尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!
Q.なぜ公益法人は、税優遇されているのでしょうか?
A.それは「公益」だからです。
例えば「お墓を買う」と言いますが、それはお寺(宗教法人)にある土地を、お墓を建てる人が購入するわけではありません。「永代使用料」と言って、お墓を建てる権利をお寺に支払うのです。土地を売買したら商行為になるからです。永続的にお墓をその場所に置いておいてもいいですよ、ということが一般の「お墓を買う」ことです。ま、墓石は買えば自分のものですが。ですから、固定資産税もかからないのです。
ということで、基本的に、公益法人は営利だけを目的にした団体ではありません。例えば、他に学校法人は教育に必要で、国からの補助金等がある代わりに、さまざまな制約があります。公益法人とは、公共性の高いもので、社会に必要だと認められたもの、と考えればいいでしょう。株式会社と違い、形成した資産は別の団体に持ち出すことはできません(配当等ができない)。解散するときも、その財産を持ち出せません。
収益事業が認められていないわけではなく、配当もできないので、税率が低く抑えられているということです。
Q.政党の支持勢力になっている公益法人は、政治的にどれだけの影響力を持つのでしょうか?
A.個々によってまったく違うし、それぞれの団体の関わり方もさまざまなのでここでは一例を挙げましょう。
例えば、公明党は創価学会が支持基盤だということは公然の事実です。しかし、日本国憲法に20条や89条には信教の自由と同時に、政治からの特権を受けないという明文があります。これが、「政教分離の原則」と解釈されるものです。公明党は、創価学会とは別だと言い張っていますが。公明党の基礎票は800万~900万票です。投票率が低かろうと、高かろうとこの票が投票されます。見えている票は政治家にとって魅力です。ですから、ほんの数十議席でも与党内で大きな影響力を持てます。
ここまで大規模な選挙運動はしませんが、立正佼成会など、宗教団体も自民党の支持基盤です。ということで、宗教法人課税には慎重論が大きいのです。
Q.政治的な影響を考えてこれまでなかなか踏み込めなかった公益法人の課税強化を、このタイミングで検討をはじめたのはなぜですか?
A.これは、私の完全なる私見です。
まず、第一に法人税減税で減った税収を確保したい思惑のように言われますが、公益法人を課税強化してもたかだか数百億円程度で、減収分に見合ったものではありません。
ということで、公明党への牽制だとしてみるといいかもしれません。安倍政権がこれから進めようとする政策は、集団的自衛権の憲法解釈改変など、公明党(創価学会)とは相容れないものが続きます。その駆け引きに使うと考えることもできるのではないかと。(佐藤尊徳)
[2014年4月30日 日経新聞 3面「公益法人に課税強化論」]