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どっちが早い? 外資による土地買収リスクvs.法整備

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近年、北海道のリゾート地や空港、自衛隊記事周辺で中国資本による土地の“爆買い”が進んでおり、安全保障上の懸念が広がっている。これまで日本には、外国人による土地購入を規制する法律はなかったからだ。そのようななか、政府はようやくこの問題に本腰を入れ、外資による土地買収に規制をかける調整を進め始めた。果たして安保が脅かされる前に、法整備によってリスクを回避できるか――。

外国資本に買収される国境離島の土地

中国資本による北海道の土地買収に注目が集まっているが、 なにもこれは北海道だけに限られるものではない。本州でも長野県など日本有数の貴重な森林や水源を持つ都道府県でも同じような動きが見られ、国境離島はもっと大きな問題となっている。

たとえば韓国との国境の島、対馬では、近年韓国資本による土地や建物の購入が増えている。対馬と韓国・釜山は距離として50キロほどしか離れておらず、対馬の展望台からは天気がよければ肉眼で朝鮮半島が見え、気軽に行ける日本として対馬を訪れる韓国人が大幅に増えている。

長崎県の五島列島、新潟県の佐渡島、鹿児島県の奄美大島、また、沖縄離島など国境の島々でも同じような現象が見られ、今後は小笠原諸島が大きな問題になることが懸念される。なぜなら、中国は第一列島線(日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海を結ぶ線)を超え、第二列島線 (小笠原諸島からグアムを結ぶ線)に出ることを戦略上重視し、長期的には西太平洋での影響力拡大を狙っているからだ。

ようやく法整備に着手するが…

そのようななか、日本政府もようやく本腰を入れつつある。自民党は2021年2月、自衛隊基地や原子力発電所など安全保障上重要な施設周辺における外国企業や外国人による土地買収の規制を強化する法案を了承した。

同法案は、自衛隊基地や米軍基地、原子力発電所などの周辺1キロ地域を「注視区域」、自衛隊の司令部や国境離島など特に重要とされる地域を「特別注視区域」に指定し、国は安全保障上の懸念から必要があれば、土地建物の所有者や賃借者の名前や住所、国籍や使用状況などについて調査し、使用停止を命じることができ、従わない場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が課される。

また、土地の所有権を移す際、名前や使用目的を事前に届け出することが義務づけられる。しかし、現在、菅首相も今国会で同法案を成立させる意欲を示しているが、公明党が国民の財産権や自由な経済活動に制約を課すことになるとして難色を示しており、閣議決定が先送りされる状況となっている。

今日、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。米中対立の激化に代表されるように、武力行使を明記した海警法の成立、中国の軍事力増強、北朝鮮の核ミサイルなど、日本は難題に直面している。そして、紛争の舞台は従来の陸、海、空だけでなく、サイバー空間や宇宙、ハイテク技術など多岐に渡り、経済安全保障の重要性も相まって、安全保障上のリスクというものはわれわれの日常生活により密着化したものに変化しつつある。前述の土地や不動産をめぐる動向もその一つだ。

先進民主主義国家である日本においては、外国企業や外国人による土地購入にも最大限の自由や権利が与えられるべきである。だが、それが国の安全保障に何らかの影響を及ぼす場合には一定の規制が必要であろう。

日本を取り巻く今日の安全保障情勢を総合的にかんがみれば、自衛隊基地や米軍施設、原発付近などにおいて、軍事情報など機密事項が通信傍受などによって漏洩されたり、ドローンによるテロ攻撃に遭ったりすることは必ず避けなければならない。

諸外国ではどのように規制しているか

日本と同じ民主主義国家では、外国資本による土地買収に一定の規制がかけられている。例えば、アメリカでは軍事施設周辺の土地利用には規制がかけられ、外国企業による不動産投資には厳格な審査がある。

また、オーストラリアでは国防上必要となれば私有地を収用することが可能であり、韓国でも軍事施設周辺における建物建設においては防衛当局との協議が必要となる。

一方、基本的に土地所有権を国家が持っている中国では、2010年に施行された国防動員法 により、有事の際などでは国民の所有物を必要に応じて政府の管理化に置くことが可能となっている。

確かに、日本にも1925年に施行された外国人土地法 という法律がある。同法は、政令で外国資本や外国人の土地購入を制限できると明記しているが、その政令は終戦直後に廃止された。それ以降、法律は存在するものの実効性を失っている状態にあって全く規制がかかっておらず、 外国人が自由に土地や建物を購入できる状況が続いている。今の状況を放置しておくと、長期的には日本の安全保障を脅かす恐れがある。アメリカやオーストラリアなど同じ民主主義国家が実施しているような規制を、日本も早急に導入する必要があろう。