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経済

東芝が復活するにはウェスチングハウスを切るしかない

電子雑誌「政経電論」第21号掲載
2017年03月10日
読了時間: 05分30秒

写真/Bloomberg

事業価値2兆円超の半導体を分社化し、債務超過の回避を図る東芝。ただ、この危機を招いている元凶はウェスチングハウス(WH)にほかならない。買収は失敗だったと綱川智社長自らが認めながらも、原発事業撤退には重い枷がある実状と、それを断ち、"WH切り"へと向かう道筋を追う。

WHは巨大なブラックホール

「数字で見る限り、非常に......。(WHの買収は)正しい判断とは言いにくい」

2月14日、2016年4~12月期に原子力事業で7125億円もの減損損失を計上し、債務超過に陥ったと発表した東芝の綱川智社長は、06年のWH買収の責任を問われ、こう言い切った。そこにはWHを買収・推進した当時の西田厚聡、佐々木則夫の歴代社長への言いようのない口惜しさがにじんでいた。

東芝を存亡の危機に立たせている元凶はWHにほかならない。今年3月末の債務超過を回避するため、東芝は虎の子の半導体(NANDフラッシュメモリー事業)の経営権を手放すことも辞さない構えだ。だが、これで膿はすべて出し切ったと見る市場関係者は皆無といっていいだろう。

東芝にとってWHは"巨大なブラックホール"と化している。15年3月期の2476億円の損失と合わせ、この2年間に1兆円近い巨費がWHに吸い込まれた。

「一般的な買収では瑕疵担保条項やプットオプションを付けることで、買収後に顕在化するリスクを回避するものだが、東芝のWH買収やその子会社のS&W買収ではその形跡がない。魑魅魍魎の原発マフィアに喰い物にされたのが実態だろう」(市場関係者)と指摘される。

さらに、海外の原発建設で追加の損失が発生する可能性も残っており、「兆円規模の原発建設では、わずかな誤算で数千億単位の損失リスクがある」(メガバンク幹部)と懸念されている。WHは東芝を死に至らしめる時限爆弾なようなものだ。

にわかに浮上し始めた"WH切り"

しかし、現状、東芝がWHを売却することは容易ではない。東芝はWHに対して7934億円の親会社保証を行っているためだ。この保証がある限り現状の原発建設は継続していかねばならない。

◇東芝の親会社保障 WHがアメリカで展開するAP1000原子炉プロジェクトにおいて、完工できなかった場合、東芝はWHの親会社として、客先である電力会社に違約金として7934億円を支払う義務がある。(2月14日の会見資料、「海外原子力 主要案件の状況について」より)

また、福島第一原発事故を契機に、世界的に原発の安全基準が強化されるなか、採算面からWH買収に手を上げる先が簡単に現れるとは思えない。一部では中国やロシアの原子力企業がWHに関心を寄せているとの情報もあるが、国家安全保障の観点から企業買収を審査するアメリカの外国投資委員会が共産圏の原発事業買収を承認する可能性は低い。

だが、仮に東芝がWHとの関係を清算すれば活路は広がることは事実だ。
「日立製作所、三菱重工業、東芝の3社は核燃料事業統合を検討しており、原子炉製造を含む原子力事業の統合も視野に入っている。いわゆる日の丸原発構想だが、その際のネックが日立は米GE、三菱重工は仏アレバ、東芝はWHという外資との提携関係だった。東芝がWHと手を切れば統合構想が動き出す余地が生まれる」(メガバンク幹部)と見られている。

その"WH切り"がにわかに浮上し始めた。「WHについて出資比率の引き下げに加え、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請についても選択肢として検討している」(東芝関係者)というのだ。この東芝関係者によると、東芝内部では、「5つのシナリオが検討されている」という。

綱川社長は原発事業撤退も示唆

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