平将明の“言いたい放題”

多様な価値観を取り入れ実力主義へ 自民党を改革する5つの鍵

2018.07.21

政治

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2017年11月、自由民主党の安倍晋三総裁は、党・政治制度改革実行本部長に塩崎泰久前厚生労働大臣を任命。自民党が引き続き国民から政権運営を任せられる党であり続けるため、党改革の推進を決めた。あれから8カ月、2018年7月に党改革案が発表された。事務局長として党改革への提言のまとめに尽力した平将明議員に、党改革の狙いと具体的な提言内容を聞いた。

政権政党は多種多様な意見を聞く必要がある

今回、塩崎恭久党・政治制度改革実行本部長から直々に事務局長への就任を要請され、党改革の提言作りにかかわることになりました。

自由民主党は“政権与党”です。「今さら何を当たり前なことを」と言われそうですが、自民党が党改革を行うにあたっては、政権与党であることを強く意識する必要があります。

自民党は、党の主義主張や価値観を持っていますが、政権与党である以上、自分たちと同じ主義、価値観の人たちの意見だけに耳を傾けて政権運営をしてはいけません。国民から政権を任されている以上、できるだけ多種多様な意見を聞く必要があるのです。

そこで、党改革を実行するにあたって、どんな党を目指すべきか考えました。そのときに思いついたのが次の5つのキーワードです。同時にこれらは世界的なbuzzword(バズワード)でもあります。

  • “diversity(ダイバーシティ/多様性)”
  • “inclusive(インクルーシブ/受容性に富んだ)”
  • “open(オープン/開かれた)”
  • “governance(ガバナンス/組織統治)”
  • “sustainable(サスティナブル/持続可能な)”

政策を立案するためには、多種多様な声を吸い上げる必要があります。政策立案者自体も多種多様な感性を持つ人たちで構成されるべきです。つまり“diversity(ダイバーシティ/多様性)”の実現です。

そのためには、“inclusive(インクルーシブ/受容性に富んだ)”“open(オープン/開かれた)”な組織でなければなりません。日頃、自民党本部には来ない人たちにも、自民党を支持しない組織・グループにも、こちらから出向いていって話を聞く姿勢も必要です。

そして、これらを実現し運営するしっかりとした組織としての“governance(ガバナンス/組織統治)”が必要です。そこまでできて初めて、国民の皆さんから引き続き政権を任せていただける“sustainable(サスティナブル/持続可能な)”な国民政党になることができると思うのです。

安倍総裁が国民からの質問に答えるネット番組

党改革の提言作りは最初に、「党本部・地方組織ガバナンス等改革部会」「政策立案力向上部会」「多様な候補者擁立推進部会」「“議員力”向上部会」「女性のニーズとソリューション部会」「若年層のチャンス拡大部会」「戦略的広報確率部会」の7つの部会を設置し、具体策の検討に入りました。

そして、それぞれの部会から上がってきた施策を、本部案として提言にまとめました。ここで提言の一部を紹介しましょう。

個人的に私が「面白い!」とワクワクしているのは政策立案力向上部会の提案した「政策発信強化」の項目。「総裁3DAYS」と銘打ったインターネット番組で、安倍総理のファーストネーム“晋三”にかけて安倍「聞くぞう」「行くぞう」「やるぞう」プロジェクトを実施し、その模様を配信するという試みです。

1日目の「聞くぞう」では、総裁自らが生出演していろいろな方の意見や質問を受けます。2日目の「行くぞう」では関連した現場に視察へ向かい、3日目の「やるぞう」で視察を踏まえて解決をするという企画。普段は知れない安倍総裁の仕事ぶりや人柄に接してもらうのが狙いです。

実はこれには、ヒントになった例があります。ロシアのプーチン大統領が国民の質問に答えるテレビ番組「プーチン・ホットライン」です。

プーチン・ホットライン

2001年よりほぼ毎年1回放送されている生番組。プーチン大統領が一般視聴者から寄せられる質問に直接回答。私生活に関する質問から、大統領の周辺がドキッとするような質問、大統領の政策を真っ向から批判する質問など、かなりきわどい質問にも答えていく。

