国内外で人材ビジネスを展開するパソナグループと、複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を提供するAnother worksが本年7月15日より資本業務提携を締結。その第一弾として、パソナJOB HUBとAnother worksによる「プロジェクト伴走型プロ複業人材チーム」のサービス提供が7月17日よりスタートした。本サービスによって企業には何がもたらされるのか。また、“日本の企業や社会の未来”を見据えて、彼らがやろうとしていることとは? 両社の代表が熱く語る!
出会いは10年前 人事のトップと新入社員だったお互いの印象
髙木氏と大林氏の出会いは今から10年前。パソナグループに新卒で入社した大林氏と、人事部の社員教育等を行う人材開発部門のトップの髙木氏という間柄だった。当時のお互いの印象について話が弾んだ。

大林氏:私がパソナグループに入社したのが2015年。パソナJOB HUBの「ProShare」の前身であるパソナ 顧問ネットワーク事業部に配属されました。当時、髙木さんは人事部のトップで人事教育の研修をする側、私は研修を受ける側。常にパソナのコーポレートカラーでもある赤いネクタイをしていらした髙木さんは、赤い炎をまとっているようですごくパワーをいただきました。私にとってはパワースポットのような存在です。
髙木氏:大林さんは、当時から自分の意見をしっかりと持っていて、それに良い意味で少しとんがっていましたね。成果や結果をきちんと残して、早く一人前になりたいという志を強く感じました。今も経営者として会社のトップに立ち、成果を常に出し続けているというのは、とても嬉しいです。
大林氏:父が大分県で会社を経営しているので、当時から漠然と起業したいと思っていました。大学時代からベンチャー企業でインターンをして、社長の直近で経営者の背中をみながら働かせていただいた経験から、就職活動のときも「経営者と一番近くで仕事ができる会社ってどこだろう」と考えてパソナを選んだんです。
髙木氏:当時の大林さんは、勉強して経験を積みながら実力をつけて、起業の機が熟すのを待っていた印象があります。だから、Another worksを立ち上げたと聞いたとき、興すべくして興したんだなと感じました。創業したのは、いくつの時だっけ?
大林氏:起業したのは26歳のときでした。元号が令和に変わるタイミングで会社を立ち上げました。
髙木氏:大林さんが起業してからも日々挑戦し、ずいぶん活躍しているという話を人づてに聞くたびに、「自分自身ももっと挑戦していこう」と背筋が伸びました。年齢は私より2周りくらい若いですが、人としても経営者としても尊敬しています。
大林氏:ありがとうございます!
資本業務提携に至った経緯
しばらく会う機会がなかったものの、引き寄せられるように再び縁が繋がり、食事に行くようになった二人。様々な話をする中で、大林氏から資本業務提携できないかとの話を持ち掛けたという。

大林氏:大手企業との提携はの重要な手段の1つであると考えています。ただ、想いを共有できる相手でないとうまく行かないというのが、この7年の経営経験から分かってきました。そうなると、パソナグループしかいないと思い、私からラブコールをしたんです。
髙木氏:私のほうも大歓迎でした。というのも、「ProShare」の事業では約1万4000人のプロフェッショナル人材によってクライアント企業の経営課題を解決するのですが、支援を入らせていただく際の実務を担当する人材が必要だと常々思っていたからです。
大林氏:プロフェッショナル人材が参画したとしても、実際に手を動かす社員さんの専門性やスキルが足りないケースもなども多くありますね。
髙木氏:そうなんです。たとえばDXをするにしても、社内にIT人材がいない。採用しようにもIT人材は世の中全体で不足していて簡単には雇えません。プロフェッショナル人材が戦略を立ててプロジェクトを組んでも、それを実務に落とし込む実働部隊がいなければ実現はできないのです。その点、Another worksには実務のできる優秀な複業人材が10万人超もいて、しかも企業側はサブスクで採用し放題なわけですから、こんなに頼もしいことはありません。
大林氏:私がパソナグループに在籍していたこともあり、どういうプロフェッショナル人材が登録しているのかどういう分野が強いのかなどの感覚がありました。
「プロジェクト伴走型プロ複業人材チーム」のサービスの強み
こうしてパソナグループとAnother worksとの資本業務提携が叶い、7月17日からはパソナJOB HUBとAnother worksとの連携プロジェクトが始動。「プロジェクト伴走型プロ複業人材チーム」のサービスを活用することで、クライアント企業にはどういった効果やメリットがあるのか。

