尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!
Q.量的金融緩和とは何ですか?
A.とてつもなく、難しい質問です。というのも、簡単に説明することが難しいからです。市中にお金をたくさん供給することです。わかるかなぁ……。
その前に金融緩和、を理解しなければなりません。一言で言えば金融緩和とは中央銀行(日本は日本銀行、アメリカはFRB)が金利を下げることです。
どういうことをするかというと、日本でいえば日銀が民間銀行に金利を下げながらお金を貸します。金利を低く誘導すれば、銀行も低金利でお金を貸すことができます。例えば、日銀が金利0(現在はその状況)で民間銀行にお金を貸せば、民間銀行は0.1%でお金を貸しても、利ざや(この場合、0%で借りたので、0.1%儲かる)が稼げます。日銀が(民間銀行に貸す)金利を下げていくことを金融緩和と言います。その逆が金融引き締めです。
金利が安ければ、企業も個人もお金を借りるようになります。企業はそれを投資に回します。個人も住宅ローンなどを組んで消費に回します。理論的には金利を安くすれば景気を刺激します。
ただ、行き過ぎると投資ではなく、余ったお金で投機(低金利で借りて、高利回り<リスクも高い>の商品にお金を回す)に走る投資家がいて、それがバブルと言われるものです。
さて、量的緩和について、簡単に説明するのは本当に難しい。
ゼロ金利政策をとったらそれ以上金利を下げることはできません。それでも景気が回復しない、デフレが続く、となると量的緩和です。
市中にあるお金の”量”を増やすのです。理解しやすいように言います。日銀がお金を刷って金融機関にある国債などを買います。そして、マネーを使うように仕向けるのです。
お金の量が増えてお金の価値が下がり、インフレが起きるというわけです。行き過ぎると副作用が出る手法です。
Q.なぜ、米国の量的金融緩和の規模縮小観測で新興国通貨が急落するのですか?
A.あなただったら、金利が1%の銀行と2%の銀行があったらどちらにお金を預けますか? という話です。
金利は信用力によって決まるので、単純には言えませんけどね。信用力が高いから金利が低いのであって、金利が高いところに預けても潰れてしまっては元も子もありませんから。
量的緩和の規模縮小ということは、金融引き締めということで、金利は上がります。低利だったアメリカでお金を借りて、新興国で運用すれば儲かります(”利ざや<金利差>が抜ける”という)。しかし、アメリカの金利が上がって新興国との金利差が縮まれば、その分のマネーもアメリカに戻ってきます。簡単に言うと、新興国通貨を換金して、米ドルを買う、ということです。ですから新興国通貨が米ドルに対して急落するのです。
米ドルは世界の基軸通貨ですから米ドルに対して下がれば、新興国通貨が下がったということになります。
わかりましたか?(佐藤尊徳)
[参考:2014年5月9日 日経新聞21面「新興5ヵ国通貨上昇」]