9月11日に米国では大統領選の討論会が行われ、本戦まで2ヶ月を切っているが、日本では9月に岸田政権が終焉を迎えた。岸田政権が発足したのは2021年10月だが、岸田政権は3年あまりにわたる外交でいくつかの成果を残したと言える。岸田政権は長きにわたって支持率の低迷が続いてきたが、外交・安全保障の専門家の間では岸田外交を評価する声が多い。では、岸田外交は3年間で何を成し遂げたか。
日韓関係がより健全な関係に発展するよう尽力
まず、筆者の脳裏に最も残っているのは、日韓関係の改善だ。ムン・ジェイン政権の時、日韓関係は戦後最悪とまで揶揄されたが、2022年5月にユン・ソンニョル大統領が就任すると、日韓関係は大きく改善の方向へ動き出した。ユン大統領は以前から対米、対日関係の重要性を強調し、岸田政権は当初は就任したばかりのユン大統領の様子や反応を見ていたが、2022年6月にスペインで開催されたNATO首脳会議の直前、スペイン国王主催の晩餐会の会場で、岸田首相がユン大統領に話しかけ、日韓関係がより健全な関係に発展するよう相互が努力していく重要性を共有した。そして、2022年9月の国連総会、2022年11月のASEAN関連首脳会議など第3国での機会を活用し、首脳会談を積み重ねていった。そして、昨年3月にはユン大統領が東京を訪問し、5月には岸田首相がソウルを訪問して首脳会談を行うなど、ここに日韓シャトル外交が復活した。積み重ねられる会談で、日韓は解決が難しい歴史や領土をめぐる問題がある中でも未来志向を掲げ、関係を発展させていくステップを邁進していった。そして、岸田総理は9月にもソウルを訪問し、岸田・ユン時代で作り上げた日韓関係を今後も継続させていく意思を確認し合った。ユン大統領が就任してから2年半あまりで、岸田・ユン会談は12回を数える。
岸田政権の対韓外交は、分断が進む世界における東アジアの安全保障環境を反映している。東アジアでは中国が軍事力を増強し、米中の軍事バランスが変化しつつあり、北朝鮮はミサイルの発射を繰り返すだけでなく、最近北朝鮮は軍事協力を含めロシアとの関係を緊密化させている。このような状況下で、日本にとって唯一のパートナーとなるのは同盟国の米国以外には韓国のみであり、今日、日韓は互いが互いを必要とする環境となっている。以前と比べ、米国も同盟国により多くの役割を求めるようになっており、日韓が安全保障を含んだ包括的協力を強化することを望んでおり、日韓協力というものは分断が進む世界においてその重要性が高まっているのだ。このような意味で、岸田政権の対韓外交は極めて重要なものとなった。
岸田外交が成し遂げた最大の成果は広島サミット
また、岸田外交の3年間で最も衝撃となったのは、言うまでもなくロシアによるウクライナ侵攻だ。それから2年半の歳月が流れるが、岸田首相は分断が進む今日の世界で、自由や人権、法の支配などの価値観の重要性を内外に強く訴え、日本の存在感を強く示した。ウクライナ侵攻直後から、岸田政権は国際秩序の安定に対する挑戦と暴挙だとしてロシアを強く非難し、欧米諸国と協調する形でロシアへの制裁を強化していった。そして、この問題で岸田外交が成し遂げた最大の成果は広島サミットだ。岸田政権は昨年5月に広島サミットを主催し、ウクライナ問題を主要議題としただけでなく、実際にウクライナのゼレンスキー大統領の広島訪問を実現させ、民主主義陣営が被爆地広島から世界に向かって法の支配の重要性を訴えたことは大きな成功となった。
さらに、岸田首相は日本の総理大臣として初めてNATO首脳会合に参加し、ウクライナの明日は東アジアかも知れないという危機感のもと、ウクライナと台湾は距離があっても関連する問題と欧米諸国に強く訴え、安全保障面で欧州と東アジアを接近させたことに意義がある。最近ではNATOの事務所を東京に設置するかどうかの議論も浮上したが、分断が進む今日の世界で、岸田総理は物理的な距離はあっても同じ価値観を共有する国々が安全保障面で協力する重要性を打ち出した。
岸田政権は中国との間では、対話による安定的かつ建設的な日中関係の構築を主張してきたが、分断が進む世界において、対中国ではなかなか上手くはいかなかった。しかし、安全保障の現実を考慮し、日本の国益を重視して戦略的な外交を進めたことには大きな意義があろう。
キム
カムスサハニダ
2024.11.19 14:56