米大統領選、それぞれの勝利で国際政治はどうなっていくか?

2024.8.6

社会

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世界が注目する米国大統領選挙まで、残り3ヶ月となった。最近はトランプ暗殺未遂事件、バイデン大統領の選挙戦からの撤退、後継候補ハリス副大統領の出馬など、その動向が大きく変化している。そして、暗殺未遂事件を受け、選挙戦でさらに優勢になったとみられていたトランプ氏は、ハリス氏が台頭したことで逆に劣勢に立たされているように映る。

7月末に調査会社ユーガブや経済誌エコノミストが発表した世論調査結果(全米対象)によると、トランプ氏の支持率が44%だったのに対して、ハリス氏の支持率は46%と2ポイントほど上回っている。ハリス氏をめぐっては、黒人やアジア系、ヒスパニックなど非白人層からの支持が広がっていると考えられる。また、これまで激戦州7州ではトランプ氏とバイデン大統領の争いではトランプ優勢の状況だったが、最近の世論調査によると、アリゾナ、ミシガン、ネバダ、ウィスコンシンの4州でハリス氏が2から11ポイントほどトランプ氏を上回る状況になっており、ハリス氏に追い風が吹いている状況と言えよう。しかし、両者の支持率で大きな差は見られないことから、我々はそれぞれの勝利で国際政治がどうなっていくかを考える必要がある。

ハリス氏が勝利した際のシナリオ

では、ハリス氏が勝利すればどうなるのか。まず、認識しておくべきことは、ハリス氏がバイデン政権の副大統領であることだ。通常、大統領候補が副大統領候補を選ぶ際、自身の理念や政策思考と相容れない人を副大統領候補には選ばない。要は、ハリス氏はバイデン政権の外交姿勢を基本的に継承することなり、同政権の対中国、対ロシア姿勢をそのまま維持することだろう。バイデン政権は新疆ウイグル自治区における人権問題、中国による先端半導体の軍事転用などを背景に、中国に対する貿易規制を先制的に強化し、民主主義と権威主義の最前線と位置づける台湾への軍事支援を継続しているが、ハリス氏もその姿勢に撤することが考えられる。ウクライナ戦争でもバイデン政権は軍事支援を積極的に進めてきたが、ハリス氏もNATOの重要性を強調し、対ロシアで欧州との結束を深めていくことになろう。さらに、バイデン政権は対北朝鮮では、同国が核やミサイルで率先して改善策を示さないと交渉には応じない姿勢に撤しているが、ハリス氏もその姿勢を続けることだろう。北朝鮮はバイデン政権のそういった姿勢に強い不満を抱いており、ハリス政権になっても北朝鮮をめぐる軍事的緊張が続くことになろう。

トランプ氏が勝利した際のシナリオ

一方、トランプ氏がホワイトハウスに返り咲くことになれば、ウクライナをめぐる状況は変化を余儀なくされよう。トランプ氏はウクライナ情勢について、これまで24時間以内に戦争を終わらせる、ウクライナ支援を最優先で停止するなどと言及しており、実際に第2次トランプ政権が発足してみないと分からない問題でもあるが、これまでのウクライナ支援は縮小、停止の方向へ傾き、同時にトランプ氏はロシア軍がウクライナ領土を占領する現状での停戦に応じるようゼレンスキー大統領に圧力を掛ける可能性がある。トランプ再選は、ウクライナにとっては難しいシナリオと言えよう。また、北朝鮮をめぐっても変化が生じよう。トランプ氏は政権1期目の4年間で、ベトナム、シンガポール、板門店と3回も北朝鮮の金正恩氏と会談し、米朝関係は冷戦時代のデタントのような状況を迎え、朝鮮半島の軍事的緊張は大きく緩和された。トランプ再選となれば、トランプ氏は北朝鮮との対話を進めていくシナリオが考えられ、逆に対北朝鮮での日米韓3カ国の結束は減退していくだろう。

一方、対中国ではハリス氏と同様、トランプ氏も強硬姿勢に撤するだろう。トランプ政権は2018年以降、4回にわたって3700億ドル相当の中国製品に最大25%の関税を課す措置を発動したが、これがいわゆる米中貿易摩擦の始まりとなった。しかし、バイデン政権は5月に中国製EVに対する関税を現行の25%から4倍の100%に引き上げる方針を打ち出すなど、対中姿勢では両政権に大きな違いはなく、ハリス氏のトランプ氏のどちらが勝利しても米国の厳しい対中姿勢は続くことになろう。