古今東西 主なテロ組織

2015.3.10

社会

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近年台頭してきた「イスラム国」以外にも、過去現在含め世界を脅かしてきたテロ組織は数多い。連合赤軍、オウム真理教など日本のテロ組織をはじめ、アルカイダなどいまなお世界を脅かす国際テロ組織、新しい脅威などをまとめた。

あさま山荘事件の「連合赤軍」

1960年代後半に吹き荒れた学生運動のなかで、武力による共産主義革命を実行しようと考える、極めて左翼的な思想を持つ過激な極左集団がいくつも誕生。特に先鋭的だったのが中国の毛沢東主席の革命思想を奉る赤軍派(共産主義者同盟赤軍派)で、これが後に日本中を震撼させた連合赤軍の前身となった。

共産主義による世界制覇を夢想、日本をその司令塔にすべく国内での武装闘争を計画。将来的には、資本主義陣営の盟主・アメリカとの決戦「環太平洋決戦」に臨むという壮大な構想を描いた。「イスラム国」の発想と一脈通じるものがある。

1969年には山梨の山中で密かに軍事訓練を計画するが、警察が事前に察知し一斉検挙(大菩薩峠事件)。残ったメンバーは再起を図るべく、日本初のハイジャックとなった「よど号事件」を1970年に強行。また翌1971年には別の過激派組織「京浜安保共闘」と合体、「連合赤軍」を旗揚げした。

だが、あまりにも過激な思想と「総括」という名で仲間を次々に処刑していくという狂気に対し、ほかに理解を示す者などなく、孤立無援のなか、追いつめられたメンバーは1972年、長野・軽井沢の別荘に人質を取って立てこもり、機動隊と激しい銃撃戦を展開する「あさま山荘事件」を起こした。

警察側が鉄球をつけた重機で別荘を破壊する例の光景は当時テレビで生中継され、多くの日本人が釘付けとなった。結局メンバー全員が逮捕され組織は自然消滅。

女性がリーダーの国際テロ組織「日本赤軍」

赤軍派(連合赤軍の項を参照)の中で、活動の主軸を海外に移そうと考えたメンバーが分離し、1971年に結成した組織で、簡単に言うなら”海外版”赤軍派。重信房子と名乗る女性がリーダーだった点も当時としては衝撃的だった。

レバノンに居を構え、イスラエルや欧米へのテロを続ける極左集団PFLP(パレスチナ解放人民戦線)と連携、1972年のイスラエル、テルアビブ空港乱射事件や、1977年のバングラデシュ、ダッカ空港での日航機ハイジャック事件などを引き起こす。

ダッカ事件で日本赤軍は、収監中の仲間と人質との交換を迫ったが、当時の福田赳夫首相は「人命は地球よりも重い」として、彼らの要求に屈した。世に言う超法規的措置で、直後に福田は責任をとって首相を辞任。

組織はその後もテロを続けるが、冷戦終結で共産主義革命そのものが色あせ、支援する国家もなく存在感を急速に失っていく。メンバーも次々に逮捕され、1990年代後半には事実上組織が瓦解。2004年に、収監中の重信が正式に解散宣言を行った。

前代未聞の地下鉄サリン事件「オウム真理教

歴史上類を見ない、化学兵器による無差別テロを実行し、世界中を震撼させた狂信集団。麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚が1980年代後半に設立したこの組織、当初はヨガや仏教などをベースにした新興宗教団体で、難関大学の理工学部卒を中心に高学歴の人材を多数入信、幹部に据えたことでも知られる。

1990年、麻原をはじめ幹部多数が1990年の参院選に出馬するものの全員落選すると、これを日本政府の陰謀と決めつけ、武力による国家転覆の構想を加速。教団内には「大蔵省」「防衛省」といった部署を設置、”国家ごっこ”を実践する一方、ロシアから銃器やヘリコプターなどを密輸したり、サリンを量産したりなど武装化を強めていく。

その後、坂本弁護士一家をはじめとした数多くの殺人事件や、1994年の松本サリン事件、翌1995年の国松警察庁長官狙撃事件、そして同年には前代未聞の地下鉄サリン事件を実施。直後に麻原ほかメンバー多数が逮捕され、教団は瓦解するかに見えたが、その後「アレフ」と改名して存続。いまだに不気味な布教活動を展開しており、公安当局が警戒を続けている。

