北海道や神奈川県、大阪府など9道府県の知事選、札幌や静岡、大阪など6市の市長選が告示され、4年に1度の統一地方選がスタートした。大阪における維新対反維新の“ダブル選”や複数の保守分裂選挙、国政選挙をにらんで与野党が地域にどれだけ地盤を築けるかがポイント。岸田文雄首相が内閣支持率の上昇を受け、統一選後半戦に合わせて衆院解散・総選挙に打って出るとの見方も出ている。
維新vs反維新 注目は大阪ダブル選
統一地方選は4年に1度、4の倍数の年の前年に全国で一斉に行う地方選挙のこと。前後半の2つの日程に分かれ、前半戦は知事選と政令市の市長選、道府県議選、政令市の市議選、後半戦は一般市や東京都区部の市区長選と市区議選、町村長選と町村議選が行われる。2023年は前半戦の投票日が4月9日(日)で、後半戦が4月23日(日)。後半戦に合わせて衆院4つ、参院1つの計5つの補欠選挙も行われる。
選挙の構図は地域によってさまざまだが、最大の注目は大阪ダブル選だろう。大阪では2011年以降、大阪維新の会が府市のトップの座を占めてきており、府市の連携によって2025年の大阪・関西万博などさまざまな政策を実現してきた。大阪における成果をアピールし、関西圏や国政でもじわりじわりと影響力を増している。
府市のトップは当初、維新の会の生みの親である橋下徹氏と松井一郎氏、2015年からは橋下氏の後継となった吉村洋文氏と松井氏のコンビで代わる代わる担ってきたが、2020年に大阪都構想の住民投票が否決されたことを受けて松井氏も引退を表明。今回は府知事選には引き続き吉村氏が立候補したが、市長選には松井氏の後継として元府議で大阪維新の会の幹事長を務める横山英幸氏が立候補した。
対する反維新勢力が擁立したのが元自民党市議の北野妙子氏だ。大阪ではこれまで国政で対立する自民党や立憲民主党、共産党などが連携して維新に対抗してきたが、「野合」との批判も受け続けてきた。今回、各政党は表立って活動しないと言うが、実質的には自民党など各党が北野氏を支える。共産党は知事選には候補を擁立したが、市長選は擁立を見送り、実質的な維新対反維新の一騎打ちの構図となった。
維新が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の是非などをめぐって激しい論戦が繰り広げられている。維新にとっての力の源泉は府市の連携だけに、どちらか一方でも落とせば大きな痛手。反維新勢力にとっては市長選だけでも勝つことができれば反転攻勢の好機となりそうだ。
保守分裂、激戦の知事選
首長選で他に注目されるのは保守分裂となった奈良県と徳島県の知事選。奈良県では県連会長である高市早苗経済安全保障担当相が主導して元総務官僚の平木省氏を擁立したが、これまで自民党の支援を受けてきた現職の荒井正吾知事も立候補を表明。保守分裂選挙となったところに、維新の会が初の大阪府以外での公認知事の誕生に向けて生駒市長の山下真氏を擁立した。保守系の首長や議員の支持が割れるなか、事前の世論調査では山下氏が有利との見方が浮上している。
徳島県知事選はさらに激しく、現職の飯泉嘉門氏に加えて自民党前参院議員の三木亨氏と自民党前衆院議員の後藤田正純氏が立候補。共産党の古田元則氏を加えた4人で激しい選挙戦となっている。自民党県連は現職の飯泉氏を推薦したものの、三木氏は父親が元徳島県知事、後藤田氏は大叔父が内閣官房長官や法相を歴任した後藤田正晴氏という名門だけに、県内の保守系首長や議員は複雑に支持が割れているという。誰が当選しても禍根を残しそうだ。
国政選挙も見据えて 野党は存在感を示せるかがカギ
議会選の事情は地域によって異なるが、国政選挙では地方議員が実際に選挙運動の核となるだけに、次期国政選挙に向けて与野党がどのように地盤を固められるかがポイントだ。連立与党を組む自民党や公明党は各地方でも組織体制が確立されており、選挙に向けて万全の準備を進めている。対する野党だが、特に民主党の政権陥落以降、勢力が分裂した立憲民主党や国民民主党系の地方組織は、れいわ新撰組や参政党などの新興勢力の台頭もあって存亡の危機。関西では維新の勢いにも押されるなか、どのように存在感を発揮していけるかが課題だ。地方で勢力を伸ばせなければ国政選挙でも苦戦を免れない。
統一地方選の後半戦と合わせて国政選挙の6つの補欠選挙も行われるが、それに合わせて岸田首相が電撃的な衆院解散・総選挙を仕掛けるとの見方も永田町では取り沙汰されている。岸田内閣の支持率は日韓首脳会談やウクライナ訪問などを機に上昇に転じており、毎日新聞の3月の調査では前月比7ポイント増の33%だった。支持率が30%を超えたのは4か月ぶり。日韓問題をめぐって韓国政府が発表した徴用工問題の解決策については過半数の54%が「評価する」と答え、「評価しない」の26%を大幅に上回った。
5月19~21日には首相の地元広島で行われる主要7か国首脳会議(G7サミット)が控えるものの、「今なら勝てる」と確信すれば解散総選挙を断行して堂々とサミットに出席しようと考える可能性はある。仮に統一地方選との同日選は見送ったとしても、広島サミット後はいつ解散してもおかしくない状況となる。永田町では統一地方選をにらみながら、自らの選挙に向けた準備を本格化する議員が増えそうだ。