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経済
[佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ]

"流浪の経営者"が示す 今日びのメディア論【C Channel森川亮×佐藤尊徳】

電子雑誌「政経電論」第21号掲載
2017年03月10日
読了時間: 11分00秒

写真/芹澤裕介

日テレ、ソニー、ハンゲームと収入を半減させながら転職を続けた森川亮氏が48歳でたどり着いたのは、動画メディアを運営するC Channelの起業だった。恐れの無い転職劇と、ことごとく結果を出してきた経歴には頭が下がるが、その目的は「社会に貢献すること」だという。その真意はどこに? "流浪の経営者"森川氏が見ている未来をのぞく編集長対談。

森川亮プロフィールC Channel株式会社 代表取締役社長CEO
森川 亮(もりかわ あきら)
1967年、神奈川県出身。日本テレビ、ソニーと超大手企業を経験したのち、2003年、ハンゲーム・ジャパン株式会社(現LINE株式会社)に入社。2007年に代表取締役社長に就任。業績が好調ななか、2015年3月に任期満了により社長を退任すると動画メディアを運営するC CHANNEL株式会社を4月に起業し、サービス開始から1年半で月間再生回数6億回を達成。2017年4月にはネットの世界から飛び出し、体験・創造型リアルイベント『SUPER C CHANNEL』を東京国際フォーラムで開催予定。 »Super! C CHANNEL 2017

LINE社長からメディアに転身したワケ

尊徳 森川さんがLINEの社長を辞めたとき、業績も好調だっただけに、いろんな憶測が巻き起こりましたね。どうしてメディアを立ち上げたいと思ったんでしょうか。

森川 LINE社長として世界中の人達と仕事をする中で日本や日本人が世界の中で立場がなくなっていくのを目の当たりにし、日本を元気にしたいと思いました。そこで最初は教育やヘルスケア、エネルギー、農業などさまざまな事業を検討したのですが、今までの経験からメディア産業を変えることが一番の日本への貢献だと思うようになったのです。

今、若い人が夢を持てないといわれますが、メディアを見ても、人の悪いところとか暗いことばっかり報道するじゃないですか。

尊徳 みんなそういうネタが大好きだからね。

森川 僕の場合は経営者としての経験から、みんなに経営者を目指してほしいなと思っています。でも、学校に行って、「社長になりたい人はいる?」って聞いても、ほとんど手を挙げない。子どもにとっては"社長=悪人"と刷り込まれています。

尊徳 テレビでたたかれまくってるのを見てれば、毛嫌いするのも当然だよね。

森川 政治家も同じです。でも、若い人が世の中を変えられるようにならないと、いつまでも状況は変わらない。だから、もっと頑張っている人とか、良いものを世の中に伝えられるような、そんなメディアが必要なんです。周りを見て、誰もやってないから、僕がやろうと。始めたばかりですので、まだまだ目標には遠いですが。

森川若い人が世の中を変えられるようにならないと(森川)

"女心がわからない"をどうやって乗り越えるか

尊徳 女性にフォーカスしたのはなぜでしょう。

森川 国の半分は女性じゃないですか。だから女性が活躍できる場を作れば、日本は元気になるはず。日本って女性が働きにくい社会だなってすごい感じるんですよ。

尊徳 やっぱりC CHANNELみたいに女性が多い環境だと、そう感じる機会が多いですか。

森川 アジアって全般的に男性のほうが偉いみたいな価値観が強いですから、考え方そのものをもうちょっと変えるような教育をしたほうがいいと思います。

うちに来る人の中にはモデルや元タレントもいて、前に所属していた事務所で搾取されたり、つらい思いをしてきた人もいます。そんな人がうちで活躍したり、日本だけでなくいろんな国に出ていって、第一線で活躍できたりするので、単なるメディアではなく、女性が元気になるプラットホームにもなりつつあるかな。

