3月23日、沖縄県宜野湾市の米軍普天間基地を名護市辺野古沿岸部に移設する作業について、沖縄県知事の翁長雄志(おなが たけし)知事が停止を指示しました。
海底ボーリング(掘削)調査によって、工事区域外のサンゴ礁が傷ついた可能性が高いためで、沖縄防衛局がこれに従って調査を取りやめない場合は、仲井真弘多(なかいま ひろかず)前知事が2014年8月に出した岩礁破砕許可を取り消す考え。
これに対し菅義偉官房長官は、「この期に及んでこのような文章が提出されること自体、甚だ遺憾だ」と発言、政府としては今後も移設作業を進めていく姿勢を示しました。このまま沖縄県と政府の対立が深まれば、法廷闘争に発展する可能性も。調査がこのまま続いた場合、15年夏には埋立工事が始まる予定です。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q政権交代のときもそうですが、前任者と後任者の方向性が食い違うのは当たり前だと思います。今回のように現知事が、前知事と国の間で一度結んだ契約に踏み込むのは、菅長官が言うように”いまさら”な気もしてしまいます。尊徳編集長はどう考えますか?
Aそのとおり”いまさら”なんだけど、翁長氏は移設阻止をアピールするしかないんでしょう。
翁長知事は「県内移設反対」で当選したから、あらゆる手を使っ移設阻止をアピールしていかないといけない。そういう公約だから。結果的に国が移設したとしても、努力はしないと。前任者の仲井真氏は、県外移設を公約としておきながら、後から移設推進に翻った結果、2014年の知事選で翁長氏に敗れたよね。
実際には、知事に調査停止を指示する権限はないから、国と現実的な落としどころを探るのが得策なんだけど。県民の意思は無視できないし、難しいよね。
僕としては、翁長氏が取った行動は屁理屈だとは思うけど、民主主義だし致し方ないと思うよ。そういうやり方でしか反対できないのだから。
Q国と都道府県が明確に対立する事例はほかにもありそうですよね。
A原発の稼働くらいかな。
こまごました対立はあるけど、これほど大きな対立はそんなにないと思うよ。地方”自治体”だから、国は地方の自主性に任せるし、自治体も国と対峙してあまりいいことはないから。
もし対立があったとしても、最終的には落としどころを見つけて、国が補助金を出したりしてうまくやるようにするんだ。地方自治体はほとんどが国から地方交付税を受けてるし、自ら税法をいじれないので、結局、国に頼らなければならないところがあるからね。(佐藤尊徳)
[参考:「辺野古作業の停止指示 沖縄知事 政府は移設を継続」(日経新聞3面 2015年3月24日)]
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