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ホテル事業への挑戦 テイクアンドギヴ・ニーズが手掛ける ホテルの新しいカタチ

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ハウスウエディングのパイオニアとして、日本の形式化したウエディング業界を革新してきたテイクアンドギヴ・ニーズ。押すに押されぬ業界大手だが、新たなビッグプロジェクトでも注目されつつある。

株式会社テイク アンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長

野尻佳孝 のじり よしたか

1972年6月4日生まれ。東京都出身。明治大学政治経済学部卒。株式会社テイク アンドギヴ・ニーズ代表取締役会長。日本をベースに上海、香港、深セン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど世界140ヵ国以上に拠点を持つブライダル会社を経営。

業界トップシェアを生んだ企業理念

T&Gの成功の要因は、発想の源によるところが大きい。顧客に答えを求めるマーケティングに頼らず、経験も知識も多い専門家である自分たちが、本当に良いと思うサービスを発信することで、新しいウエディングを求める顧客の心をつかんできた。サービスを生み出すにあたって大切にすべきことは、企業理念「VMV」に集約されている。展望を意味するV=Visionは、常に事業を進化させ人々の人生を豊かにしたいという思い「EVOL」を合言葉に。約束を意味するV=Valueでは、感動を超え、人と人の絆を生む瞬間「One Heart」を追求。”人の心を、人生を豊かにする”、それが彼らのM=Mission=使命だ。

2010年には中国をはじめ、アジアにも進出。各国のローカルウエディングから得たインスピレーションも国内事業に還元し、盤石の体制を築いている。

TRUNK BY SHOTO GALLERY
2014年11月にリニューアルした「TRUNK BY SHOTO GALLERY」。マルチファンクションスペースとしてより新しい事業にも挑戦するモデル店舗だ。

コミュニティホテルという名の情報発信基地

昨今、豆の産地や味を重視し、質の高さを求めるサードウェーブコーヒーがブームになっている。これは人々の新しい価値観の表れだ。第2次世界大戦以降に大量生産、大量消費が浸透して、家や車などの”物”を手に入れることが豊かさの象徴とされていた時代がありました。今は先進国のマインドが変化し、物質的な豊かさではなく「生き方」や「自分らしさ」といった本質的なことが、求められている。

こうした変化に伴い、同社はコミュニティホテル事業を発足。野尻会長は、地元に根づき「人」「街」「行政」をつなぐことを大切にしたホテルには、観光客に限らず、地元の若者や子連れの親、イベントに参加するクリエイターらが集まってくると語る。地域の人々が集う”街のリビング”のようになるというのだ。

例えば街にあふれる廃棄自転車。行政が有料で処分していたこれらを経営難の地元の自転車店に渡し、エネルギー開発を進めるNPOがハンドメイドでソーラーパネルを設置。これをコミュニティホテルで買い取り、ホテルでレンタルし、利用者が生んだエネルギーで淹れたコーヒーを無料で配る。「人」と「地域」と「行政」と「ホテル」、すべてがつながることで最終的に人々は、環境に貢献した充足感を得ることになる――。

経済的効果だけでなく、関わる人の心を充足させることまで考えたサイクルだ。コミュニティホテルの企画にルールは設けず、社員、従業員が自由にサービスやプロジェクトを考え実行してく。もちろん、根底にあるのはVMVの企業理念だ。多くの人や物がつながるほど、プロジェクトは波及的に大きくなっていくだろう。

時期はそう遠くない。地域の空気を一番リアルに感じることのできる究極のホテルを目指して、T&Gは新しい領域に踏み出す。

野尻佳孝会長

新事業に懸ける思いとは? 野尻佳孝会長インタビュー
日本のホテル業界でイノベーションを起こしたい

これまでウエディング事業をやってきましたが、小さい頃からホテルという存在にも非常に興味がありました。日本の大手ホテルの多くは電鉄系で、所有、経営、オペレーションを一社で行っていますが、海外では各分野のプロがそれぞれを受け持っている。日本のホテル産業が立ち遅れているのは、こうした違いによるもの。ここに注目し、ウエディング業界にハウスウエディングを定着させたように、日本のホテル業界で再びイノベーションを起こしたいと考えています。

じゃあ、どうイノベートすればいいのかといえば、やはり世の中は心の豊かさを求めていますよね。私自身も会社経営で行き詰まったとき、大きく価値観が変化しました。あらゆる贅沢を経験した後、物欲を一切なくし、生きるとは何か? 家族や仲間、社員を守るには? という精神的な充実に興味が絞られました。

これからの時代、安くて便利なだけではなく、世の中のためになる、という当たり前のことをやれていない企業は生き残れないと思います。

企業経営者としては規模を追うことも大切だと思いますが、私は質を重視していきたい。質が抜群によければ、自然と量も付いてくると思っています。