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佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ

“流浪の経営者”が示す 今日びのメディア論【C Channel森川亮×佐藤尊徳】

2017.03.10

経済

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写真/芹澤裕介 文/唐仁原俊博

日テレ、ソニー、ハンゲームと収入を半減させながら転職を続けた森川亮氏が48歳でたどり着いたのは、動画メディアを運営するC Channelの起業だった。恐れの無い転職劇と、ことごとく結果を出してきた経歴には頭が下がるが、その目的は「社会に貢献すること」だという。その真意はどこに? ”流浪の経営者”森川氏が見ている未来をのぞく編集長対談。

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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C Channel株式会社 代表取締役社長CEO

森川亮 もりかわあきら

1967年、神奈川県出身。日本テレビ、ソニーと超大手企業を経験したのち、2003年、ハンゲーム・ジャパン株式会社(現LINE株式会社)に入社。2007年に代表取締役社長に就任。業績が好調ななか、2015年3月に任期満了により社長を退任すると動画メディアを運営するC CHANNEL株式会社を4月に起業し、サービス開始から1年半で月間再生回数6億回を達成。2017年4月にはネットの世界から飛び出し、体験・創造型リアルイベント『SUPER C CHANNEL』を東京国際フォーラムで開催予定。

Twitter:@moriakit

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LINE社長からメディアに転身したワケ

尊徳 森川さんがLINEの社長を辞めたとき、業績も好調だっただけに、いろんな憶測が巻き起こりましたね。どうしてメディアを立ち上げたいと思ったんでしょうか。

森川 LINE社長として世界中の人達と仕事をする中で日本や日本人が世界の中で立場がなくなっていくのを目の当たりにし、日本を元気にしたいと思いました。そこで最初は教育やヘルスケア、エネルギー、農業などさまざまな事業を検討したのですが、今までの経験からメディア産業を変えることが一番の日本への貢献だと思うようになったのです。

今、若い人が夢を持てないといわれますが、メディアを見ても、人の悪いところとか暗いことばっかり報道するじゃないですか。

尊徳 みんなそういうネタが大好きだからね。

森川 僕の場合は経営者としての経験から、みんなに経営者を目指してほしいなと思っています。でも、学校に行って、「社長になりたい人はいる?」って聞いても、ほとんど手を挙げない。子どもにとっては”社長=悪人”と刷り込まれています。

尊徳 テレビでたたかれまくってるのを見てれば、毛嫌いするのも当然だよね。

森川 政治家も同じです。でも、若い人が世の中を変えられるようにならないと、いつまでも状況は変わらない。だから、もっと頑張っている人とか、良いものを世の中に伝えられるような、そんなメディアが必要なんです。周りを見て、誰もやってないから、僕がやろうと。始めたばかりですので、まだまだ目標には遠いですが。

森川亮

若い人が世の中を変えられるようにならないと(森川)

写真/芹澤裕介

“女心がわからない”をどうやって乗り越えるか

尊徳 女性にフォーカスしたのはなぜでしょう。

森川 国の半分は女性じゃないですか。だから女性が活躍できる場を作れば、日本は元気になるはず。日本って女性が働きにくい社会だなってすごい感じるんですよ。

尊徳 やっぱりC CHANNELみたいに女性が多い環境だと、そう感じる機会が多いですか。

森川 アジアって全般的に男性のほうが偉いみたいな価値観が強いですから、考え方そのものをもうちょっと変えるような教育をしたほうがいいと思います。

うちに来る人の中にはモデルや元タレントもいて、前に所属していた事務所で搾取されたり、つらい思いをしてきた人もいます。そんな人がうちで活躍したり、日本だけでなくいろんな国に出ていって、第一線で活躍できたりするので、単なるメディアではなく、女性が元気になるプラットホームにもなりつつあるかな。

尊徳 女性が多いことで、やり取りのなかで戸惑いを感じたりはしないんですか。

森川 いつも戸惑ってますよ。一言で女性といっても、いろんな女性がいて、みんな言うことが違いますし。結局、男性が女性を理解するって無理だと思ってます。

尊徳 そんなの無理ですよ、無理無理。「尊徳さんは女心がわからない」ってよく言われるけど、誰だってわかんないですよね(笑)。

森川 だからそれはもうしょうがない。ただ、一緒に仕事するわけだから、なるべく理解しなきゃいけません。でもすべての意見を聞き入れられるわけではないので、聞くべき意見とそうでないものはちゃんと判断します。ユーザーも女性ですから、どうやって女性に満足していただくかというところでも常に悩んでますね。

尊徳 実際にどういうふうに女性顧客の心理を考えるんですか。

森川 結局は数字ですよね。どんな動画が求められているのか、なるべく仮説を立ててやってみて、結果がいいものだけを残すっていう感じです。もっとも、僕が細かいことまでやっているわけではなくて、基本的には女性社員が女性のお客様のことを考えてやっていたり、自分だったらこんな動画を見たいなというものを具現化している。僕としてはそれをいかに応援できるかを考えるということですね。