髙木氏:本サービスでは、企業の様々な課題解決やイノベーション創出に向けて、コンサルティングからプロジェクト設計、実務遂行までを一気通貫で伴走支援します。たとえば人材採用の支援であれば、まず課題の把握から始まり、目標の明確化や戦略立てを行います。そして、実務実施のフェーズに入ると、プロフェッショナル人材と複業人材でチームを組成します。そして、企業側の人事や各事業部長とのヒアリングを重ねながら、実際の面接や審査方法も含め、具体的な実務支援を行っていきます。提携以前から1~2件のプロジェクトが始まっていましたが、この2ヵ月で数十件ほど増えました。今後も支援できるフィールドは広がっていくと思います。
大林氏:複業人材も今後さらに増えていくでしょう。今いる、10万人の登録者の平均年齢が約30歳で、複業やフリーランス、将来的な起業や独立をしたいという人が集まっています。国も副業・兼業を推奨していますから、自分の能力を活かしたい人やもっと稼ぎたい人など、複業は当たり前の時代になっていくと思います。
髙木氏:本サービスを利用する企業側のメリットとしては、第一に経営課題を解決できること。「コンサルタントとなるプロフェッショナル人材と実働できる複業人材」で組まれた精鋭チームが直接課題を解決してくれます。そして、精鋭チームと共に働く企業社員の成長にもつながります。
大林氏:プロの仕事を間近で見て、一緒に仕事をするうちにスキルを身につけて伸びていくんですね。
事例①
企業: 10,000名以上のインフラ会社
企業課題: 事業をスピーディーに推進するため、子会社化を進めている同社。 しかし、子会社の成長を支援するための基盤構築が間に合っていない。 支援概要: 子会社化を推進するため、プロフェッショナル人材+複業人材を含めた各社の「部」を設立。 成長支援、デジタル化、ガバナンスを強化することで、グループ全体の事業の成長を目指す。
具体的な内容: 月に4回程度のMTGを行い、子会社設立の「部」を支援。 推進するメニュー・運営マニュアルを作成、簡易監査事項の整理、実施、各領域の迅速な推進基盤の整理。
事例②
企業: 100名以上のIT・通信会社 企業課題: 親会社含め、業界での知名度は有する会社。しかし、応募は集まるが、自社の欲しい人材は集まらず、採用後の離職も多い状態。 支援概要: 同社で求める人材を明確化し、適切なエンジニア採用手法を実施。 具体的な内容: 月に2回程度のMTGとスカウト代行および面談・面接代行を支援。 現場部門へのヒアリング・採用像の明確化と言語化を実施し、 スカウト媒体の運用、1次面談・面接でのソートと訴求を支援。 ※プロ人材=パソナJOB HUB、複業人材=Another works
髙木氏:本サービスは一般企業の経営課題解決がメインの事業ですが、自治体の政策課題にも対応できるということで、今年度から自治体向けのサービスも始まりますね。
大林氏:地域の企業と外部人材をマッチングすることによって、地域の企業の課題解決をし、外部人材を地域の関係人口にしていくという取り組みです。
髙木氏:プロフェッショナル人材が政策課題を整理して、事業企画やプロジェクトマネジメントを行い、複業人材が実務を行って解決していく。自治体では課題解決ももちろん大事なのですが、それに関わる外部人材が関係人口になってくれることへの期待がとても大きいと感じます。
これからの日本のために、本プロジェクトができること
最後に、これからの日本のビジネス環境の変化を見据えて、自分たちが本プロジェクトを通してやろうとしていることについて話が及んだ。

髙木氏:Another worksでは、今後どういう分野の人材を獲得していきたいなどの考えはありますか?
大林氏:今注目している領域はAIです。これからの社会はAI抜きに成り立ちませんから。
髙木氏:同感です。パソナJOB HUBでもプロフェッショナル人材の知見をAIに学習させて、プロフェッショナル人材とAIとが協働できるような仕組みづくりを考えています。そうすれば、クライアントのコストも下げられますし、より多くの案件に対応できます。
大林氏:今後も間違いなく日本の労働力人口は減っていきますし、終身雇用制度も崩壊している中で、新卒から一社で勤め上げるというのは限界です。だからこそ、Another worksでは1人がプロジェクトごとに複数の場所に所属して、自分の価値を発揮する世界観を目指しています。企業側にとっても、正社員を採用するとか、新卒を採用して育てることが難しくなっていますから、プロフェッショナル人材と複業人材、それにAIを組み合わせて、スピーディーに効率よく課題解決をし続けるというのが、これからの日本企業に求められるスタンダードになっていくのではないでしょうか。
髙木氏:日本の未来は暗いとか先細りだというような話もありますが、私は決してそうは考えていません。むしろ、日本には大きな可能性があると思っています。一社でずっと働いて、自分の人生やキャリアを企業に依存していた社会から、個人が自立してライフデザインを自由にえがける社会になってきました。プロジェクトごとに、強みや能力を活かしオーケストラのように人材が集まる社会に日本がなれば、今までより何倍も事業がスピードアップします。海外企業に負けない未来が待っていると私は思っています。
大林氏:髙木さんが例えている「オーケストラ型で人が集まる」というスタイルが主流になっていくのが5年後だと私は読んでいます。最近は「複業OKの会社でないと入りたくない」という新卒も増えているんですよ。そういう価値観をもった人たちが30代になり、中間管理職として意思決定権をもつのが5年後です。そのときに、Another worksが複業マッチングのインフラになっておきたい。複業したい人が集まってくる業界NO.1のプラットフォームを目指します。
髙木氏:5年はあっという間ですね。
大林氏:はい。全速力で実現させます!
