安倍晋三首相と自民党の岸田文雄政調会長は3月18日夜、東京都内のホテルで会食し、4月にまとめる緊急経済対策などを巡って意見交換した。岸田氏はこれに先立つ3月16日の記者会見で、新型コロナウィルス感染拡大に対処する今回の緊急経済対策について、政府が昨年末に決めた事業規模約26兆円の経済対策に比べ「はるかに超える規模が求められている」と強調。「支援が直接、国民の手に届く施策が求められている」とも語り、全ての国民の支援が行き渡る現金給付を示唆した。また、公明党の石田祝稔政調会長も18日の記者会見で現金給付を検討課題の一つに上げ、「ばらまきといわれようと、明るい希望が持てる政策は必要だ。思い切ったやる必要がある」と前向きな姿勢を示した。
“ばらまき”というと全国民への直接給付が想定されるが、その予算はいったいどこから捻出されるのだろうか。
リーマン・ショックを超える現金給付か
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大はWHO(世界保健機構)が「パンデミック」と認定しており、日本経済への影響はリーマン・ショックを超えると予想されている。緊急経済対策もその規模感を持って臨むということになる。
リーマン・ショック直後の2009年に政府は、全国民に1人当たり1万2000円を支給し、65歳以上と18歳以下に8000円を上乗せした。今回の緊急経済対策では新型コロナで影響を大きく影響を受けた子育て世帯などを中心に、これを上回る直接支援が想定されている。
給付金の財源は?
問題は、その財源であるが、「新年度早々に補正予算が編成されて、これだけに規模の給付金が支給されることになると、財源は赤字国債の発行しかない」(中央官庁幹部)と指摘される。政府はリーマン・ショック時にも大型経済対策を相次いで打ち出したが、「その時には補正予算の都度7兆円、11兆円、9兆円の国債発行が行われました。当時は財政投融資特別会計の積立金も数兆円規模で取り崩しました。今回も赤字国債の発行で財源は賄われると思われます」(同)という。
緊急を要する対策であるものの、これほどの規模になると財政を預かる財務省は赤字国債の発行に難色を示すと思われるが、財務省は予想外にすんなりと受け入れるのではないかと筆者はみている。それは今回の緊急経済対策で自民党の若手議員や有力野党から出されている“消費税の減税措置”と比べれば、赤字国債の発行は格段に“筋がいい施策”と思われるからである。消費税を封印するバーターであれば赤字国債の発行はいとわないとなろう。
しかも、日銀が大規模な金融緩和で大量の国債を買い上げ、金利が無きに等しい現状の市場環境であれば赤字国債の発行も容易である。一方、日銀にとっても買い入れる国債の量が確保できるという点においてウェルカム。間接的ながら緊急経済対策の財源は日銀が国債を買うことで賄われるという構図だ。最後は“日銀頼み”ということであろう。