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東急が進める渋谷再開発。駅からちょっと離れた「アクシュ」と「サクラステージ」もアクセス改善

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100年に1度と言われる渋谷駅周辺の再開発。2024年7月8日に「渋谷アクシュ」がオープンし、続く7月18日には「渋谷サクラステージ」も商業エリアが開業した。アクシュは渋谷駅から少し離れているほか、サクラステージは国道246号線を挟んでいるため、以前は少々アクセスが悪かった。今回、両ビルへのアクセスが改善され、渋谷の「中心の中心」が拡張したと言え、より賑わいのある街へと進化しそうだ。

ヒカリエの東側にあるアクシュ

 渋谷の再開発は2014年に「渋谷ヒカリエ」を皮切りに、「渋谷ストリーム」、「渋谷ストリーム」、「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」など8つのビルが建設された。アクシュとサクラステージの後には「渋谷スクランブルスクエア(西棟)」と「Shibuya Upper West Project」の2つが2027年に開業を予定している。

アクシュの外観

アクシュの場所は、ヒカリエの東側にある渋谷二丁目17地区に建設されたモールとオフィス機能を備えたビルだ。高さ120m、地上23階、地下3階、延べ床面積は4万4543㎡ある。プロジェクトは2007年に勉強会が始まっており17年の年月をかけて完成したことになる。
渋谷のオフィスの空室率は2024年第1四半期で4%と港区、新宿区、中央区より空室率が低いこともあり、1カ月の1坪あたりの賃料は2万3075円と前述の地区よりも高い。つまり、オフィス供給量が足りていない。アクシュはその解消を狙っている。オフィスのテナントにはビズリーチで有名なビジョナルが入居しているが、開発した東急不動産によると入居率はすでに100%だという。

このエリアは、すこし渋谷駅から離れているが、周辺地区と微妙に導線が断絶していることから隣のヒカリエと連絡通路で接続することで雨風にさらされずに渋谷駅からアクシュまで移動する事ができるようにした。また、飲食店が少ない上、憩いの場や店舗などによる賑わい施設が不足気味という課題もあり、アクシュの東側は国連大学や青山学院大学がある。飲食機能を補完させることで、青山と渋谷とつなぐ「TSUNAGI-BA」をコンセプトとした。

例えば、タリーズコーヒーが入居しているが、ここで一息つくだけでなく、ビジネスマンや学生が仕事や勉強に使いやすいような店内にした。また、ハワイアンカフェ&ダイナーの「hale’ania HOA」、塩、酒、肴が自慢の居酒屋「中井商店」、葉山で人気のイタリアン「Trattoria Pizzeria」、スペイン料理の「Cerveza JPN」など国際色豊かな飲食店が店を構える。

オフィス、飲食のモールだけではちょっと無機質になると考えたのか、パブリックアートのエリアを設けた。また、17地区に店を元々構えており現代アートギャラリーなどを運営するNANZUKAが近ビルの2階にギャラリーを開く。

246号線で断絶されてた桜丘地区

 渋谷駅南西部にある桜丘地区は、東側にはJRの線路があり、北側は国道246号線の影響で歩道橋はあるが人流は分断された地域だった。渋谷の街と連続性を持たせるべく1998年に旧再開発準備組合を設立し2023年11月に竣工した。ただオープンしたのは一部で、今回、商業施設がオープンするという、事実上のグランドオープンだ。

サクラステージの外観

ビルは、店舗、オフィス、駐車場がある「SHIBUYAサイド」と住宅、ホテルのハイアットが営むサービスアパートメントが中心に、店舗、オフィスと駐車場もある「SAKURAサイド」の2棟から構成される。前者は高さ179m、地上39階、地下4階、延べ床面積は18万4700㎡、後者は高さ127m、地上30階、地下1階、延べ床面積は6万9100㎡だ。

特徴は、スクランブルスクエアと同じで、地下から高架状の自由通路まで一体的に接続させる「アーバン・コア」という歩行者用の“垂直動線”を創出させた点だ。これがあることで246号線をまたぐ歩道橋への移動が容易になり、渋谷駅側との回遊性が高まる。また、アーバン・コアの下部には246号線の下を通る地下通路を作り、こちらからも渋谷へと繋がるようにした。サクラステージ→ストリーム / スクランブルスクエア→渋谷駅→サクラステージとぐるっと1周できるようになる。

下から見上げたアーバン・コア。縦の移動を楽にする

東急によると着工前の2019年3月と2024年3月のピーク時(18~19時)の人流を比べるとすでに10万人が増加したとしており、商業施設の開業でさらに人流が増えることが確実だ。

サクラステージにも渋谷で不足気味のオフィスが供給されるほか、面白い取り組みとしては、クラウド名刺管理サービスなどを手掛けるSansan社と共創し、スタートアップ企業同士のマッチングの支援を行う。こういう動きは、渋谷らしいクリエイティビティを創出してもらいたいという想いが感じられる。

商業施設は全52店舗で、今年いっぱいを目途に全てが開業する予定になっているが、今回、そのほとんどがオープンした。目を引くのは、コスメの「KATE」初の旗艦店がオープンしたことだ。入口にある「KATE iCON BOX」という機械は、AI技術による顔印象分析を行い、その人にあった4色のアイカラーを提案。それをパレットにいれ、購入することも可能だ。また4階にはTSUTAYAも入る。日本全国で書店が次々に閉店しているが渋谷も同じ。その声を受けて出店した。

KATEの旗艦店の入口

飲食でユニークなのは「FOOD MET」という3つのエリア、17店舗で構成されているゾーンだ。「SHIBUYA SAKURAGAOKA BEER HALL」は8つの店舗を1つのレストランと捉える。見た目はフードコートのようになっていて、ランチの時はそのように機能する。ところが夜はウェイターが登場。客が8つの店舗に訪れて料理を注文するのではなく、タッチパネルを基本に注文し、ウェイターが料理を運んでくれるのだ。8店舗はカキやピザの専門店、中華料理店、から揚げと日本酒に自信を持つ店など、個性豊かなラインナップとなっている。また、マンションに住む住民を意識して、Tokyu Storeもあるが、オフィスで働く人向けに弁当の販売を充実させる。

JR渋谷駅新南改札が移動

 JR利用者にとってうれしいのは新南改札7月21日から北に約200メートル移動して、サクラステージとストリームに直結したことだ。新南改札は埼京線に合わせた改札だったが、2020年にプラットホームが350m北に移動したことで実現した。1日15万人の利用を想定している。移転によりこれまでより徒歩で5~6分の時間短縮効果がある。新南改札の移動により桜丘地区から線路を超えて東側へのアクセスが容易になるため人の回流が起こることは間違いない。

東急グループでは渋谷駅半径2.5㎞以内を広域渋谷圏と定義して「働く」、「遊ぶ」、「暮らす」が融合したエリアを作りたいとしており、2つのビルの完成は、その実現に近づいた。オフィス面で渋谷と丸の内との違いは「お堅い企業」ではなく、ベンチャーを含めた創造性にあふれた企業が多いで、今後も、若く、勢いのある会社がさらに拠点を構えそうだ。つまり、従来の買い物やエンタメのエリアのみならず、新時代のビジネスエリアとして発展していく可能性を秘めている。