9・11の実行犯「アルカイダ」

9・11同時多発テロを実行した張本人で、イスラム教スンニ派系の狂信的集団。徹底した反米主義だが、組織トップのビンラディンはもともと親米派のゲリラとして1980年代にアフガニスタンに侵攻したソ連軍と戦っていた。

ソ連軍がアフガニスタンから撤退した1989年前後に、ビンラディンを中心に「アルカイダ」を結成。パレスチナやコソボなど各地の紛争地域に散らばり聖戦(ジハード)を続けていき、この世界的ネットワークが「国際テロ組織」とあだ名されるアルカイダの基盤となっていく。

1991年に湾岸戦争が勃発。アメリカを中心とした多国籍軍が彼の母国サウジアラビアに大挙押し寄せるとビンラディンは猛反発、反米を鮮明に掲げ武力闘争を展開する。1993年のニューヨーク世界貿易センタービル爆破事件を皮切りに、1998年のケニア、タンザニアのアメリカ大使館同時爆破事件、そして2001年の9・11とテロに拍車をかけていく。

これに対しアメリカは「自衛戦争」として、アルカイダを庇護するアフガニスタンのタリバン政権を全面攻撃、他のNATO加盟国も集団的自衛権を掲げてアメリカを後押しした。2011年にパキスタンに潜伏中だったビンラディンがアメリカの特殊部隊に捕捉・殺害されたことで、急速に組織は弱体化。ただし、アルカイダと共闘するイスラム系ゲリラが中東・アフリカでそれぞれ活動、一部は「イスラム国」とも連携してテロ活動を継続するなど、依然としてその存在感は衰えていない。

正体不明のハッカー集団「アノニマス」

ネット空間における自由を旗印に、これを侵害するすべての組織・集団を敵とみなし、サイバーテロを仕掛けるハッカー集団。組織名の「アノニマス」(「匿名」の意)からもわかるように、世界中のハッカー(足跡を一切漏らさずに相手のネットワークに侵入する者)やクラッカー(あからさまにネットワークに侵入し情報流出やウイルス攻撃を仕掛ける者)がサイバー空間で連携。

2010年にネット規制を決定したオーストラリア政府、そして2012年には違法ダウンロード規制を強化した日本に抗議する目的で、日本音楽著作権協会(JASRAC)や財務省、自民・民主両党などのサイトにサイバー攻撃を行なったとみられている。2015年には民主主義を否定する「イスラム国」にも宣戦布告するなど、存在感を増している。彼らの行為は、政治的な直接行動(Activism)とハッキングを合わせた造語「ハクティビズム」とも呼ばれる。

Twitterに公式アカウントを持ち、そこで抗議活動の宣言などを行うことも。

計り知れない過激性を持つバイオテロ

炭疽菌やエボラ出血熱、天然痘など致死率の極めて高いウイルスやリケッチア、細菌など微生物を使った無差別テロ。
1984年にアメリカに起こった、新興宗教団体主宰のバグワン・シュリ・ラジニーシによるサルモネラ菌を使った事件が最初といわれている。

2001年には同じくアメリカで、炭疽菌の入った郵便物をマスコミ各社や上院議員に送りつけ、5名が死亡するというテロ事件が発生。共和党の熱烈な支持者で、かつ狂信的なキリスト教原理主義者、ブルース・イビンズの犯行とされ逮捕されるが、イビンズはその後自殺。事件の背景については不明のままだ。

現代社会に対するテロ、ユナボマー

1978~1995年に全米を震撼させた連続爆弾テロ事件。大学(University)や航空会社(Airline)を主に標的にしたことからこれを略してこの名が冠せられた。金融機関なども標的にし、死者3名、負傷者約30名を出す。

犯人のセオドア・カジンスキーは数学に長けた天才だが、自然破壊を助長する現代文明を否定、自らも山に籠り自給自足生活を実践した。単独犯で組織性はない。なお彼は逮捕され現在も服役中。