森川・尊徳

LINEに未練はなかったのか

尊徳 僕はLINEでの森川さんの引き際、素晴らしかったなって思うんですよ。業績が良いときにスパッと退任。良い引き際の経営者って、僕はほとんど見たことない。

森川 LINEの退任のときもそうですが、僕は何か変えるなら、なるべく良いときに行動するようにしてますね。業績が悪いときに社長が変わると「ダメだからいなくなったのね」と言われてしまう。

尊徳 「あいつ、逃げやがった」って。

森川 そう。良いタイミングで次に行くためには、やっぱり準備が必要です。LINEの場合も、周りに自分の意思を伝えたのは退任の2年前ぐらいですが、その前からずっと、自分がいなくなった後のことは考えていました。

極端なことを言えば、始めるときに辞めるときのことを考えていたほうがいいんです。どういうストーリーで成長して、どのタイミングで辞めるのか。

僕は今まで同じ会社にいるのが最長で10年ぐらいですから、どういう人を育てるべきか、どういうふうな展開にしていくか、どんな組織体制がいいかといったことを10年スパンで考えるようになりました。

森川亮

始めるときに辞めるときのことを考えていたほうがいい(森川)

写真/芹澤裕介

尊徳 サラリーマン経営者にはそういう感覚が欠落してる人が本当に多い。長いこと一人が社長をやってると周りは茶坊主(権力者におもねる人)しかいなくなって、引き継げる人がいなくなっちゃう。長くやって立派な人なんて一人もいないって。いなくなった途端に誰がやるんですかって話だからさ。

森川 社長候補とされてる人をあえて潰したりもしますもんね。一人の経営者がやり続けて成果を出すのは結構難しいかな。長くて10年ぐらいでしょうか。

尊徳 長くてね。それ以上は無理ですよ。しかもこれだけ変化が早い世の中なんだから。そういう意味では内規で期限が決まってる企業は強い。アメリカ大統領の任期だって8年までって決まってる。これは腐らないためのシステムであって、組織が自衛的にそうしている。

まあ、会長になったり相談役になって影響力を持ち続ける人もいるけどね。高い給料もらって、退職金まで受け取ったんだから、あとはごちゃごちゃ言わずに若い人間に任せろよって言いたくなる。

佐藤尊徳

長くやって立派な経営者なんて一人もいないって(尊徳)

写真/芹澤裕介

森川 良くないですね。大企業だとそういう人がいるせいで、社長が”部長”みたいな感じになっちゃって、歴代の顧問に相談しないと話が決まらないみたいな。

尊徳 起業して、これから会社に対してどんどん愛着がわいてくると思うけど、自分がそんなふうに会社に固執してしまうかもって感じたことはありますか。

森川 僕はもともとそんなに物事に執着しないんです。写真とかも取っておかない。昔あったことはどんどん忘れてしまうんです(笑)。だからあるとすれば、執着ではなくて責任感になるんですかね。

 

森川・尊徳

いかにキレイに”失敗”するか

尊徳 起業してから、これまでと勝手が違うなってつまずいた経験はありますか。

森川 当然、うまくいくことばっかりってことはなくて、うまくいくこともあるし、うまくいかないこともあります。でも、ある意味、失敗に慣れてるというか。

尊徳 いきなりうまくいくことのほうが珍しいですよね。

森川 失敗したときにどう対応できるか。大事なのはそっちです。

尊徳 失敗をしないでいけるんであれば、わざわざ失敗をする必要はないんだけど、上の段階に行きたかったら、リスクテイクするしかない。絶対にね。

森川 ずっと同じことをやっていると慣れてしまうので、やっぱり新しいものに挑戦したほうが成長しますよね。新しいことって失敗が多いですけど、失敗から学んだことは成功につながるじゃないですか。そういうプロセスを常に忘れちゃいけない。僕がよく例に出すのが自転車に乗る練習です。

自転車に乗るとき、最初はやっぱり転ぶじゃないですか。でも何回か転ぶうちに乗れるようになりますよね。それをいつもイメージしてます。失敗するのは嫌だって人もいますけど、成功は失敗の延長線上にあるので、僕はいかにキレイに失敗するかみたいなことを考えてますね。

森川亮

意味がない情報はどんどんなくなる(森川)

写真/芹澤裕介

大きく変化しつつあるメディア

尊徳 そういう意味でいうと、森川さんが48歳で起業したのを遅いと感じる人もいるかもしれないけど。

森川 起業をどうとらえるか、だと思うんです。僕の場合、起業ありきではなくて、やるべき仕事があって、誰もやっている人がいなかったために、自分で起業しました。もし仮に僕がやりたいことを先にやってる人がいたら、その人を応援するというのも一つの手段だったんですけどね。

