公費5000万円で後援会員を接待? 首相主催「桜を見る会」、批判殺到で来年中止も疑惑はいずれ解明

2019年4月13日 安倍首相主催「桜を見る会」 写真:ロイター/アフロ

政治

公費5000万円で後援会員を接待? 首相主催「桜を見る会」、批判殺到で来年中止も疑惑はいずれ解明

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閣僚の辞任が続く安倍政権にまたもや打撃だ。首相が毎年4月に各界の著名人などを集めて開く「桜を見る会」をめぐり、安倍晋三首相が地元の後援会員などを多数、招待していた疑惑が判明。“私物化”との批判を受けて政府は11月13日、来年は同会の開催を見送ると発表した。政権はこれで幕引きを図りたい考えだが、野党は徹底追求の構えを見せている。

「桜を見る会」の元は皇室主催の「観桜会」

「桜を見る会」は、首相主催で毎年4月中旬に新宿御苑で開催する公的行事。政府が“各界において功績、功労のあった方々”を招待し、八重桜を鑑賞しながら食事やお酒を楽しんでもらう。今年も焼き鳥やちらし寿司が振る舞われ、記念品の枡が配られたという。入場料は無料で、今年の出席者は約1万8000人。首相が芸能人やスポーツ選手と触れ合う場面は毎年テレビでも報道されるので、目にしたことのある方も多いだろう。

元をたどれば、戦前に皇室主催で行われていた「観桜会(かんおうかい)」が前身。1952年に吉田茂首相が「観桜会」を復活させる形で首相主催として「桜を見る会」を始めたのだという。大震災が起こった年などを除き、原則毎年開催されている。ちなみに皇室行事としては1953年から天皇、皇后両陛下主催の「園遊会」があり、現在は春と秋の2回、赤坂御苑で開催されている。

野党が指摘する3つの疑惑

今回、国会で野党が問題視した点は大きく分けて3つある。

1点目は当初、1万人程度だった招待客の数が年々増え、かかる経費もどんどん膨れ上がっているということ。出席者数は2010年の民主党政権時に1万人、第2次安倍政権発足直後の2013年で1万2000人だったが、そこから毎年1000人規模で増え、2018年は1万7500人、今年は1万8200人まで膨らんだ。

しかも予算は毎年1766万円程度しか計上していないにもかかわらず、例年予算額を大幅に超過。今年は5500万円以上の経費を支出した。国会で認められた予算を毎年超過することが常態化し、しかも3000万円近く上回るというのは問題視されても仕方ない。

2点目は首相をはじめとする政治家に「招待枠」があり、結果的に地元有権者への利益供与になっているのではないかという疑惑だ。

「桜を見る会」の招待基準には、

  1. 皇族、元皇族
  2. 各国大使等
  3. 衆参両院議長及び副議長
  4. 最高裁判所長官
  5. 国務大臣
  6. 副大臣及び大臣政務官
  7. 国会議員
  8. 認証官
  9. 事務次官等及び局長等の一部
  10. 都道府県の知事及び議会の議長等の一部
  11. その他各界の代表者等

――と記されている。しかし、この[11]のその他各界の代表者等が拡大解釈され、芸能人やスポーツ選手が多数、招かれているほか、政治家が自らの支援者を多数、招待しているという。一般の与党議員は「4人」、閣僚は「10~40人」といった招待枠があるとされ、「首相が後援会員を約850人招いていた」との指摘もある。

首相は国会で「取りまとめには関与していない」と答弁したが、首相の地元事務所が後援会員に「桜を見る会」を含む観光コースへの参加を募っていた文書の存在が発覚。そこには「18歳以上の方、全員にお送りしています」と書かれており、招待基準にある「各界の代表者」とは関係なく誰でも参加できるように見える。また、観光コースは首相も出席する夕食会もセットとなっており、首相が後援会員の招待を知らなかったという説明も不自然だ。

実際に政府は11月13日になって、野党各党の会合で首相の事務所が招待客の推薦にかかわっていたことを“白状”。菅義偉官房長官も与党議員の推薦枠の存在を認めた。仮に政治家が後援会員を招いていたのだとすれば有権者を公費で接待していたこととなり、公職選挙法の寄付禁止に触れる可能性がある。公選法違反とまでは言わないとしても、国の税金を使って有権者に無料で飲食を提供するというのは明らかに問題がある。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、「議員が選挙区の皆さんに配慮するのは当然のことだ」と述べ、質問した記者に「何か問題あるか」と詰め寄ったが、その感覚こそが問われるべきだろう。与党内にも「やりすぎだ」との声があるほどだ。

政府に「無い」名簿が文科省には保存されていた

3つ目の問題は政府が招待客名簿を破棄したと説明していることだ。菅官房長官は野党の求めに対し、今年分の名簿をすでに破棄したと強調。「すべて保存すれば個人情報を含んだ膨大な文書を適切に管理する必要が生じる。保存期間1年未満の文書として遅滞なく破棄する取扱いとしている」と話したが、翌年の招待客を決めるにあたって、前年の名簿が無いということがあるだろうか? 見られると困る内容だからこそ、早め早めに処分して隠してしまおうという意図が見え隠れする。

安倍政権では自衛隊のイラク日報や森友学園問題の関連文書など、過去にも「無い」と説明していた文書が後から見つかった例がある。今回も、すでに文部科学省で過去の推薦者名簿が保存されていることが明らかになっている。今後、全体の招待客名簿が見つかる可能性もある。

菅官房長官は来年の開催を見送るとともに、招待基準の明確化や手続きの透明化、予算や規模の全般的な見直しをすると表明した。法律に抵触する可能性のあることだけに、いったんリセットすることでうやむやにするのではなく、これまでの経緯もしっかり検証すべきである。