目指すはCO2排出量90%減! HINOのハイブリッドはAIを駆使して実現
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目指すはCO2排出量90%減! HINOのハイブリッドはAIを駆使して実現

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日野自動車はハイブリッド車のトラックである「日野プロフィア ハイブリッド」を6月から発売。大型トラックにはEVどころかハイブリッドシステムすら不向きという常識を覆している。

大型トラックでリッター4.75キロを実現

トラックは高速道路を利用する機会が多いが、定速走行が中心で発進・停止の頻度が少なく、回生ブレーキをする機会が少ないため、ハイブリッドには向いていないとされてきた。また、トラックの重量は、車体のサイズにもよるが軽く10トンを超えるため、燃費が悪くなるのは必然でハイブリッドシステムを搭載するには高いハードルがあった。

「世界的にCO2削減が求められていますが、日野としてもそういった状況を考慮して『ディーゼルとモーターのハイブリッド』の開発を進めてきました」と話すのは日野自動車の製品開発部国内・海外HV担当の古今惇也氏。

日野は2017年10月に「日野環境チャレンジ2050」を策定し、第1段階の「チャレンジ1」では製品走行時のCO2排出量を2050年に2013年と比べて90%削減を掲げている。事実、日野自動車として、CO2排出量の約7割はトラックから来ており、燃費を良くすることは目標達成のためには避けられないことだった。

古今氏は「開発は3年~4年にわたりました」と語ったが、航続距離や積載能力、使い勝手などはこれまでのディーゼルとほぼ同じで、CO2削減や燃費を向上させたトラックの販売にこぎつけた。1リットルあたり4.75キロというのは大型トラックではかなり優れた数字だ。

日野自動車「日野プロフィア ハイブリッド」@東京モーターショー2019

AIは燃費だけでなく、安全性能の向上にも寄与

ハイブリッドにしたからといって自動的に燃費が良くなるわけではない。ポイントは人工知能(AI)だ。GPSによって現在位置を把握し、内蔵されている全国の主要な道路の情報から、進路の勾配情報をリアルタイムに構築する。その情報を基にAIがバッテリー使用の概略シナリオを自ら作成。そして10キロ毎に細かく予測の補正を続け、燃費効果をサポートするためのバッテリー制御を行う。

例えば、平地をモーターで、定速で走っているとする。AIは数キロ先に上り坂があることを把握し、上り坂に入るとエンジン動力とモーターの両方で走行していく。走っている間も補正を繰り返し、ちょっと先に下り坂が来ることを認識する。

下り坂に入ると、人は加速しすぎないようにブレーキを踏むが、25トンの重さを生かして減速時のエネルギーを電力に変換してバッテリーに充電していく。再び平地に来たらモーターで定速走行に戻るというものだ。山が多い日本は高速道路でも勾配のある区間が続くことをうまく利用した。

また、冷凍トラックにおいては大型バッテリーを利用して冷凍することが可能で、アイドリングや低速走行でも冷凍能力が維持されるほか、エンジンを停止したときでも一定の時間であればバッテリーでコンプレッサーを動かすことで冷凍・冷蔵を維持することができるようになっている。ディーゼルエンジンを作動させなければCO2の削減ができるという算段だ。

GPSを利用すると自社のトラックの現在地が把握できるシステム「HINO CONNECT」も開発。車両のデータから省燃費運転の診断レポートを作成する「エコツリーレポート」も閲覧可能。

事故を回避しドライバーの疲労を軽減

AIを搭載しているということは、トラックの安全システムの導入、向上にもつながっている。ブレーキシステムは、追突する可能性があると判断した場合、システムが音とディスプレーでドライバーにブレーキを促す。眠り運転などで、もしブレーキがかからなかった場合は自動ブレーキが働くようにしている。

同じように、人が前方にいると認知した場合もブレーキシステムが作動する。ほかにも車内センサーでドライバーの顔の状態を認識し、まぶたが閉じて居眠りをしていたりすると警報音を流すというのもある。「スキャニングクルーズ」というのは、ハンドルで車速を設定して一定の速度での走行を可能にする。そして、先行車が自分のスピードより遅くぶつかりそうになるのを防ぐため、車間距離を自動的にコントロールするという機能もある。

このようにAIの能力を有効利用するとCO2の削減のみならず、事故の回避、ドライバーの疲労軽減にもつながるシステムだ。