尊徳 女性が多いことで、やり取りのなかで戸惑いを感じたりはしないんですか。

森川 いつも戸惑ってますよ。一言で女性といっても、いろんな女性がいて、みんな言うことが違いますし。結局、男性が女性を理解するって無理だと思ってます。

尊徳 そんなの無理ですよ、無理無理。「尊徳さんは女心がわからない」ってよく言われるけど、誰だってわかんないですよね(笑)。

森川 だからそれはもうしょうがない。ただ、一緒に仕事するわけだから、なるべく理解しなきゃいけません。でもすべての意見を聞き入れられるわけではないので、聞くべき意見とそうでないものはちゃんと判断します。ユーザーも女性ですから、どうやって女性に満足していただくかというところでも常に悩んでますね。

尊徳 実際にどういうふうに女性顧客の心理を考えるんですか。

森川 結局は数字ですよね。どんな動画が求められているのか、なるべく仮説を立ててやってみて、結果がいいものだけを残すっていう感じです。もっとも、僕が細かいことまでやっているわけではなくて、基本的には女性社員が女性のお客様のことを考えてやっていたり、自分だったらこんな動画を見たいなというものを具現化している。僕としてはそれをいかに応援できるかを考えるということですね。

森川・尊徳

LINEに未練はなかったのか

尊徳 僕はLINEでの森川さんの引き際、素晴らしかったなって思うんですよ。業績が良いときにスパッと退任。良い引き際の経営者って、僕はほとんど見たことない。

森川 LINEの退任のときもそうですが、僕は何か変えるなら、なるべく良いときに行動するようにしてますね。業績が悪いときに社長が変わると「ダメだからいなくなったのね」と言われてしまう。

尊徳 「あいつ、逃げやがった」って。

森川 そう。良いタイミングで次に行くためには、やっぱり準備が必要です。LINEの場合も、周りに自分の意思を伝えたのは退任の2年前ぐらいですが、その前からずっと、自分がいなくなった後のことは考えていました。

極端なことを言えば、始めるときに辞めるときのことを考えていたほうがいいんです。どういうストーリーで成長して、どのタイミングで辞めるのか。

僕は今まで同じ会社にいるのが最長で10年ぐらいですから、どういう人を育てるべきか、どういうふうな展開にしていくか、どんな組織体制がいいかといったことを10年スパンで考えるようになりました。

森川始めるときに辞めるときのことを考えていたほうがいい(森川)

尊徳 サラリーマン経営者にはそういう感覚が欠落してる人が本当に多い。長いこと一人が社長をやってると周りは茶坊主(権力者におもねる人)しかいなくなって、引き継げる人がいなくなっちゃう。長くやって立派な人なんて一人もいないって。いなくなった途端に誰がやるんですかって話だからさ。

森川 社長候補とされてる人をあえて潰したりもしますもんね。一人の経営者がやり続けて成果を出すのは結構難しいかな。長くて10年ぐらいでしょうか。

尊徳 長くてね。それ以上は無理ですよ。しかもこれだけ変化が早い世の中なんだから。そういう意味では内規で期限が決まってる企業は強い。アメリカ大統領の任期だって8年までって決まってる。これは腐らないためのシステムであって、組織が自衛的にそうしている。

まあ、会長になったり相談役になって影響力を持ち続ける人もいるけどね。高い給料もらって、退職金まで受け取ったんだから、あとはごちゃごちゃ言わずに若い人間に任せろよって言いたくなる。

尊徳長くやって立派な経営者なんて一人もいないって(尊徳)

森川 良くないですね。大企業だとそういう人がいるせいで、社長が"部長"みたいな感じになっちゃって、歴代の顧問に相談しないと話が決まらないみたいな。

尊徳 起業して、これから会社に対してどんどん愛着がわいてくると思うけど、自分がそんなふうに会社に固執してしまうかもって感じたことはありますか。

森川 僕はもともとそんなに物事に執着しないんです。写真とかも取っておかない。昔あったことはどんどん忘れてしまうんです(笑)。だからあるとすれば、執着ではなくて責任感になるんですかね。

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