ロシアで大人気だと聞いています。ただの娯楽番組ではなく、プーチン大統領の発言をきっかけに問題が解決したり、政策が立案されたりもするそうです。

日本では放送法の関係(放送局は政治的に中立である必要がある)でテレビ放送は無理ですが、ライブストリーミング形式のインターネットテレビなら、放送ではなく通信だから可能です。

国会議員と大学生のガチ討論で若者層の意見を取り込む

次は、「オープンカフェ・ダイアローグ」の開催。これはすでに実績があります。以前、自民党の党本部で大学生50人ぐらいに集まっていただいて、国会議員10人ぐらいと各テーブルに分かれて、いろんな議題で討論をしました。それがものすごく盛り上がって、参加した大学生からは、実際に国会議員と議論すると政治家のイメージが変わるという感想をもらいました。

その討論会を定例化することで、自民党にこれまで以上に若年層の意見を反映させることができます。大学の近くのカフェや都心部のシェアオフィスなどを借りて、定期的に国会議員と議論するイベントを開催し、コーヒーを飲みながらカジュアルな雰囲気のなかで、学生や起業を目指している若者と現役の国会議員が対話する――。

テレビで見ていると“国会議員=悪者”に映ってしまいがちですが、実際はそうではないことも実感していただけるはずです。

「世襲」も「公募」も同条件で審査して公認候補を決める

今回の党改革のメインは、多様な候補者の擁立にあります。現状では、現職議員が突然国政の場から身を引いたり、選挙に出られない事情が発生したりして急遽候補者を擁立しなければならなくなったときに、「息子(娘)はいないのか?」「奥さんはどうだ?」という流れになりがちです。

衆議院の本来の任期は4年ですが、ほとんどの場合任期前に解散されます。解散してから急に議員に引退を表明されても、時間がないなかで地元の党組織は後継候補を擁立することが困難です。

仕方ないから議員の子どもに白羽の矢が立つ。すると公募などの競争を勝ち抜くこともなく、国会議員の子どもだからという理由だけで公認候補になり、国会議員として国政を預かる身になってしまいます。

選挙に勝つために、現職の地盤・看板・カバンをそのまま引き継げる「世襲候補」が得策なのは理解できますが、そんな「世襲の必勝パターン」みたいなことが常態化すれば、世襲議員ばかりになってしまい、自民党は“貴族の政党”になってしまいかねません。

頭から「世襲」を全面否定するわけではありませんが、プロスポーツを例にとればわかる通り、実力がすべての世界では、世襲はほとんどありませんよね? 名プレーヤーの子どもだからといって、必ずしも名プレーヤーになるとは限らない。

政治の世界でも“実力本位”で能力のある人が議員として国政に携わるには、世襲ばかりではダメ。かといって、最近は公募で議員になった人たちもよく失態をしでかします。

要するに「世襲 vs 公募」の対立は不毛だという話です。重要なのは、より公募制度を充実させて広く人材を募り、複数回の面接、論文の提出、グループディスカッションや街頭演説もやってもらい、公明正大な審査をして公認候補を選ぶこと。

もちろん審査する人も、多様な価値観を持った人を幅広く受け入れて、世襲、公募を問わずどんなに優秀な人でも、公正公平な審査をパスして公認候補となってほしいと思っています。

“比例復活”に甘んじさせない!“現職優先”の悪習にもメス

世襲議員に限らず、都道府県連では普段から後継者を育てて、選挙に備えなければいけません。準備していないと、いざというときに候補者がおらず、キャリアとルックスで公認を決めてしまうことになります。

すると人格・見識に欠ける人物が国会議員となって、失言や失態をおかす事態になる。世襲であろうがなかろうが、十分に時間をかけて公認候補を育て、公正な審査で周囲に認めてもらうことが大事なのです。

