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今こそ求められる「社会教育士」、社会構想大学院大学が新講座を開設

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「社会教育士」という言葉を聞いたことがあるだろうか。文部科学省が4年前に設置した「学びを通じて、人づくり・つながりづくり・地域づくりに中核的な役割をはたす専門人材」の称号 だ。社会教育の領域では、1921年に「社会教育主事」の制度が創設されて現在まで続いているが、約100年ぶりに新たな称号が設けられたことになる。なぜ今、社会教育なのか。社会教育が求められる背景や、社会教育士になる方法までを解説する。

2020 年に新設された「社会教育士」の称号

2020年4月に新設された「社会教育士」。聞き覚えがないという人も多いかもしれない。文部科学省によれば、「地域のヒト、コト、モノの情報や、地域の想いや願いを共有し、地域の人たちに伴走しながら、地域の人たちと一緒になって学びの機会をつくり、新たな人との出会いやつながりをつくり、持続可能な地域をつくる」専門家のことだ。

社会教育にまつわる制度・資格では「社会教育主事」というものがある。戦前から続いている制度で、社会教育専門の自治体職員のことだ。現在では、都道府県および市町村の教育委員会に必ず配置されることになっている。職務は、教育委員会が主催する社会教育事業を企画・立案・実施したり、管内の社会教育施設が主催する事業に対する指導・助言を行ったりすることだ。

この社会教育主事が、これまで以上に“人づくり”や“地域づくり”の中核的な役割を担えるよう、社会教育主事講習/社会教育主事養成課程に科目を追加したり、実習を取り入れたりして内容を充実させた上で、これらを修了した人に与えられるようになったのが、「社会教育士」の称号である。

社会教育主事の職には、教育委員会の発令がなければ就けないが、発令はなくとも、講習や養成課程で学んだ人が、その学習成果を社会で認知されて、社会教育活動に携わりやすいように、新たな称号を設けたものだ。

また、従来も称号や肩書がないまま、社会教育の推進に力を注いできた人は大勢いて、文科省としてはそのような人たちの活動を、新制度によって後押ししようという狙いがある。

社会教育士の主な対象者

そもそも社会教育とは?

「社会教育」とは、教育のうち、学校または家庭で行われるものを除き、広く社会で行われるものを指す。個人が主体的に選択し、生涯にわたって自由に学習できることが大きな特徴で、年齢、性別、経歴、目的を問わず、誰もが社会教育に参加できる。

具体的には、公民館や生涯学習センター、図書館などの社会教育施設の講座、職場の研修プログラム、スポーツ教室や文化サークル活動、学童クラブや児童館で行われるプログラム、学習塾の講座などが社会教育に含まれる。

学校教育、家庭教育のほかに、社会教育なるものがなぜ必要なのか。これには、社会的な要請と個人的な要請の両面がある。例えば、日本では少子高齢化や人口減少が進むなか、全国あらゆる地域で課題解決に資する人材や取り組みが切実に求められている。社会教育はそれ自体が地域活性化の取り組みになるほか、地域の担い手を育成する効果が期待できる。

また、個人が変化の激しい時代を生き抜く力をつける手段として、リカレント教育やリスキリングが昨今、脚光を浴びるようになった。人生100年時代には、生涯学習を通じて生きがいの発見や創出に取り組むことも重要だ。多角的に見て、社会教育が今後ますます重要性を増していくことは間違いない。同時に、地域の社会教育活動をリードできる社会教育士も、ニーズが高まっていくはずだ。

教育における、社会教育の位置づけ

社会教育士に求められる「3+1」の能力

港区青山にある社会構想大学院大学では、このようなニーズに応え、文部科学省から委嘱を受けて、「社会教育士養成講座(社会教育主事講習)」を2024年4月に開講した。この講座で4科目8単位を受講し、修了すると、文部科学大臣が認定する社会教育士資格が得られる。

同学の大谷晃助教はこの講座では「“3+1”の能力を培うことができる」という。最初の「3」は文科省が定義する、社会教育士に必要な能力のことだ。すなわち、(1)ファシリテーション能力、(2)コーディネート能力、(3)プレゼンテーション能力である。

地域で学びの場を設ける例で考えるとイメージしやすい。ファシリテーション能力とは、そのような場で司会進行役を務め、多様な参加者の多様な意見をつないで議論をポジティブに発展させていくような力をいう。コーディネート能力は、その場を用意するために関係各所と調整・交渉を行う力のことだ。プレゼンテーション能力は、そのような場を持ったこと、その成果などを広く発信していく力を指す。

この基礎的な3能力に加えて、社会構想大学院大学では「+1」として、「社会教育に関する専門性の高い知識や理論」の習得を目指すとしている。

「社会人大学院として、受講生は専門性の高い知識や理論の習得が可能だ。知識や概念、理論による裏付けをもって、専門的な活動を実現できるようにするところが、この講座の特長だ。社会人向け専門職大学院として2017年から培ってきたノウハウを生かし、先進的な社会教育の現場を知るゲスト講師を招くなど、内容の充実を図っている。」

演習科目では実際に自治体へ社会教育事業を提案

社会構想大学院大学の「社会教育士養成講座」は、以下の4科目から成る。生涯学習および社会教育の本質について理解を深める「生涯学習概論」(2単位)、生涯学習をする人を、その多様な特性に応じて支援するための知識と技能を習得する「生涯学習支援論」(2単位)、社会教育事業を構想し、自立的・持続的な事業として実現するための知識と技能を身に付ける「社会教育経営論」(2単位)そして3科目の集大成のような位置づけとなる「社会教育演習」(2単位)だ。

社会教育演習では、実際に受講生が自治体へ社会教育事業を提案する。そのために、受講生は講師からレクチャーを受けるだけでなく、文献に当たったり、シンポジウムに参加したり、社会教育施設を見学したりして、より主体的に学び、社会教育を実践する力を養っていく。

社会構想大学院大学の「社会教育士養成講座」では、90分の授業を週に2コマ行う。授業は原則としてハイフレックス形式(対面授業のオンライン同時配信)で実施するので、高田馬場に通えない人も受講可能だ。また、全ての講義は録画され、授業後にデータが共有される。授業に出席できなかった場合も、録画を視聴し、授業日から3日以内にミニットペーパーを提出すれば「出席」とみなされる。なお、対面授業に参加した受講生も、オンライン配信をリアルタイム視聴した受講生も、ミニットペーパーの提出をもって出席となる。

この講座の修了要件は、(1)出席80%以上、(2)各科目所定の単位認定要件の充足、(3)修了判定面談への合格である。

昼間講習と夜間講習の2コースがあり、昼間講習は月曜午前を中心に、夜間講習は土曜の夜を中心に授業日程が組まれている。定員は昼間30人、夜間50人。講習料は35万円(非課税)。