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長引くウクライナ侵攻で舵取りが難しくなる中国

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深まるロシアの孤立

ロシアによるウクライナ侵攻から10カ月が過ぎようとするなか、プーチン大統領が当初描いていたウクライナ首都キーウの掌握、それに続くゼレンスキー政権の崩壊、そして親ロシア的な傀儡政権の樹立という“ロシアンドリーム”は、すでにフィクションと化している。

欧米が対露制裁を強化するだけでなく、ウクライナへ積極的に軍事支援を行ったことにより、ウクライナ軍が善戦し、ロシア軍の劣勢が顕著になっている。昨今、プーチン大統領が国民の部分的動員を発令し、東部4州のロシアへの併合を急いで行ったことは、ロシアの劣勢を裏づけるものだ。

侵攻当初の1カ月、ウクライナ軍が何とか持ちこたえ、その間に欧米が軍事支援を行ったことがロシア軍の劣勢を決定づける大きな要因となった。プーチン大統領は劣勢に立たされており、一層孤立している。

対米姿勢でわかる明確な中国とロシアの違い

一方、昨今の国際関係に難しい立場に追いやられているのはプーチン大統領だけではない。中国の習近平国家主席も複雑な国際情勢のなか、頭を悩ませているように感じる。

ウクライナ侵攻以降、中国はロシアを一回も非難することなく、制裁も回避するどころか、経済的にはロシアとエネルギー上の結び付きを強化し、安全保障的には日本周辺で中露の合同軍事演習を活発化させてきた。しかし、ロシアをめぐる緊張が長期化するにつれ、中国も国際社会から“中国はいつまでもロシアと肩を並べる”という圧力を感じるようになり、遂にはロシアと一定の距離を置く姿勢を示唆した。9月中旬、ウズベキスタンでの中露会談の際、プーチン大統領が習国家主席に「中国が抱く懸念や不満は理解する」と述べたことは、その左証と言えよう。

今日の国際関係で、中国とロシアが異にするのは、一つに“グローバルな大国としての野心を持っているかどうか”、もっと言えば“アメリカを戦略的競争相手と位置づけているかどうか”にある。

今のプーチン大統領の脳裏に、“グローバルな影響力を持つ大国ロシア”、“アメリカとの戦略的競争”という概念があるかというと、それは疑わしい。しかし、習国家主席は、“一帯一路によって大国中国の対外的影響力を拡大させる”“政治的、経済的にアメリカに対峙する”というビジョンを抱いており、アメリカを本気で競争相手と位置づけている。よって、中国としては欧米やロシアだけでなく、他の国々の動向にも配慮する必要があり、そういった国々がウクライナ戦争をどのようにとらえているかも十分に察知する必要があるのだ。

中国は中小国・途上国にも気を配る必要あり

今日、欧米や中国、ロシアなど一部の大国を除くと、多くの中小国、途上国は沈黙を守っている……というか、困惑している。9月の国連総会でも、アフリカ連合のサル議長(現セネガル大統領)がウクライナ情勢などの大国間対立に言及し、「アフリカは新たな冷戦の温床になりたくない」との意思を示し、インドネシアのルトノ外相も「東南アジアを冷戦の駒にするべきではない」と発言した。インドネシアのジョコ大統領も、ロシアを孤立させるのは良くないとして秋のG20にプーチン大統領を招待する意向を示している。

また、カンボジアやラオス、ミャンマー、パキスタンやスリランカなど世界には長年、中国から莫大な経済支援を受ける国々が少なくなく、そういった国々は中国がロシアを非難、制裁しないなかではそれに異論は唱えられないという政治的事情もあるが、中国としてはこういった中小国、途上国がウクライナ戦争における中国の立場をどうとらえているかということにも耳を傾ける必要がある。

欧米陣営は虎視眈々と隙を狙っている

仮に、この問題で中国と中国支援国の政治的立場で乖離が強まることになれば、欧米陣営がそこを突くように中国支援国へ経済的支援を強化し、一部の国が中国寄りから欧米寄りへ舵を切る可能性もある。アメリカ・日本・オーストラリア・インドで構成されるクアッド(Quad)、そして先進7カ国は今年、中国の一帯一路へ対抗する措置としてそれぞれ多額の途上国支援策を打ち出した。対外的影響力の拡大を狙う中国は、中小国、途上国が欧米主導の支援策を優先するようになることを常に警戒している。

近年、中国は新型コロナウイルスの真相解明やウイグルや香港の人権問題、台湾有事などをめぐって欧米との対立が先鋭化しているが、それにロシアによるウクライナ侵攻が重なり、中国にとってはより国際関係の舵取りが難しくなっている。

中国にとって対米でロシアは戦略的共闘相手として重要で、今後ともロシアとの関係は維持したい。しかし、プーチン大統領が一線を越えた行動に出始めたことで、今日中国としてもイメージ悪化を避けるため、ロシアとの距離を置かざるを得ない状況になっている。アメリカは対中国でも対ロシアでも姿勢は首尾一貫しているが、中国は欧米、ロシア、そして中小国、途上国というなかでアメリカより難しい立場にあると言えよう。