日産の革新性を象徴するEVオープンコンセプトカー「Max-Out」(マックスアウト)

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日産、2030年までのEV化とソフトウェアの内製化をさらに加速

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自動車市場の電動化に拍車がかかっている。日産自動車は2月末、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において、電動化の歩みを当初の計画よりも加速させると発表。アシュワニ・グプタCOOは今後、電動化対応への2兆円の投資のなかで、電動車ラインナップの拡充や内製ソフトウェアの拡大などを進めるという戦略を打ち出した。自動車電動化の最新動向を探る。

2030年にEV19車種を含む27種の電動車販売に上方修正

世界の自動車市場は、100年に一度の変革期と言われている。その理由はいろいろあるが、わかりやすい例を挙げれば、ガソリンを燃やすことによる二酸化炭素の排出を減らし地球温暖化を防ぐというのがあり、次世代パワートレインへの交代が必要となっている。各国の基本方針は、化石燃料を燃やして駆動する内燃機関(ICE)からEVへのシフトだ。

日産は、世界初の量産EVである「リーフ」に象徴されるようにEVと独自のハイブリッド技術である「e-POWER」の2つを軸に電動化を進めている。「Nissan Ambition 2030」が発表された2021年11月時点では、2030年までに15車種のEVを含む23車種の電動車を計画していたが、2月27日の発表では、19車種のEVを含む27車種の電動車を販売すると上方修正。また、販売比率も50%から55%に引き上げるなど内容をブラッシュアップさせている。

EVオープンコンセプトカー「Max-Out」

とはいえ、国・地域によって電動化の歩みは異なるため、市場に応じた戦略が必要となる。日本においては「アリア」、「サクラ」、「ノート」と国内メーカー最多となる3車種の強力な商品ラインナップを駆使して市場をリードする。EVシフトが急速に進むヨーロッパ市場は、2026年までにカーラインアップを100%電動化。アメリカは、2022年8月に成立したインフレ抑制法(IRA)が自動車業界に大きなインパクトを与えており、まずは同法の要件を満たす方策を策定させる。中国市場では、中国専用のバッテリー式電気自動車(BEV、100%電気で走る自動車)のSUVを2024年に投入する計画だ。それ以外の市場を見ると、例えば、メキシコ、南米、エジプトなどの発展途上国では、電気の供給網が確立しきれていないためe-POWERの投入を推進するなど柔軟に対応していく。

欧州初となるe-POWERを搭載したクロスオーバーSUV新型「キャシュカイ」。2022年にイギリスで販売台数1位を獲得

モーターなどをモジュール化してコスト削減

EVは、エンジン車と比べて車両価格が高額であることから、コスト削減が課題となっている。そこで日産は、EVとe-POWERの間で使用される、「モーター」「インバーター」「ギア」というコア部品を共用しながらモジュール化して、生産効率の向上を狙う。EVでは、この3つをモジュール化した「3-in-1」、e-POWERでは3-in-1に発電機と増速機を統合した「5-in-1」の試作ユニットを公開した。これにより、2019年比で30%のコスト削減を実現し、特にe-POWERにおいては、2026年までにエンジン車とほぼ同じ値段で販売することを目指す。カーオーナーが電動車を購入しようとするとき、補助金を気にするところがあったが、互換性を高めた結果、補助金を気にしなくてもいいほど価格競争力が高まるのは間違いない。

モジュール化した試作パワーユニット。EV用「3-in-1」とe-POWER用「5-in-1

EVを動かすには、バッテリーも重要だ。引き続き性能向上やコスト削減を目指し、液体リチウムイオンバッテリーの開発を進める一方で、全固体電池にも投資し、2028年ごろに市場に投入したい考えだ。ウクライナ戦争の影響などによる資材価格高騰で、バッテリーを作るコストが上がりかねないが、開発を続け、レアメタルの使用量の削減や販売数を増やすことなどで、リチウムイオンは1kWhあたり~75ドル、全固体電池も1kWhあたり~65ドルにまで製造コストを下げる。

全固体電池の搭載イメージ

“つながるクルマ”で、車両の最適化と乗っていて楽しい車を実現

さらに、新しい自動車の潮流としてコネクテッドカーというのがある。わかりやすく言えば無線通信(OTA)を使って、ネットと常につながっている自動車のことだ。日産では、すでに「日産コネクト」という会員向けサービスを展開し、動画やオンラインゲームを楽しんだり、自動車が盗まれそうになるのを検知し通知したりする機能、あおり運転を受けたとき、専用サポートを使えば警察と連動するなどの各種サービスの提供している。

このように、将来はモーターやバッテリーなどのハードウェア性能ではなく、ソフトウェアによって自動車の特徴や機能が決まる自動車のことを「ソフトウエア定義車両(SDV)」と呼ばれ、これが未来の自動車選びの中心になるといわれている。航続距離や充電時間といった要素に加え、ソフトウェアを通じてどんなサービスが提供されるのかというのが自動車販売の大きなカギとなるのだ。

すでに自動運転支援技術、カーナビ地図のアップデート、アンドロイドスマホとカーナビを連動させる「ワイヤレスアンドロイドオート」といったサービスが始まっている。自動運転やエンジンの制御などに多くのソフトウェアが使われているが、今後は、スマホのOSをバージョンアップするかのようにシステムのアップデートや車両診断など、各種サービスについて希望するものを購入することが可能にする。

自動車メーカーは一般的に自動車を販売した後、一部のカーオーナーとは車検・点検、修理、自動車保険などでのつながりがあるものの、次の乗換えまでは顧客との接点があまりないビジネスモデルだ。しかし、ソフトウェアを通じた新しいサービスの販売は顧客とのつながりを維持でき、かつ新しい収益源になるポテンシャルを持つ。つまり、経営もより安定し、新しい技術がより生まれやすくなるのだ。

中長期的には、次世代パワートレインがいずれ全世界に行き渡たる。そんな環境下ではSDVこそが差別化を図る要因となる。日産はそんな世界を想定して、2025年からはすべての新型車において100%内製で開発を行い、ソフトウェアだけで4000人もの開発者が従事するとしている。