最近、海外では飲みの場で“お酒を飲まない”ことを選択する人が増えている。業界大手のアサヒビールは、この動向をいち早く察知し、数年前よりお酒を飲まない人、あえて飲まない人に向けた商品開発をスタート。そして、ビール好きも満足する“微アルコール飲料”「アサヒ ビアリー」を完成させた。アルコール度数はわずか0.5%。しかし、味わいはビールそのもの。「スマートドリンキング」の考えの中で生み出された画期的な商品の背景に迫る。
世界の飲酒に対する考え方の変化
近年、飲酒に対する考え方が変わりつつある。アメリカの若者を中心に脱アルコールを目指す人々が増え、彼らは「ソバーキュリアス(Sober Curious)」と呼ばれている。脱アルとはいうが、アルコールを一切絶つ断酒といった厳しいものではなく、環境や状況に応じて「飲む・少しだけ飲む・あえて飲まない」を、そのときの自分の体調や気持ちに沿って選択するものだ。
ソバーキュリアスが広まったきっかけは、イギリス発の「ドライ・ジャニュアリー(Dry January)」といわれている。何かとお酒を飲む機会が多い12月。飲みすぎで負担をかけた体をメンテナンスするために、翌1月の1カ月間だけ禁酒するというもの。これを1カ月に限定せず、長期間にわたって、その都度、柔軟に“飲む・飲まない”を選択していくのがソバーキュリアスだ。
このようなムーブメントのほかに、不適切な飲酒を撲滅する世界的な取り組みも始まっている。不適切な飲酒とは、個人の健康や社会への悪影響など、公衆衛生に影響を及ぼすアルコールの使用を指し、2010年には世界保健機関(WHO)の総会にて「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択、2014年には日本で「アルコール健康障害対策基本法」が施行、2015年には国連の持続可能な開発目標(SDGs)の健康分野において「アルコールの有害な摂取の防止の強化」が目標のひとつとして明記された。
業界大手のアサヒビールもこの課題に対応するため、世界の大手酒類メーカーが加盟する、責任ある飲酒国際同盟(IARD)が発表した5つの「プロデューサーズ・コミットメント」(※)の実現に向けて、取り組みを強化してきた。
※未成年者の飲酒防止/マーケティング実施基準の強化と拡大/消費者への情報提供と責任ある製品イノベーション/飲酒運転の防止/不適切な飲酒防止のための小売業者との協業
不適切な飲酒を撲滅「スマートドリンキング」宣言
そして2020年12月、アサヒビールは「スマートドリンキング宣言」を発表。「スマートドリンキング」は不適切な飲酒を撲滅し、さまざまな人々の状況や場面おける“飲み方”の選択肢を拡大し、多様性を受容できる社会を実現すること、としている。
具体的な取り組みとしては、アサヒビールから販売する主なアルコール商品に含まれる「純アルコールグラム量」を、2021年6月までに同社ホームページにて開示。将来的には、容器へ表示することも検討している。
現在、容器には「アルコール度数」が表示されているが、これは100ml中に含まれるアルコールの濃度を示したもの。例えば、アルコール度数5%のビールの場合、100ml中に5mlのアルコールが含まれているということだ。しかし、これを基準に飲酒しても、飲んだ量や“チャンポン”にしてしまうと、どれだけのアルコール量を摂取したか把握しにくい。
一方、「純アルコールグラム量」は、比重も考慮され、以下の計算式で算出される。
(お酒の量[ml])×(アルコール度数[%])×0.8(比重)=(純アルコール量[g])
この計算に基づくと、アルコール度数5%のビール500ml缶には、20gの純アルコールグラム量が含まれていることになる。
この純アルコールグラム量を基準とした飲酒量の表示方法は、多くの国で採用されている。単位は「ドリンク」で、日本では純アルコールグラム量10g=1ドリンクと設定。厚生労働省が示す一日の適切な飲酒量は2ドリンクで、日本酒(アルコール度数15%)1合、焼酎(25%)約110ml、ウイスキー(43%)ダブル1杯、ワイン(14%)約180mlに相当する。このように、純アルコールグラム量を目安にすると、普段の飲酒量が管理しやすくなるといったメリットがある。