また、“現職優先”の悪習にもメスを入れます。小選挙区で勝てなくて、比例区で復活当選する議員が、いつまでも“比例復活”に甘んじないように現職優先の規定を見直します。

具体的な施策の詰めはまだこれからですが、例えば年に1回決まった時期に世論調査を行って、我が党の現職議員が対立候補に大きく後れを取っているような場合には選挙対策委員会で審査し、現職議員が勝てる候補ではないと党が判断した場合は、現職がいても公募をかけることも検討しています。

今回の党改革では、公認候補を選ぶプロセスを明確にし、公募制度の充実を図って実力のある人が議員として活躍できる組織にし、党のダイバーシティ実現につなげたいと考えています。

女性と若者の活躍こそダイバーシティ政党の本丸

女性の活躍も今回の党改革の重要項目。「女性の声を聴く」ための仕組み作りをはじめ、数々の提言を盛り込んでいます。個人的に紹介したいのが「朝のカフェスタ託児所」の開設。

子育てしながら議員を続けるのは大変です。議員会館の中に保育所があるのですが、利用時間が朝8時からで、自民党の部会も8時に始まるから預けられないという声を耳にします。

そこで、自民党本部の1階にあるカフェスタで使っているコーヒーラウンジを託児所として開放。7時半から9時まで預けられるよう検討します。また、子育て世帯の負担軽減のため、早朝の会議開始時間を30分遅らせるなどの配慮もしていきます。子育て世代が政治に参加できるようにすることは、ダイバーシティの観点から極めて重要です。

そして、女性と並ぶダイバーシティの対象が若者です。若年層のチャンス拡大の施策に取り組むとともに、若者プロデュースの総裁選挙討論会の実施も考えています。

若い人たちに実行委員会を作ってもらい、若い人の感性でネットやSNSを最大限に活用して質問者を公募し、若者目線に立脚した総裁選挙討論会を開催してもらう。全国の若者に政治を身近に感じてもらうと同時に、自民党の明日を担う若い人材とのつながりを作ります。

また、被選挙権の引き下げは、私が以前から主張している政策。選挙権年齢が引き下げられたのだから、被選挙権も引き下げようと思います。

»【平将明の“言いたい放題”】「被選挙権」も下げれば若い世代は政治に参加する

世界を見ると21歳被選挙権の国が多いようで、日本の衆議院25歳、参議院30歳は引き下げる余地があります。被選挙権の引き下げが実現した暁には、公認候補に「アンダー25枠」「アンダー30枠」を設けて、若者の候補者を全国公募して自民党の公認候補として立候補してもらうことも提言に盛り込みました。

自民党政治の核心部「政調」「税調」も改革の対象

もうひとつ、部会の活性化のために、部会長人事を見直す提言をしています。自民党には、党の政策の調査研究と立案を担当し、審議決定をする政務調査会がありますが、その下部組織として「財務金融部会」「厚生労働部会」「農林部会」「水産部会」「経済産業部会」「国土交通部会」など14の部会が存在します。

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野党が情けないから自民党に変わってもらうことを期待してしまう

“開かれた自民党”は大いに歓迎。平議員が現場の指揮を取った党改革はぜひとも実現させてほしい。総裁直属の組織なんだから、どんどん尖った提案をしてもらい、自民党を激変させてくれるのを願っている。

提言がまとまれば、後は安倍総裁が決断するだけ。世襲がすべて悪いとは思わないし、優秀であれば問題はない。地盤、看板、カバンを引き継げば、自動的に議員になれるというのが問題で。

野党が情けなすぎるから、自民党に変わってもらうことを期待してしまう。しかし、党改革の話が持ち上がったのは昨年の衆議院選挙前。あの後に野党がやらかしたから、当分は自民党が安泰となり、改革のマインドが今も続いているかは疑問。自民党は果たして、「改革しよう」という自発的なマインドを継続させられるか。

安倍総裁は危機感を持っているかもしれんが、世襲議員の多い自民党の執行部が党改革を本気でやれるかどうか見ものだ。