新規事業のアイデアを生み出す5つの方法

2018.10.26

ビジネス

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あらゆる組織、地域、企業でイノベーションが求められている。既存の枠組みから脱却し、新たな価値の創出、そして変革していくことが、少子高齢化によりますます経済成長が鈍化するこれからの日本で生き抜いていくカギとなるからだ。しかし、それを成し遂げる人材はどこに? 「事業構想大学院大学」の学長を務める田中里沙氏に、新規事業を生み出す人材の発掘や育成のノウハウを聞いた。

日本に足りないものは新規事業を生み出すスキルを持った人材

新しいものを創造することは簡単ではない。インターネットにより革新的なアイデアや情報はまたたく間に拡散され、それらにいち早く気づいた者から先に、時代のニーズに即した商品やサービスが発信されていく。そしてそれらに触発された者たちがまた新たなモノをつくり出すという繰り返し。そのスピードは電光石火の速さで、後手に回るほど生み出すことは至難の業となっていく。

可能性の芽に気づき、常に新しいコト・モノを生み出し続けられる組織・地域・企業に未来が拓かれる──。そう痛感している人も少なくないだろう。このキーパーソンとなる人材を育成しているのが「事業構想大学院大学」だ。

事業構想大学院大学は、文部科学大臣の認可を得て2012年4月、東京・南青山に開学した社会人向け大学院大学(専門職大学院)で、現在、大阪校と福岡校を併せた3拠点で展開。2019年春には名古屋校が開学する予定だ。

入学対象者は、新規事業担当者、事業継承者および予定者、起業を考えている者、地域活性を志す者で、毎年30名が入学。受験倍率は約2倍となっている。2年間の修学期間を修了すると、新規事業を構想するための学びを修めた証となるMPD(事業構想修士・Master of Project Design)という専門職学位が授与される。

これまで152名のMPD修了生を送り出し(2018年度時点)、集英社、東急電鉄、オリエンタルランド、富士通、大正製薬、王子ネピア、ジェイアール東日本企画、イオンモールなどさまざまな業種業態のフィールドにて事業構想を実践している。

東京・青山の事業構想大学院大学 (専門職大学院)。

事業構想大学院大学・学長の田中里沙氏は言う。

「イノベーションが求められている今の日本に足りていないのは、“新規事業”を考えて、生み出せる人材です。しかも、長期的な視点で新しい事業を生み出し、育てながら継続していけるスキルを持った人材。本学は、その担い手となる人が集い、アイデアを出し合い、経営資源を生かして理想の姿を描く構想と、実現に向けた構想計画を研究する場となっています」(以下「」は田中学長)

事業構想大学院大学 学長・田中里沙氏

研究し、アイデアを考え続ける2年間

一般的な大学院でも興味を持ったテーマについて積極的に研究を行っているが、書き上げた論文が実業界につながるという印象が薄い。しかし本学では院生が所属している組織・地域・企業の事業構想について研究し、ひたすらアイデアを考え続ける実学的な授業がメインとなる。最終的には、修士論文ではなく、実現可能な「事業構想計画書」の完成がゴールで、その過程で必要な経営学や専門知識を身につけていくのが特徴だ。

「このような取り組みを実現しているのは本学だけと自負しています。そもそも事業構想自体が経営学や法学といった体系化された学問として確立されていません。本学の取り組みでもっとも近いものは芸術でしょうか。絵画や音楽の技法や理論は学べても、表現の仕方は感性によるところが大きく、その人にしか出来ない部分があるからです」

では、どのようにして“その人にしか出来ない部分”を養い、事業構想を作り出していくのか。

事業構想大学院大学の5つのポイント

【1】経営資源の発見

事業構想を考える前に、まず、自らが持つ経営資源の洗い出しから始める。それは歴史や技術、設備といったものだけでなく、長年かけて蓄積された知恵や、取り組むべき課題も含まれる。これらを顕在化し、自分にしか咲かせられない花を想定した“事業の種”を見つけることが重要だ。それを基に、実現したい理想の姿を想像し、事業を構想する。

事業構想はゼロから作るのではなく、経営資源に気づき、磨き、生かし、そこからアイデアを発展させていく。それが本学のコンセプトです」

【2】アイデアを重ねる

実現したい構想(理想)が明確になったら、参考になる論理や事例を集め、計画に落とし込み、ひたすらアイデアを重ねていく。アイデアはひとつをずっと温めるのではなく、改善したり、組み合わせたり、ときには新しい視点で作り直していく。これによりアウトプットしやすい体質へと改善していく。

【3】フィールドリサーチでブラッシュアップ

フィールドリサーチは一般的にニーズの有無に徹することが多いが、本学におけるフィールドリサーチは、創出した構想のブラッシュアップに用いる。例えば、アイデアをセールスマーケティング的に顧客へ勧め、意見を募る。ユーザーの生きた声を参考に、良い点は伸ばし、悪い点は改善していく。手応えを得ながら、アイデアの価値をより高めることができる。

【4】刺激的な知的コミュニティで情報交換

田中学長曰く、新規事業に携わる担当者は「孤独」な面があるという。組織内では人材の確保が困難なばかりか、異分野へ及ぶ場合もあり、知識不足から協力者やサポーターを集められないことも少なくない。また、アイデアが出てきても相談できる相手がいないことも多い。しかし、事業構想家の本来の姿は、多くの関係者を味方にして、進めていくものだ。

事業構想大学院大学は、それらを解消できる知的コミュニティの場であることも特徴のひとつ。自らの構想案を現役院生間で積極的に発言する場があるため、異業種交流会や単発の勉強会では得がたい刺激的な意見に触れられる。さらに、多種多様な実務・学術に携わる教授・講師陣や、修了生との接点も含め、現時点で約500名の仲間がいる環境が手に入る。

「院生の中には、新規事業の担当を任命されて入学する人も多い。予算もスタッフも最初はつけてもらえず、できる限り早期に結果を出すよう期待されています。プレッシャーも多く、たいへんな思いをしているなか、本学に来て、自身と同じ思いや状況の人がいることに気づくのです。そこから連帯感が生まれ、モチベーションが高まるという傾向も見られます」

【5】社会課題を捉える視座の獲得

人口減少をはじめ、少子高齢化によって日本が直面する課題に対しては、国も民間も一体となって取り組んでいる。事業構想大学院大学では、それらの取り組みにかかわる専門家を招き、院生との交流にも注力。ここで各官庁の事業のとらえ方、戦略のポイントを細かく聴き、意見を交換することで、社会課題に対する正しい視座を獲得できる。

「各省庁や自治体にかかわる専門家の皆様からは、交流をきっかけに企業人の熱意や思いをリアルに知ることができ、産学官の適切なあり方がわかったという声をいただいています。この取り組みを積極的に展開し、真の産官学連携を目指してベストケースを生み出すことができたらと願っています」

事業構想が企業や社会の未来を拓く

事業構想に取り組むことで、組織・地域・企業は変わっていくと田中学長は言う。そのためには価値観を共有し、理想の姿を共に目指し、いま何をやるべきかという“ワクワクする気持ち”とモチベーションが欠かせない。その一連の流れを実践的研究により体得できるのが、本学での2年間ということだろう。

「日常業務に没頭してしまうと、環境が変わらない限り、発想の転換は望めません。院生、修了生、教授、社会の第一線で活躍するゲスト講師の方々と交わす本気の議論から、気づきと刺激、そして有効な構想が生まれてきます。

事業構想を考え、アイデアを出し続ける人が増えれば、企業や社会は確実に良い方向へ動きます。そういった人たちを増やすことを使命に、皆さんとともに歩んでいきたいと考えています」