度数0.5%の“微アルコール”飲料「アサヒ ビアリー」
さらにアサヒビールは、「スマートドリンキング」の一環として、2025年までにビール類、RTD(缶容器のチューハイやカクテル、ハイボールなどのアルコール飲料)、ノンアルコールの販売合計に占めるアルコール度数3.5%以下の商品の割合を20%(2019年比で3倍強)にすることを目指す。
また、度数1%未満の、アルコールがわずかに含まれる商品を“微アルコール”として新カテゴリーに位置付け。第1弾となるのが、アルコール度数0.5%のビールテイスト飲料「アサヒ ビアリー」だ。
「アサヒ ビアリー」は、100%ビール由来の原料を使用して作られており、アルコール度数0.5%という“微アルコール”でありながら、麦のうまみとコクを感じられるのが特徴。「ビール類は好きだけどノンアルコールビールの味や飲みごたえに物足りなさを感じる」「シーンで飲み分けしたいがこれといった商品がなかった」「程よいアルコール量で心地よい時間を過ごしたいがどれもアルコール量が多い」といった、今までのアルコール・ノンアル商品では十分に満たされなかったニーズにも応えられる、画期的な商品となっている。
“微アル”「アサヒ ビアリー」とノンアル「アサヒドライゼロ」の比較
ビールテイスト飲料としては近しい存在の微アルコール「アサヒ ビアリー」とノンアルコール「アサヒドライゼロ」だが、2つは似て非なるもの。その違いを[製法][味わい][飲料シーン]の項目別で以下に挙げた。
【製法】
- ビアリー:本格的なオリジナルベースビールを醸造後、独自の蒸溜技術を活用して、発酵由来によるビール特有の香気成分を残しながらアルコール分だけを抜き取っている。
- ドライゼロ:調合技術により、“もっともビールに近い味”を実現、その味わいが支持され、ノンアルコールビール市場ナンバーワン・ブランドを確立。
【味わい】
- ビアリー:香り豊かでコク深く、ボディ感のある味わい。100%ビール由来原料ならではの麦のうまみが感じられる。また、きめ細かいクリーミーな泡立ちも楽しめる。
- ドライゼロ:ドライな喉ごしとビールらしい飲みごたえ。和洋折衷、どのような食事にも合うすっきりとした味わい。
【飲用シーン】
- ビアリー:少しだけ気分を上げたい、気分を切り替えたいときに最適。微量とはいえアルコールが含まれているので運転などを控えているときは推奨しない。
- ドライゼロ:アルコール度数0.00%なので、アルコールを摂取できないとき、休肝日でもビールのようなものを飲みたいときに幅広く愛飲されている。
飲む人も、飲まない人も、飲む時間を共に楽しめる時代に
少し前までは、人が集まる場でお酒をすすめられると周囲の空気を気にして断れなかった……という人はたくさんいただろう。しかし、アルハラ(アルコール・ハラスメント)という言葉があるように、今はお酒が飲めない、飲みたくないという人に無理にお酒をすすめることは良くないことだと認識される世の中になった。多様性が浸透した今となっては、飲む・飲まないが付き合いの良さや礼儀の判断基準とされる社会通念がいかに前時代的だったかがわかる。
飲む・飲まないは自分軸で選んでいいのだ。アサヒビール代表取締役社長・塩澤賢一氏は言う。
「アサヒビールはこれまで、お酒が好きで飲める方を中心に商品を提供してまいりましたが、数年前から“飲み方の多様性”、“飲める人も飲まない人もお互いに尊重し合える社会の実現”を目指し、『アサヒ ビアリー』の開発をスタートさせ、発売に至りました。今後もお酒が飲めない方、あえて飲まない方も、ご自分のペースでご満足いただける新たな商品の開発、新市場の創出をしていきたいと考えています」
ドラゴンフルーツ伯爵
0.5パーってアルコール感じるんかな??
2021.1.29 15:56