12月4日のニューヨーク市場で円相場が一時1ドル=120円25銭まで下落し、2007年7月以来、7年4ヵ月ぶりの円安水準を記録。11兆円を超す日本の貿易赤字(2014年1月~10月)や米景気回復によるドル買いが進むなど、円売り圧力が強くなっています。
円安は輸出企業にとっては利益が上振れするメリットがありますが、家庭や国内のサービス業をメインとする中小企業にとってメリットは少なく、むしろ食料品や資材などの輸入品を買うことでコスト増になるケースも。原油価格も下がっていますが、円安によって恩恵が相殺されてしまっている状況もあります。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q.業界によって差はあると思いますが、日本全体にとって円安は”良い・悪い”どちらに働きますか?
A.うーん……どちらともいえない。
日本は食料品も、エネルギーも輸入に頼っているから円安は生活必需品(肉やガソリンなど)の値上がりにつながる(ちなみに原油価格は今、安くなっているので、ガソリンは値下がり傾向)。
一方、輸入で稼いでいる日本を代表するグローバル企業は円安の方が、利益が上がる。日本のGDPの20%弱とは言いながら、日経平均株価の大きな要素を占めているのはグローバル企業なので、株価は上がることになるだろうね。
短期的にみたら、立場によって良し悪しが出てしまうけど、長期的にみると、輸出企業の業績が上がれば賃金も上がるし、そうなると家庭に還元されて、生活必需品の値上がりなどは問題ではなくなってくる。
ただ、今回のように1ヵ月で10円も”急激に動くこと”は良くない。企業にも家庭にも予定があるのに、急に価値が上下すると、経済的に厳しい時期ができてしまうから。
それと、自国通貨が安くなることは国力の低下、ということは言える。資材を輸入しなければならない国内需要メインの企業にとっては、円安の状況は歓迎できないだろうね。
Q.製造業が海外に工場を持つことも円安の要因になっているようですが、米ボーイングから1兆円分の受注を決めた東レなど、工場を海外に持つことは、日本にとっては良くないことなのでしょうか?
A.民間企業は利益を上げることが第一の目的。海外移転を非難するのは自由だけど、日本に工場を作って儲からないのであれば、そうせざるを得ないでしょ。
だから、政府は法人税減税など有効な手を打って、企業が海外に出ていかないように魅力ある市場にする責任がある。ほかにも優遇制度を作って、なるべく国内にいてもらう努力をするべき。国も諸外国とのサービス競争が必要なんだよ。
(佐藤尊徳)
「円安、7年ぶり120円台 日銀緩和、貿易赤字、米景気回復」(日経新聞朝刊1面 2014年12月5日)
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