びかけに賛同する人が増えていけば、変わるチャンスはあるということです。

 でも、なかなか僕に続いてくれる人がいないんですよ。たとえば山本太郎(参議院議員)とは昔から仲が良いんですが、ああいう熱意のある一人の人間が立ち上がっても、結局何も変わらないじゃないですか。それを目の当たりにすると、委縮してしまう人も多い。もっとほかのやり方を考えなきゃいけないなと思います。

尊徳 そんなことはありません。確かに時間はかかるかもしれませんが、続けていれば必ず実を結びます。後進を増やすためには、まずは淳さん自身が成功することですね。委縮している人たちに、勇気を与える存在になってもらわなくては。応援しています。

株式会社損得舎代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。
Twitter:@SonsonSugar
ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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