本日(2014年4月11日)、新聞をにぎわしている「内閣人事局」について解説してくれる人がいました。ちょっと聞き慣れない言葉ですが、公務員制度改革には大変重要な機関です。よく聞くキャリア官僚たちのことです。少し難しいですが勉強してみてください。
※わからないことがあれば、私、佐藤尊徳まで遠慮なく質問してください! また、異論があればご意見を寄せてください。
幹部公務員の一元管理について
みなさん、「内閣人事局」という言葉を見聞きしたことがありますでしょうか? 本日の新聞で見た方もいらっしゃるでしょう。これは、今国会で設置根拠法が成立し、順調にいけば来月にも政府に設置することが予定されている、行政機関の名称です。
この内閣人事局、いったいどんな機関なのでしょう?
語感から、内閣の人事、つまり、大臣の選任や任免を行うかのような印象も受けますが、実際はそうではありません。
内閣人事局は、主に幹部公務員の人事を一元管理する役割を担うことになります。
一元管理の対象は、財務省や外務省などをはじめとした中央省庁の幹部(部長、審議官以上)となっており、その人数は約600人となることが見込まれています。
適格性審査を経て作成された幹部候補者名簿に基づいて、各省庁の任命権者である大臣が内閣総理大臣、官房長官と協議して任命を決めることになります。
内閣人事局長には、現在3名いる官房副長官(衆議院議員、参議院議員、高級官僚経験者から各1名)の中から1名が充てられることとなっています。
この内閣人事局構想の検討が始められたのは、6年前にさかのぼります。
第1次安倍内閣において内閣総理大臣の下に設置された「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」は、国家公務員人事の一元管理を行う「内閣人事庁」の創設等を提言する報告書を、安倍内閣を引き継いだ福田総理大臣(当時)に提出しました。
当初、福田総理大臣は公務員制度改革に慎重な姿勢を示しており、町村官房長官(当時)はじめ多くの閣僚からも反対されていましたが、公務員制度改革担当の渡辺喜美大臣(当時)による説得工作の末、福田総理大臣も改革の推進に向けて舵を切ります。
そして、福田内閣は内閣人事庁創設を含む「国家公務員制度改革基本法案」を閣議決定し、同法案は国会審議を経て成立します。このときの国会審議において、「内閣人事庁」は「内閣人事局」に名称変更されました。
余談ですが、当時、この「国家公務員制度改革基本法案」の内容には与党自民党内における異論が強く、審議開始に向けたプロセスは非常に難航します。
かくして動き始めた内閣人事局構想ですが、福田内閣に代わって組閣された麻生内閣においては、その設置が見送られます。これには、麻生総理大臣が公務員制度改革に批判的であったからだ、との見方があります。
以降しばらく頓挫したままの内閣人事局構想でしたが、2度の政権交代を経て、第2次安倍内閣においてその実現に向けて再び動き始め、現在にいたっています。安倍晋三さんがやろうとしたことを、いま改めて安倍晋三さんが実現するわけですね。
(「再チャレンジ制度を導入した総理らしい!」佐藤尊徳)
では、内閣人事局を設置し、幹部公務員を一元管理することに、いったいどんな意義があり、何が大きく変わるのでしょうか?
キャリア官僚を一元管理する意義
内閣が各府省庁の人事に対して関与することで、国家公務員の忠誠心を「省益」から「国益」へと向かわせ、縦割り行政の弊害を無くし、内閣主導を実現することが、その主な目的と言えます。
しかし、現在でも局長級以上の幹部人事については官房長官及び3名の官房副長官から構成される「閣議人事検討会議」にて事前審査が行われ、内閣の承認に基づいて各省大臣が任免を行っており、その対象者の人数は約450名にのぼっています。
これに、部長、審議官を加えて600名の人事を一元管理する現在の構想には、「それで何が大きく変わるのか?」との疑問を持つ方も多いのではないかと思います。
そもそも、内閣が中央官庁の公務員人事に関与することについては、アメリカ、フランスなどのように大規模な介入をする国もあれば、イギリスのように関与しない国もあり、それぞれのお国柄によって判断の分かれるところです。
ここで関与の是非についてまでは言及しませんが、少なくとも、内閣が人事に関与するのであれば、少なくともその関与が課長級人事にまで及ばなければ、その効果は半減、いえ、それ以下となってしまいます。
政府の個々の政策立案の陣頭指揮に立ち、政治関係者や関連団体・事業者を説得してまわるのは、課長級の人たちだからです。
この、課長級の人たちが、組織の利益を優先して行政にあたるか、組織を犠牲にしてでも国益を見据えた仕事をしてもらうかによって、今後の日本の姿は大きく変わってきます。
今回の公務員制度改革をスタートラインとして、さらなる改革の進展が図られることを期待しています。
(文:島野 未来)