12月14日投開票の衆院選の話題のひとつに、公示前の与党であった自民党・公明党がどれだけの票を獲得するか、というのがあります。過半数(238)の議席を持つ与党であっても、議席数によっては官邸(政権)と政党の力関係が変わってしまうからのようです。
まず、国会を与党ペースで進めることができるボーダーライン【絶対安定多数】は、270議席。そこから300議席に近づくほどに、官邸主導の度合いが強くなっていきます。
たとえ与党を継続できたとしても、【絶対安定数】ギリギリなら、官邸(安倍政権)は発言力が著しく弱くなり、”政高党低”といわれてきた力関係が崩れるシナリオもあるようです。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q.“官邸”と”与党”の関係を教えてください。
A.基本的に与党が首相を支える構図。
日本は議会制民主主義。与党の議員が首相を選ぶから、首相(官邸)は与党の人たちの意見を取り入れて権力を維持する格好。ただ、基本的に首相と考えが近い人は官邸に入るし、そうでない人はポストを与えられない。
今の小選挙区制は政党を選ぶ選挙だから(中選挙区制では政党というよりも個人の力が強かった)、党首の人気によって選挙が左右される。選挙に大勝すれば党首のおかげだから、その力は強くなるし、負ければもちろん弱くなる。
つまり、選挙に勝てば党首である首相(官邸)の力が強くなり、負けると(首相と主張の隔たりがある)与党の力が強くなる、という関係。
Q.【絶対安定数】ギリギリの場合、官邸は法案を扱う際に与党に気を使わなければならないといわれています。なぜ、同じ与党内でそのような気遣いが発生するのですか?
A.理由は前述のとおり。
以前の中選挙区制時は、どちらかというと”個人商店”の集まりで、自民党は派閥の力が強かったの。お金も派閥の領袖(会長)がみんなに配っていた。だから、違う派閥の人たちに配慮しないと、いくら首相といえど、政権運営がままならなかった。
現在は政党助成金ができたため、党の執行部(自民党の場合は、幹事長・総務会長・政務調査会長の三役)の力が強い。そうすると、官邸はかつての派閥ではなく、政党との力関係を気にしなければならなくなるんだ。
Q.来秋には自民党総裁選があるようですが、安倍総理の対抗馬になり得るのは誰ですか?
A.今回の選挙で大勝すれば政権は盤石化して、安倍総理に対抗できる人はいなくなるよ。
もともと自民党は300近い議席(衆議院)を持っていたわけだから、あと2年間(任期まで)は政権担当できたのに、解散したということは、安倍総理は自分の政権基盤を磐石にしたかったのでは?
そこで賭けに出て、勝てるだろうという今回のタイミングで解散したんでしょ。報道どおり自民党が同程度の議席を獲得すれば、安倍総理に対抗できる人はいなくなるよ。
とはいえ、経済状況やほかの要因で、その後の4年間が順風満帆にいくとは思えないけど。
(佐藤尊徳)
[参考:「与党議席、官邸主導を左右」(日経新聞3面 2014年12月3日)]
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