次期戦闘機F-3の日米共同開発案に“F-2のデジャブ”との恨み節

2018.12.14

技術・科学

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次期戦闘機F-3の日米共同開発案に“F-2のデジャブ”との恨み節

2018年11月の「航空宇宙展」で公開されたXF9-1エンジンの一部。F-3に採用(予定)の純国産HSEの実証試験型。

航空自衛隊が配備する“準”国産戦闘機F-2の後継機(将来戦闘機)、いわゆる「F-3」の開発スキームが、どうやら日米共同開発で落ち着きそうな雲行き。ただ“純国産”に執着する日本の防衛産業関係者の一部からは恨み節も。

時間がないなかコスト削減が必要なF-3開発

F-3は日本の技術力の粋を結集したステルス戦闘機で、肝となるエンジンは防衛技術研究所とIHIが共同開発する純国産の高性能エンジンHSE(ハイパワー・スリム・エンジン)を採用(予定)する点がウリ。極東アジア地域で他の追随を許さない機体を目指し、アメリカのステルス機、F-22やF-35をも凌駕するという。実に野心的な計画だ。

現行のF-2は2030年代に寿命を迎え、また、F-3の本格開発や飛行試験などには最低10年は必要。逆算すると本格開発への移行は“待ったなし”だが、“純国産”にこだわり過ぎると開発期間が長くなりコストもかかる。つまり手間・暇・コストを考えると、すでにステルス機で実績を積む同盟国アメリカと握手した方がある意味合理的だ。

F-3の開発費は数兆円かかるともいわれ、価格は1機200億円ともささやかれている。空自が導入しはじめたF-35が百十億円(これでも世界トップクラス)を軽く上回ることも十分考えられるが、一定の数を揃えるためには価格削減は必須。

このため、F-22のステルス技術とF-35の情報交換技術(友軍機の情報を共有し最適な攻撃を行なうクラウド・シューティング技術など)の“いいとこ取り”を目指すのでは……、というのが大方の見方だ。

「将来戦闘機」(F-3)のイメージ図(防衛装備庁)

アメリカは日本独自に戦闘機をつくられると困る

加えて、「アメリカ・ファースト」を掲げ対日貿易赤字の圧縮を強く求めるトランプ政権が、F-3開発への参画を猛烈に押していることは、いわば“公然の秘密”。仮にこれを断れば日米同盟に大きな禍根を残す。

また、あくまでも航空機開発では絶対的優位を維持、というのがアメリカの安全保障戦略の基軸で「同盟国の日本であっても戦闘機の独自開発は看過できない」というのがホンネ。共同開発ならばコントロールできる、というわけだ。

結局、独自開発を匂わせてアメリカから有利な条件で最新技術を引き出そうとする日本と、“従順な同盟国・ニッポン”による戦闘機独自開発を阻止したいアメリカ(同国は世界の戦闘機市場で優位に立つが、将来日本が参入し競合するのでは……との危惧も働いている)の思惑が、結果的に一致する。

ただし、「これではF-2開発のデジャブだ。当初純国産を目指していたが、これにアメリカが途中から横やりを入れ、結局、日米共同開発となった。要するに日米貿易摩擦を鎮める“いけにえ”で、『F-2はアメリカにレイプされて生まれたようなもの』と酷評する声も少なくなかった」(事情通)との向きも。

いずれにせよ、F-3開発は今後もひと波乱、ふた波乱ありそうな雲行きだ。