それにメディアって簡単に儲かるビジネスじゃないですよね。資金的に余裕がない若い人だと手を出せない分野ですから、僕みたいな年長者がリスクを取ってでもチャレンジしなければいけないという思いもありました。

尊徳 うん。メディアが儲けばっかり考えてもいけないし。

森川 メディアはビジネスでもありながら、社会的な使命も持っているはず。視聴者の反応が良いネガティブな情報ばかり流して、それで数字が上がるのはわかるんだけど、それでいいのかな、と。今のメディア企業の経営者が何らかの使命感を持っているんだろうかと疑問に思うこともある。

尊徳 紙媒体を始めとする古いメディアは変わらざるを得ないでしょうね。だって、トランプ大統領の当選を大メディアの誰もが予測できなかった。トランプをあれだけたたいて当選させまいとしたけど、結果は知っての通り。

要は彼らの影響力がそこまで巨大じゃなくなったっていうことだよね。ネットやSNSの影響で情報の取り方も変わってきた。メディアがなくたって、取ろうと思えば情報は取れるから、昔とは全然違う状況になってる。

森川 みんながみんな発信するようになると、ジャーナリストと呼ばれる人たちの存在感が薄くなっていきますよね。ただ一方で、ジャーナリスト的な目線は絶対に必要です。

尊徳 そうそう。きちんとした意見のある、確かな情報源を持ってる人はいてもらわないと困る。だから、個人としてのジャーナリストは成り立っていくんだろうな。逆に朝日新聞とか、読売新聞とか、メディアがそういう大きな組織としてやっていく時代ではなくなる。でもSNSといえば、Facebookの投稿数が、ガクッと減ったというニュースもありますが。

森川 世界的なトレンドとしては、炎上のリスクがあるし、全部記録が残るから、SNSになるべく投稿したくないっていう人が増えてるんです。だから逆行していきそうな予感はありますね。なるべくネットにつながらないようにするとか、なるべくネットに投稿しないとか、投稿するにしても、すぐ消えるようにするとか。そういう意味ではアナログに戻ってるところもある。

結局、情報が多すぎるんです。友達の自撮りの写真とか見たくないですよ(笑)。そのことにみんなが気づきはじめた。これからは、意味がない情報はどんどんなくなるんじゃないですか。意味があるか、よっぽど面白いものだけが残って、中途半端なものはアップされたとしても、アルゴリズムで隠れるようになるでしょうね。

佐藤尊徳

日本人のメンタリティを変えなくちゃ(尊徳)

写真/芹澤裕介

“野生”の楽しさをみんなに知ってほしい

尊徳 最近、C CHANNELは中国でも盛況みたいですね。

森川 はい。中国でのビジネスは難しいところもあるので、うれしい誤算です。3月から中国でオーディションもやります。それでスターを見出して、その子たちに活躍してもらうつもりです。

尊徳 中国のほうがガッて伸びるかもね。

森川 日本での売上げを超えてしまうでしょうね。日本は若い人が少ないですから。人口が1億数千万人でも、若い女性、いわゆるF1層(20~34歳の女性)は960万人ぐらい。でもアジアの国を見ると、たとえばフィリピンは国の平均年齢が23歳なので、ほとんどの女性がF1層という感じです。

尊徳 危機感を覚えるよね。このまま人口が減れば、日本はさらにまずいことになる。

森川 さらに保守的になってしまうでしょうね。だからもっと子どもが生まれるようにしないと。最後は人口ですもんね。

尊徳 そりゃそうですよ。移民を入れないということであれば、高齢化よりも少子化のほうが問題であって、その解決のためには考え方とか、価値観とか、日本人のメンタリティを変えていかないといけない。働き方も含めてね。そういえば先日、プレミアムフライデーが実施されましたけど、C CHANNELは3時にみんな帰りましたか?

森川 いや、特に。仕事をしたいというか、やりたいことがある人が集まってきてるので、それを止めるのも変な話ですし。

尊徳 うん。国は、セーフティネットというか、最低限のやっちゃいけないラインを決めるとか、そういうことだけにしてほしいよね。国が管理しすぎると競争力どころの話じゃなくなる。

森川 日本は動物園みたいだなと感じます。檻のなかに入っているみたいに管理されるのが好きな人が多い。でも、もっと野生の楽しさを知って、やりたいことをやる、そういう生き方をしたほうが人間味があっていいんじゃないかなと思うんですよね。

尊徳 それをみんなに伝えるためにもC CHANNELには頑張ってもらわないと。これからも森川さんの野生の生き方で、みんなを元気にしていってください。

株式会社損得舎代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。
Twitter:@SonsonSugar
ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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